背の高い学生は背が低い学生よりもテストでいい点を取っているという研究結果
背の高い学生は、社会に出た後に高給取りになる傾向があることが過去の研究で判明しています。収入を大きく左右する学生時代の成績と、身長の関係について調べた研究が、査読付き学術雑誌のEconomics and Human Biologyで発表されました。
Towering Intellects? Sizing up the relationship between height and academic success - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1570677X25000218Taller students tend to perform slightly better in school, new research finds
https://www.psypost.org/taller-students-tend-to-perform-slightly-better-in-school-new-research-finds/ 「世界中の国々で、身長が高い男女は背が低い人より収入が高い、というのは社会科学ではよく知られた現象です」と指摘するのは、論文の筆者であるデラウェア大学のエイミー・エレン・シュワルツ教授と、セントアンセルム大学のステファニー・コフィー助教授です。例えば、アメリカとイギリスでは、身長が10cm増加するごとに1週間当たりの収入が4~12%増加するとのこと。同様に、韓国でも身長が10cm高くなるごとに月収が6~7%増加することが確かめられています。 この現象については、いくつかの仮説が提唱されています。そのうちの1つは、「背が高い人は自信がある」「人から好意的に見られやすい」といった社会的要因が関係しているという説です。また、実際に身長と能力との間に相関関係がある、つまり労働市場で評価されているのは身長ではなく能力であるという説もあります。
年収を大きく左右する重要な要素である学業成績と、子どもの身長の関連性について調べるため、シュワルツ氏らはニューヨーク市教育局が公開しているデータセットを分析しました。 データセットには、2010年から2017年までの間にニューヨーク市内の公立学校に在籍した生徒約50万人の身体測定の結果と、数学と英語の標準テストの点数、さらには肥満かどうかや出席率、性別や人種などのデータが含まれており、研究チームは身長と成績の関係や、そこに影響を与える可能性があるさまざまな要因について検証することができました。
そして、調査により身長と学業成績の間にはわずかながら一貫した関連性があることが確かめられました。具体的には、男子生徒の場合身長の標準偏差(SD)が1単位増加するごとに数学の成績が0.03SD、英語の成績が0.039SD増加したとのこと。また、女子生徒でも身長が1SD高くなるごとに数学と英語の成績がそれぞれ0.034SDと0.04SD増えていました。
数字が小さいように見えますが、この結果は「学年内で最も身長が高い上位2.5%の生徒は、最も背が低い2.5%と比較すると英語の成績が0.18~0.19SD優れている」ということを意味しています。 このことについてコフィー氏は「私たちの主な発見は、3年生から8年生までのすべての学年で、身長が高い人は数学と英語の成績が良かったということです。平均的に見れば、その影響はそれほど大きくはありませんが、最も背の高い子どもと最も背の低い子どもの間に大きな成績の差を生じさせるほど明らかなものでした」と説明しています。女性より男性の方が、身長が高いことを求められる傾向が強いことを考慮すると、身長の高さの優位性である「身長プレミアム」は男性の方が大きいのではないかと研究チームは予想していましたが、結果からは男女で非常に似た影響が見られました。 加えて、今回の研究では絶対的な身長の高さだけではなく、クラスメートとの相対的な身長の差も影響していることがわかりました。同級生と比較して身長が高い生徒は、絶対的な身長を考慮しても、英語テストの成績がわずかに優れていたとのこと。 コフィー氏は「要するに、私たちの研究結果を踏まえて『学年も身長も同じだけど別々の学校に通っている2人の子ども』を比べると、同級生より身長が高い子どもは、同級生より身長が低い子どもに比べて、英語テストの点数が少し高いということです。これは、社会的な要因としての高身長のメリットが少なくとも一部は成績に影響している可能性を示唆しています」と説明しました。 この研究のもう1つの目的は、健康状態が身長と学業成績の関係を説明できるかどうか、つまり背の高さそのものではなく、背がよく伸びるほど健康だということが成績に影響している可能性を探ることでした。 この点を検証するため、研究者らが肥満状態を計算に入れたところ、むしろ身長と学業成績の関係が強化されることがわかりました。また、背が高い生徒は欠席する可能性が低いかどうかも検証しましたが、欠席率が重要な要因になるという証拠はほぼありませんでした。つまり、最初の分析で見られた身長と学業成績の関連性は、健康状態では説明が付かない可能性があります。
また、家庭環境や幼少期の状況といった要因が身長と成績の両方に影響している可能性を検証するため、研究チームがそれらの固定な要因を考慮した分析を行ったところ、身長とテストの点数の関係は大幅に弱まったものの、関係は依然として統計的に有意なものだったとのことです。 まとめると、今回の研究では身長の高さが成績に直接関係していたことに加え、その関係には同級生との相対的な身長差による社会的要因や、家庭環境などの固定的な要因の影響が見られた一方、肥満や欠席率といった健康的な要因は身長と成績の関係の説明にはならないことが判明した、ということになります。
コフィー氏は、研究全体を振り返って「私たちを最も驚かせたのは、身長と学力の関係がいかに強固かということです。3年生から8年生までのすべての学年と、調査対象になったすべての人種および民族グループで、数学と英語の成績の両方との関係が見られました」と話しました。
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