「撤回できないものなら、中国の圧力に屈することなく真剣に対応を」台湾・国防部長が、高市首相“台湾有事発言”に覚悟を突きつけた《日本初の直撃取材》(文春オンライン)

 中国の軍事行動に台湾はいかなる備えを進めているのか。台湾の軍トップ、国防部長(大臣)の顧立雄氏が初めて日本メディアのインタビューに応じ、 高市早苗首相の「存立危機事態発言」 についても答えた。 【画像】顧立雄国防部長は弁護士出身(台湾国防部提供)  峯村健司氏の寄稿「 台湾国防部長 中国の新型統一戦争に屈しない 」から一部紹介します(文中敬称略)。 ◆◆◆

 米軍の来援を前提にしない──これは台湾軍の作戦思想の根本的な転換を意味する。背景には、米側の冷徹な認識がある。筆者は「新型統一戦争」について、トランプ政権で国防次官を務めるエルブリッジ・コルビーらと、3度にわたり意見交換をしたことがある。このシナリオに対し、米軍はどのような反応をするのだろうか。コルビーらの結論は明確だった。 「中国軍による明白な軍事侵攻がない『グレーゾーン』に対し、米軍としては全面的な軍事介入はできない。台湾軍が単独で持ちこたえ、それを日本が後方支援することが重要となる」  顧立雄の強気の発言の裏側には、こうした米側の意図があるのだろう。最近、台湾では有事の際には米軍は助けてくれないという「疑米論」が広まっている。米軍の支援がなければ台湾の人々が動揺しかねない。だからこそ仮に米軍の介入がなくても単独で戦えるという姿勢をあえて顧立雄は強調したのだろう。  実際、総額約140億ドル(約2.2兆円)の武器売却パッケージは、2026年1月に議会承認を経て大統領の署名を待つ状態にあった。しかしトランプはこれを「保留」にしたのだ。習近平が9月下旬にワシントンを訪れ、ホワイトハウスでトランプと会談する方向で両政府は調整している。それまでは、トランプは台湾への武器売却に署名しない可能性が高まっている。台湾の命運を左右するカードが、当事者である台湾の頭越しに、大国間の取引材料にされているのだ。

 顧立雄の眼差しは、台湾海峡を越えて日本にも注がれていた。中国の矛先が今、日本に向けられているからだ。 「台湾が中国から受ける圧力は以前から続いているが、ここに来て、日本に対しても絶えず圧力をかけている。最近の中国とロシアによる空中共同パトロールや、海上共同巡航が日本を周回した後、日本海から引き返して帰還した動きが示す戦略的意味合いは、いずれも日本を明確に標的としたものである」  6月27日には中露の爆撃機が日本海上空で合流し、沖縄本島と宮古島の間を抜けて四国沖まで共同飛行。7月には合同演習「海上連合2026」後の「連合巡航」部隊が、沖ノ鳥島(東京都)南西の日本のEEZ内で射撃訓練まで行っている。  そして筆者が最も聞きたかったのが、昨年11月に高市早苗首相が台湾有事について「存立危機事態になりうる」と発言したことについての率直な感想だった。そのままぶつけても「日本の内政」もしくは「外交部に聞いてほしい」と逃げられると思った。そこであえて、「高市氏の発言の翌月、人民解放軍が大規模な軍事演習をするなど、結果として台湾軍への負担が増えていることについて率直にどのように思うか」と尋ねてみた。 「日本が存亡の危機に陥ったと判断した場合、国連憲章に基づき、日本は存立危機事態を認定し、自衛権を行使する権利を有している。これは日本の判断次第だ。我々が日本政府に代わって答えることはできないが、もし日本がこうした深い理解をしているのなら、この状況を真剣に受け止めなければならない。仮に高市首相がこれを正しい判断であり撤回できないものだと考えているのであれば、日本は中国の圧力に屈することなく、真剣かつ適切に対応しなければならない」  かなり踏み込んだ発言といえる。慎重な言い回しながらも、高市首相の「存立危機事態」発言を支持したうえで、実際に台湾有事が起きた際に日本がどれほど関与できる覚悟があるのかを突き付けたのだ。 ※この続きでは、顧氏が 「ウクライナ戦争の教訓」 を語っています。約7000字の全文は、『文藝春秋』2026年10月号と、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』に掲載されています(峯村健司「 台湾国防部長 中国の新型統一戦争に屈しない 」)。

峯村 健司/文藝春秋 2026年10月号

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