購入した座席と違う、航空機で座席を「格下げ」された場合の対応とは
米ユナイテッド航空のボーイング787型機「ドリームライナー」に設けられた「エコノミープラス」のセクション/Nicolas Economou/NurPhoto/Getty Images
(CNN) 出発前に空港へ到着したところ、購入したはずの座席が利用できないと告げられることがある。不運にも、航空会社側の判断で座席を下位クラスへ変更される「ダウングレード」に遭遇した場合だ。
こうした事態は頻繁に起きるものではないが、思った以上に発生している。プレミアムエコノミーやビジネスクラス、ファーストクラスといった上位クラスの航空券を購入していても、搭乗時に下位クラスへ移されることが起こり得る。
航空関連の消費者支援を行う企業「エアアドバイザー」の創業者兼最高経営責任者(CEO)、アントン・ラドチェンコ氏は、2023年に2度、本人の意思とは関係なく座席のクラスを引き下げられた。1度目は米デルタ航空でニューヨークからフランクフルトへ向かう便、2度目は英ブリティッシュ・エアウェイズでロンドン発ロサンゼルス行きの便だった。しかし同氏は、ダウングレード時の対処方法を熟知していた。
ラドチェンコ氏は「多くの乗客は自分の権利を理解しておらず、そのことがさまざまな問題を招いている」と指摘する。航空会社は補償の支払いに消極的なことが多く、乗客が権利を十分に理解していないことを前提に対応する場合があることを忘れてはならないという。
本稿では、ダウングレードが発生する理由と、その際にどのように対応し、正当な補償を得るべきかについて、ラドチェンコ氏の助言を交えて紹介する。
ダウングレード発生の主な理由
強制的なダウングレードは、座席の不具合、操縦士の休息確保、オーバーブッキング(過剰予約)、機材変更など、さまざまな理由で発生し得る。
ラドチェンコ氏によれば、最も一般的な理由はオーバーブッキングである。航空会社は収益最大化を目的としており、しばしば実際の座席数を上回る航空券を販売する。こうしておけば、当日搭乗しなかったり、直前にキャンセルしたりする乗客がいても、機内を満席に保つことができるからだ。
しかし、全ての乗客が予定通り搭乗手続きを行った場合、強制的なダウングレードが発生する可能性がある。
ラドチェンコ氏が経験した2件のダウングレードも、いずれもオーバーブッキングが原因だったという。
一方、数日前から事前にダウングレードの通知を受けた場合は、機材変更が理由である可能性がある。航空会社が別の航空機を代替投入した結果、その機体にはファーストクラスの座席数が少ない場合があり、その際に上位クラスの座席を確保できなくなることがある。事前通知があれば、同等クラスの座席が確保された別便への変更を航空会社に依頼できる可能性もある。
また、乗務員の事情が関係している場合もある。長距離フライトでは、乗務員の休息スペースが安全上不可欠であり、何らかの理由で指定の休息スペースが使えない場合、乗務員がビジネスクラスやファーストクラスの座席を休息用として使う必要性が出てくるかもしれない。
記録を残すことが重要
理由が何であれ、ダウングレードは控え目に言っても乗客にとって不満の残る経験となる。多くの場合、乗客は空港のチェックインカウンターや搭乗時にその事実を告げられる。
まず重要なのは、自身の権利を理解しておくことだ。
ダウングレードとなった場合、ラドチェンコ氏は積極的な行動を取ることを勧めている。航空会社からダウングレードの理由を文書で提示してもらい、新しい座席の写真、搭乗券、航空会社とのやり取りの記録なども同様に保存しておくべきだ。これらは後に補償請求を行う際の根拠となる。
同氏は自身が経験した2度のダウングレードに関し、いずれも払い戻しを受けることができた。
ニューヨーク発フランクフルト行きのデルタ航空便では、プレミアムエコノミーからメインキャビンへ降格となったが、1000ドル(現在のレートで約15万円)の返金を受けた。
デルタ航空はCNN Travelの取材に対し「当社では、強制的なダウングレードが発生した場合、航空券が発券された元のキャビンとダウングレード先のキャビンに基づき、補償を提供している」と説明した。「購入時の運賃に基づき、運賃差額の返金を行う」としている。
しかしラドチェンコ氏によれば、返金までの手続きは必ずしも容易ではなかった。
ラドチェンコ氏は航空の専門家で、消費者の権利を守る弁護士でもある。そこで丁寧な物腰で、米運輸省(DOT)の規定では、強制的なダウングレードが発生した場合、乗客は運賃差額の返金を受ける権利があると伝えた。デルタ航空は当初、補償としてバウチャー(クーポン券)の提供を提案したが、DOTの規定に基づき現金での払い戻しを受けるまで粘り強く交渉を続けたという。
強制的なダウングレードの返金は、航空券の運賃が変動するため、返金額が予約時の運賃に基づいて算出されていることを確認する必要がある。航空会社は、直近の運賃を基準に補償額を算出し、支払額を少なく抑えようとする場合があるためだ。
例えば、格安で購入した国内線のファーストクラスが、直前のエコノミーの価格とほとんど差がない場合、返金額は少額にとどまる可能性がある。
ラドチェンコ氏は「積極的に対応し、求める権利を明確に主張することが大切だ。丁寧な姿勢を保ちながらも、要求はしっかり伝えるべきだ」と助言する。