かなりマズい…。欧州で大苦戦している日本人選手6人。2025年こそ挽回したい実力者たち
2024/25シーズンの欧州主要リーグも約半分の日程を消化した。ゴールやアシストなど目に見える結果を残して、高い評価を受けている選手がいる一方で、主力として活躍する未来像を描きながらも、なかなか出場機会を得られずに苦戦している選手もいる。今回は欧州で大苦戦する日本人選手6人の選手をピックアップして紹介する。※成績は『transfermarkt』を参照
MF:鎌田大地(かまだ・だいち)
【写真:Getty Images】
生年月日:1996年8月5日 所属クラブ:クリスタル・パレス(イングランド)
今季リーグ成績:16試合0得点0アシスト
鎌田大地は昨夏にフランクフルト時代の恩師であるオリバー・グラスナーとクリスタル・パレスで再会を果たしたが、加入当初に思い描いていたようなシーズンを過ごすことができていない。
その理由の1つにあるのが、昨季から今季にかけてチームのスタイルが大きく変わったことである。グラスナー1年目の昨季のクリスタル・パレスは、ツーシャドーの一角に、前線でタメを作れるミカエル・オリーズ(現バイエルン・ミュンヘン)を起用しており、彼を軸にボールを保持して主導権を握る形が多かった。
しかし、彼が退団し、その穴を縦へのスピードに持ち味があるイスマイラ・サールが埋めたことで、チームとしてゴールまで直線的なスピーディーな攻撃が効果的に。最前線のジャン=フィリップ・マテタにシンプルなロングボールを当てる機会も多く、トランジションが発生しやすいサッカーに鎌田はフィットすることができなかった。
サールが右のシャドーに定着する前に日本代表MFも同ポジションで起用されたが、指揮官を納得させるようなパフォーマンスを披露することができず。彼自身が希望していたボランチでは、ネガティブトランジションで強みを出せないことから徐々に序列を下げており、第11節フラム戦での一発退場も印象が悪かった。現在はウィル・ヒューズやジェフェルソン・レルマ、シェイク・ドゥクレら中盤で戦える選手たちが優先的に起用されている。
鎌田がプレミアリーグで先発出場した7試合は2分5敗と未勝利が続く一方で、彼のプレータイムが減るとチームの成績は向上。一時は降格圏に位置していたが、現在は15位まで順位を上げている。
2025年の初陣となったチェルシー戦でも守備で不安を覗かせており、再びスタメンの座を奪い返すためにはボール非保持での改善が欠かせないだろう。
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冨安健洋の怪我の多さは擁護できないレベルに達している。シーズン前半戦を終了した時点で公式戦1試合(6分)の出場に留まっており、戦力として計算することができていない。
今季の冨安はプレシーズン中に膝を負傷し、10月に行われた第7節サウサンプトン戦で初出場を記録していた。しかし、この試合で再び負傷してしまった模様で、そこから現在に至るまで1試合もメンバー入りしていない。
2021年夏のアーセナル加入後におけるプレミアリーグでの出場数を比較すると、1年目と2年目が21試合、3年目の昨季は22試合に出場していた。今季はすでに20試合を消化していることからプレミアリーグではワーストの出場試合数に終わるのが確実だ。
ミケル・アルテタ監督は1月3日の記者会見で「トミはピッチ上での取り組みを行っているが、長期のケガなので、どれだけ早く回復して、どういう反応を示すかを見極める必要がある」と、復帰については慎重な姿勢を示している。今季の復帰戦となったサウサンプトン戦で再負傷した前例もあるため、積極的な起用は難しいだろう。
彼がチームを離脱している期間にアーセナルの最終ラインは怪我人が続出。ベン・ホワイトやガブリエウ・マガリャンイス、リッカルド・カラフィオーリらが同時に離脱した期間は人選にも大きく悩まされていた。こうした時期にユーティリティーな日本代表DFがいれば指揮官を大いに助けることができる可能性があっただけに、再三の離脱が悔やまれる。
1月から2月にかけての復帰が予想されているが、そこからシーズン最後まで怪我なく稼働を続けることができる可能性はあまり高くないだろう。アーセナルとしてはタイトル獲得が必須なシーズンなだけに、局所的な活躍だけでもチームに貢献したいところだ。
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2部ではエースとして得点を量産するが、レベルが上がる1部では序列を落とす。今季のオナイウ阿道はトゥールーズ時代と同じような状況となっている。
2023/24シーズンにトゥールーズからリーグ・ドゥ(フランス2部)のオセールに移籍したオナイウ阿道は、序盤戦こそ出遅れたが、シーズン終盤にかけて得点を量産。リーグ戦のラスト10試合で7ゴールと覚醒し、チームの2部優勝とリーグ・アン昇格に導いていた。
1部昇格を果たした今季もエースとしての活躍が期待されていたが、開幕2試合で大きく評価を下げてしまう。ニースとの開幕戦は2-1の勝利を収めたが、彼自身はやや空回り気味で、再三の決定機でミス。3回もフリーでシュートを打つビッグチャンスがあったが、いずれもボールに力を伝えることができなかった。
序列を下げる決定打となったのがナントとの第2節だ。アンラッキーな形ではあったが、ボールタッチが大きくなったところにスライディングタックルしてきた相手選手の足を踏んづけてしまい、危険なプレーの対象となったことで一発退場の処分を受けてしまった。
開幕節から2試合連続でスタメン出場していた最中での退場によって序列を下げると、それ以降の14試合で先発の機会は3試合しかない。モンペリエとの第5節でアクロバティックな形から今季初ゴールを決めて、6節と7節で先発のチャンスを得たが、再びベンチ生活に逆戻りとなってしまった。
ただ、ベンチ入りしたゲームでは全試合に出場しており、途中出場から結果を残せばすぐにスタメンを奪い返すこともできるだろう。残りの半シーズンで、トゥールーズでプレーしていた2022/23シーズンの2ゴールを大きく上回る結果を残せるだろうか。
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今季からサウサンプトンでプレーしている菅原由勢も苦しいシーズンを過ごしている。
プレミアリーグ開幕から9試合連続でスタメンに名を連ねると、ブレントフォードとの第3節ではチームのシーズン初ゴールをマークするなど、スタートは上々だった。ところが初の出番なしに終わった第9節マンチェスター・シティ戦以降の12試合では3試合の先発に留まっている。
序列を下げた要因は守備全般でのクオリティ不足だろう。ディフェンスラインの背後にボールを出された際や逆サイドからのクロス対応が甘く、自軍ゴール方向に向いている状況でのボールロストからも失点に絡んでいる。三笘薫とマッチアップした第13節ブライトン戦は今季のワーストゲームの1つで、散々にわたって危ないシーンを作ってしまっていた。
彼のパフォーマンスが微妙なことには変わりないが、前提としてサウサンプトンのチーム状況が最悪ということにも触れる必要がある。プレミアリーグ第20節終了時点で勝ち点「6」しか稼ぐことができておらず、1つ順位が上の19位レスター(勝ち点14)にもダブルスコア以上の差をつけられている。このペースでは、リーグ史上最低勝ち点に終わった2007/08シーズンのダービー・カウンティの「11」を超えるかどうかというラインだ。
12得点はリーグワースト、44失点はワースト2位と攻守両面に大きな課題を残しており、監督がラッセル・マーティンからイヴァン・ユリッチに変わったところで、残留が厳しいことには変わりないだろう。
この状況でも、ファンのためにはプレミアリーグ残留に向けて戦う姿勢を見せなければいけない。そうした中で迎えた2025年の初陣となったホームでのブレントフォード戦で菅原は、ライバルのジェームズ・ブリーが前半に負傷したことで後半から出場。しかし、彼が出場してから4失点を喫し、試合終了間際には自らのボールロストで失点を招いた。
不調のチームと共に自信を失っていることは明らかで、この難しい状況を始まったばかりの後半戦で打開することはできるだろうか。
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【写真:Getty Images】
2024年冬からルートン・タウンでプレーしている橋岡大樹も今季は怪我に苦しんでいる。チームがチャンピオンシップに降格して迎えた今シーズンは第26節終了時点で半分の13試合の出場に留まっており、915分のプレータイムは同リーグでプレーする7人の日本人選手の中で最も少ない。
橋岡にとって痛恨だったのが、プレシーズンで負ったふくらはぎの負傷だ。これが長引いてシーズン初出場は10月19日に行われた第10節ワトフォード戦まで先延ばしとなった。12月14日に行われた第21節ブラックバーン・ローヴァーズ戦でも負傷交代を余儀なくされると、1試合でベンチにこそ戻ったが、直近の5試合では1試合の出場に留まっている。
彼のパフォーマンス以前に、今季のルートンはチームとして自信を失っており、崩壊しているように映る。特に守備のパフォーマンスは昨季から続く怪我人続出の影響もあって脆く、ここまでリーグワースト2位の44失点を喫している。
自信の無さはプレミアリーグに所属していた昨季終盤の壊滅的な出来が影響しているだろう。昨年2月から最終節までに行われた16試合で1勝しかすることができず、この悪い雰囲気が今季も続いて持ち込まれている。
この最悪の成績でも功労者であるロブ・エドワーズ監督は解任されなかったが、今季も成績が改善されない状況が続くと、徐々に発言がエスカレートしてしまった。
11月30日に行われたノリッジ・シティ戦で2-4の敗戦を喫すると、試合後に「今日はサポーターに謝らなかった。負けたのは私のせいではない。今日は個人のミスで4ゴールを失った。まったく馬鹿げている。私は激怒している」と発言。自らの責任を逃れるように選手に敗戦の理由を押し付けた。
それでもクラブはエドワーズ監督を更迭しなかったが、年が明けた1月6日に行われた第26節クイーンズ・パーク・レンジャーズ(QPR)戦で4連敗目を喫すると、ついに解任に。あまりに遅い解任劇となったが、ルートンからすると監督交代は新たなスタートを切るチャンスである。
幸いにも橋岡はエドワーズ体制での最終戦となったQPR戦で5試合ぶりに復帰を果たしており、新体制に向けてのスタートラインに立つことはできそうだ。
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昨夏にボーフムが唯一、移籍金を支払って獲得した選手が三好康児だった。しかし、前半戦終了時点では先発の機会は5度しかなく、そのうち2回が前半のみでの交代と定位置を掴むに至っていない。
前提として、三好個人のパフォーマンスに言及する前にボーフムの状況について整理したい。同クラブは昨夏に三好にしか移籍金を使わなかったことからもわかるように、選手獲得に予算を使う余裕がないほど財政難に陥っている。
その中で契約満了に伴い、昨季のチーム得点王&アシスト王だったケヴィン・シュテーガーがボルシア・メンヒェングラートバッハに、チーム内得点ランキングで2位だった浅野拓磨がマジョルカにフリーで移籍。守備の要だったケビン・シュロッターベックも期限付き移籍での加入だったため、所属元へと復帰した。
各ポジションの主軸が抜けた中で昨夏に行われた補強はフリーと期限付き移籍での獲得が大半だった。結果として戦力的には大幅なマイナスとなり、15試合を消化した前半戦終了時点での勝ち点は「6」に留まっている。監督も暫定を含めると、前半戦だけで4人もチームの指揮を執った。
このようなチーム状況で結果を残すのは、三好に限らず誰であっても難しいだろう。昨季のドイツ王者であるレバークーゼン戦で試合終了間際に値千金の同点ゴールを叩き込んだが、それ以外の試合では自らの価値を示すことに苦戦をしている。
10月末に発足したディーター・ヘッキング新体制では、残留を目指す上で守備を最重視しており、前線の人数を削って守備的な5バックで戦っている。それでも年末にかけてプレータイムを伸ばしていたが、先発出場していた第14節ウニオン・ベルリン戦で、前から積極的にボールを奪いに行った中で相手選手に危険なタックルを見舞って一発退場。2試合の出場停止処分が確定した。
幸いにも今季のブンデスリーガはボーフム以外にも不調のクラブが多く、まだ残留の可能性も十分にある。退場処分となってしまったが、三好は新指揮官の下で序列を上げており、2シーズン前の浅野に続いて日本人選手がボーフムの残留の立役者となれるだろうか。
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