業界を震わせたAI・DeepSeekの使い方と、試さない方がいいかもしれない理由
最近では、あらゆるテクノロジー企業が何かしらAI関連のものをアピールしているようですが、大半の人にとって「AI」と言えばChatGPTと同義だと思います。
もちろん、Google Gemini、Microsoft Copilot、Apple Intelligenceなど、ほかにも多くのAIプラットフォームはありますが、ChatGPTは生成AIブームの「先駆け」として登場し、王座を維持し続けているという羨ましい立場にあります。
少なくとも、これまではそうでした。
しかし今、中国の新興企業がその王座を奪う脅威として台頭してきています。
DeepSeekとは?
AI関連のニュースを追っている方なら、聞き覚えがある名前かもしれません。
ChatGPTを開発するOpenAIと同様に、DeepSeekも生成AIモデルを開発しています。同社の最新モデル「R1」は1月20日に公開され、2つの重要な理由で話題になりました。
その理由とはDeepSeekは、OpenAIの「o1」モデルと同等(あるいはやや優れた)性能を発揮しながら、はるかに少ないリソースで動作するということです。
R1の高い性能と効率性は株式市場にも影響を与え、Nvidia、Alphabet(Googleの親会社)、Meta、Oracleなど、AIに多額の投資をしている企業の株価が、DeepSeekの最新モデル発表のニュースを受けて下落しました。
また、一般の人々もDeepSeekに注目しはじめています。
この記事の時点で、DeepSeekはiOSとAndroidの両方のアプリストアで無料アプリのトップに立っています。
一方、ChatGPTはiOSで2位、Androidで8位です。
要するに、DeepSeekはAI競争に新たに登場した最新のChatGPTの競合者です。
試してみることは難しくありませんが、一方で、試さないほうがいい理由もあります。
DeepSeekの使い方
現在、DeepSeekはiOSまたはAndroidのアプリとして、またはweb版でも利用可能です。
アプリを使って、メールアドレスや電話番号、パスワードを入力するか、GoogleアカウントやAppleアカウントで接続することで、アカウントにサインアップできます。
チャットボットの使い心地は、これまで試したほかの生成AIボットとかなり似ていると感じるはず。
DeepSeekには、テキストでプロンプトを入力して回答を得るだけでなく、画像やドキュメントをアップロードして解析してもらったり、ライブカメラの映像を共有したりする機能があるんです。
o1と同様に、DeepSeekには「DeepThink」という推論モデルが搭載されており、質問やプロンプトを深く考察することで、より詳細で正確な結果を提供しようとします。
また、必要に応じてWeb検索を行うこともできますよ。
ほかのAIより多くのトピックを検閲する可能性がある
しかし、DeepSeekがほかのAIと異なるのは、ユーザーに対して検閲するコンテンツの範囲です。
ほかのチャットボットと同様に、DeepThinkも不適切、攻撃的、または危険と見なされるプロンプトには応答しないはずです。
しかし、DeepSeekは中国企業であるため「国家権力の転覆や社会主義体制の打倒を扇動する内容」や「国家の安全や利益を脅かし、国のイメージを損なう内容」を検閲すると『The Guardian』は報じています。
そのため、1989年の天安門事件や習近平国家主席が「くまのプーさん」にたとえられる理由について尋ねても「申し訳ありませんが、その内容は私の対応範囲を超えています。別の話題について話しましょう。」といった回答が返ってくるでしょう。
『The Guardian』によると、このボットは「時折」、物議を醸す可能性のある質問にも回答することがあるそうです。
台湾が国かどうか尋ねられた際、DeepSeekはその質問に回答しましたが、その内容は「中国政府によって支持されるようなもの」だったと報じられています。
また同誌はこのようにも報じています。
注目すべきは、ほかのチャットボットがこれらの質問に対して、より詳細で微妙な回答を提供することがある一方で、必ずしも率直に答えているわけではなかったという点です。
たとえば、Geminiも特定の質問には回答を拒否しているため、アメリカを拠点とするチャットボットもこの種の検閲から免れているわけではないということです。
中国の周縁化されたウイグル人についてDeepSeekに尋ねたところ、DeepSeekは完全な報告書を生成しはじめましたが、それを削除して同じエラーメッセージで置き換えました。(中国政府は新疆ウイグル自治区におけるウイグル人の人権侵害や、さらにはジェノサイド(集団虐殺)の罪で非難されています。)
『The Guardian』は、DeepSeekでこれらの種類のプロンプトをテストした際に、同様の「不具合」が発生したことを確認しています。
DeepSeekを騙して検閲なしの回答を生成させる方法があるようですが、その場合テキストのフォーマットがおかしくなってしまうようです。
一般的に、DeepSeekからは中国政府を怒らせるような結果は期待しない方が良いでしょう。それを除けば、基本的にはChatGPTと同じようなものです。
DeepSeekを試さないほうがいいかもしれない理由(プライバシーの悪夢)
テクノロジー企業が製品を使う代わりに多くのデータを収集しているのは周知の事実ですが、それでも多くのユーザーは面白い新しいアプリをダウンロードすることを躊躇しません。
しかし、DeepSeekはほかの多くのアプリよりもデータ収集ポリシーがやや積極的です。
DeepSeekのプライバシーポリシーを見てみると、よく見かける項目がいくつか含まれています。
例を挙げるとこんな感じです。
・同社は、ユーザーがアカウント設定時に提供する情報を収集します。
・誕生日、ユーザー名、メールアドレス、電話番号、さらにはパスワードまで含まれます。
・アプリを使用する際に使用しているデバイス、実行中のOS、IPアドレス、システム言語、一般的な診断情報なども収集します。
・第三者が収集したあなたに関する情報をDeepSeekと共有することもあり、これにより、DeepSeekはあなたがサービスを利用する際に、さらに多くの情報を把握することになります。また、活動を追跡するためにクッキーを使用していますが、この追跡は設定で無効にすることができます。
DeepSeekはキーロガーを使用
ここから重要なのは、DeepSeekはあなたがAIモデルを使って行うすべてのことを収集しているということです。
テキスト入力、音声入力、プロンプト、ファイル、フィードバック、またはDeepSeekとのすべてのやり取りが、会社によって保存されます。
繰り返しになりますが、これは必ずしも特殊なことではありません。
どのAIボットにも機密情報やプライベートな情報を共有すべきではありません。
しかし、もし企業が文書や声の録音を保存することに不安があるなら、DeepSeekに何を共有するかについては再考するべきです。
DeepSeekがこれらのデータポイントのいくつかを収集するのは決して「すばらしい」ことではありませんが、そうする企業は決してDeepSeekだけではありません。
しかし、DeepSeekはその常識の範囲を超えていると言えます。
DeepSeekは、あなたが送信するテキストだけでなく、キーストロークのパターンやリズムも追跡します。
つまり、DeepSeekを使用している際にキーボードを操作するたびに、DeepSeekはあなたが入力する内容だけでなく「どのように」入力するかも分析していることになります。
気味が悪いですよね。
DeepSeekは顧客データを中国で保管
さらに懸念すべきは、DeepSeekが収集したデータの保存方法です。
プライバシーポリシーによれば、DeepSeekはすべての情報を中国のサーバーに保存しています。これは、アメリカ政府がTikTok禁止を推進した理由の一部でもありました。
また、DeepSeekがデータを保持する期間に関しては「必要な限り」としか記載されておらず、具体的な期限は設けられていません。
これはMetaがユーザーデータを扱う方法と同様ですが、ほかの企業では時間制限を設けているところもあります。
OpenAIにも「必要な限りデータを保持する」という類似の条項がありますが、30日後には一時的なチャットがサーバーから削除されると述べています。
一方、Googleはデータを最大3年間保存するとしています。
大手テクノロジー企業がプライバシーに配慮していないことは周知の事実であり、AIも例外ではありません。
その点においても、DeepSeekはプライバシーを重視する人々にとってすばらしい選択肢ではありません。
もしプライバシーをある程度守りながら試してみたい場合は、Appleのアカウントでサインインすることをオススメします。
これにより、自分の実際のメールアドレスを隠すことができます。
もしAppleアカウントを持っていない場合は、ProtonやDuckDuckGoのような、同様のシールドサービスを提供しているメールプラットフォームを使用することができます。
ただし、DeepSeekがあなたのメールアドレスを見えなくしても、あなたがどのように入力するかには依然として注目していることを覚えておいてください。
著者:Jake Peterson - Lifehacker US 翻訳:真栄田若菜/OCiETe Source: AppStore, GooglePlay, DeepSeek(1, 2), TheGuardian, BBCnews, tom'sguide, Mashable, Meta, OpenAI, GoogleImage:Runrun2 / Shutterstock.com