新型コロナウイルスの変異株「XFG」が世界で広がっている
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新たな変異株「XFG」(通称・ストラタス)が、急速に広がりを見せている。世界保健機関(WHO)は6月、同株を「監視下の変異株(variant under monitoring)」に指定。現在主流の変異株「ニンバス」と並んで今夏、北半球で流行する可能性が高いとみられている。現時点では公衆衛生上のリスクは低いとされる。
XFGは、ウイルスのLF.7系統とLP.8.1.2系統が組み合わさって生まれた新たな変異株だ。WHOによると、先行して流行していたJN.1株と比べ、スパイクタンパク質に明確な変異パターンが見られるという。なかでも、「アミノ酸の478番および487番に生じた変異により、抗体の働きを回避しやすくなっている」とされ、XFGは従来株よりも高い免疫回避性能を持つ可能性が指摘されている。
XFGは今春、インドで主流株として広がった。その後、世界各地でも急速に拡大している。国際的なウイルス変異株の監視機関であるGISAIDによると、5月最終週に提出された検体のうちXFG株が占める割合は、22.7%に達し、わずか4週間前の7.4%から大幅に上昇したという。検体は38カ国から提供されている。
現在XFGは、ほかの流行中の変異株に比べて、重症化や死亡率を高めるとの明確なデータは確認されていない。インドからの報道によると、医師らは声のかすれ(嗄声)がよく見られる症状だと指摘しているという。このほかにも患者からは、乾いたせきや喉の痛みに加え、発熱や筋肉痛、倦怠感といった従来のCOVID-19に見られる症状も報告されている。
WHOは、XFGに関するリスク評価を公表し、「現在承認されているCOVID-19ワクチンは、同株に対しても発症および重症化を防ぐ効果が維持される見通しだ」との見解を示した。今後もXFGを含む変異株によるワクチンの有効性への影響を継続的に評価し、必要に応じてワクチンの改良を検討する方針だという。
(Originally published on wired.com and wired.com. Translated by Miki Anzai, edited by Mamiko Nakano)
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