得をするのは「金持ち」と「悪徳医師」だけ…いま国会で進行中の“薬の保険外し政策”で起きる深刻な副作用 OTC“本家薬”の保険外しという「アリの一穴」

アレグラ、ロキソニンなど、市販でも手に入る処方薬、いわゆるOTC類似薬の保険適用見直しをめぐって議論が進んでいる。東京科学大学医学部臨床教授の木村知医師は「実現すれば一時的に医療費は減るだろう。しかしその先に待っているのは“金の切れ目が命の切れ目”ともいえる医療格差社会だ」という――。

前回記事では、高市政権と連立を組む日本維新の会肝いりの政策、「OTC“類似薬”の保険外し」について取り上げました。

写真=iStock.com/kanzilyou

※写真はイメージです

病院で処方される医薬品のうち、ドラッグストアでも買える市販薬(=「OTC医薬品」)と有効成分や効能などが似ているものを、一般に「OTC“類似薬”」と呼びますが、これらの保険適用を外そうという議論です。

身近なものでいうと、ヒルドイドなどの保湿剤やアレグラなどの抗アレルギー剤、ロキソニンなどの解熱剤、去痰剤やシップなどが挙げられます。

出典=日本維新の会所属の参議院議員・猪瀬直樹氏のnote記事の資料より

ところで、類似薬を“”(ダブルクォーテーション)で囲っているのは、まるで処方される医薬品のほうが“コピー”であるかのような誤解を招く呼び方に疑問があるからです。少し長くなるのでここでは割愛しますが、筆者はその実態を反映し「OTC“本家”薬」と呼んでいます(この記事では以下「OTC“本家”薬」を使います。くわしく知りたい読者は、「現役医師『国家的詐欺と言っても過言ではない』…維新との連立で高市新政権が抱えることになった"地雷"の正体」をご覧ください)。

日本維新の会によれば、この「OTC“本家”薬」を保険の対象からはずすことで、1兆円もの医療費が削減され、それによって現役世代の保険料が下げられ、手取りが増やせるのだそうです。

しかしこれは、医師に言わせればとんでもないことです。前回、その詐欺的名称を広めていることもあわせて、その実態はまさに「国家的詐欺」であると書いたころ、非常に多くの反響をいただきました。

ニュースを聞いただけでは、いったい何が問題なのか、この政策が実施された場合、どのような不利益が私たちにふりかかってくるのか漠然とした不安しかなかった方にも、より具体的にこの政策の危険性、そして高齢者にかぎらず現役世代も無関係ではない、ということを知っていただけたのではないかと思っています。

それでもまだ、「私には関係ないよ」と思っている方がいるかもしれません。いやそればかりか、「この政策に反対している医者は、儲けそこなうことを恐れているんだ」とのリプライもありました。

そこで今回は、「金儲けしたい医者であれば、むしろこの維新の肝いり政策に大賛成! もっと進めろ! と思っているはずだ」というお話をしてみましょう。

市販価格より高めの請求ができてしまう

たしかに、この政策が実施されれば「欲のない、金儲け主義でない医者」が経営する診療所は経営難に陥ってしまうかもしれません。

患者さんたちが、保険外しとなった薬剤の入手と治療をあきらめざるをえず、受診を控えてしまうかもしれないからです。

一方で、OTC“本家”薬が保険外しとなれば、その薬剤の価格は今までの国による価格規制から外れることになりますので、各医療機関の自由裁量となります。これは金儲け主義の医者にとってみれば「商機」です。

たとえば、花粉症でも使われる抗アレルギー剤であるアレグラが保険外しとなった場合は、市販のアレグラ(OTC薬)の価格を上回る設定で患者さんに請求し、薬剤費で大きな利益の上乗せを目論むことも可能になるからです。

市販より高めの価格を請求しても、患者さんにはその価格が適正であるか、瞬時に判断できません。ドラッグストアでの正確な価格を知っていたとしても、「医師の診断で正確に処方してもらえた」との満足感があれば、多少高めでもいいと思う人もいるでしょう。むろん、少しでも倹約したい人はそのような金儲け主義の医者の世話になどなりたくないと思うでしょう。

これがこの政策が実施された場合に予測される、「患者さんの二極化現象」です。


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政府の社会保障費圧縮を目指す医療政策について批判すると、「医師会の利権が失われるからだ」とか「医者が儲け損なうからだ」との声をいただくことが少なくありませんが、まったく筋違いです。

むしろ金儲けしたい医師ならば、この混合診療の全面解禁には大賛成でしょう。4つのポイントで見たとおり、混合診療に反対している医師のほうがきわめて常識的と言えるのです。

もちろん今回の政策で、一朝一夕に混合診療が全面解禁になるわけではありません。しかし、この「OTC“本家”薬の保険外し」が“アリの一穴”となって、なし崩し的な混合診療解禁へと議論が進む危険性を、多くの人が認識しておく必要があります。

目的は、目先の医療費削減だけではありません。

混合診療の全面解禁によるわが国の保険制度の解体と破壊、それにより大きな利益を得る外資系も含めた民間医療保険会社の思惑、社会保障費削減を口実にした自己責任・弱肉強食社会の固定化という、もっと大きな「目論み」について、強い危機感の共有が非常に重要です。

私たちの医療を、金儲け主義の医者と富裕層専用のものへと固定化させてしまったり、外国の民間保険会社に売り渡してしまったりしていいのでしょうか。混合診療への足場づくり、これこそ「売国政策」と言えるのではないでしょうか。

高齢者よりも、現役世代さらに将来世代にこそ大きな損害をもたらす“アリの一穴”、ぜひお友達との日常会話でも話題にしていただければ幸いです。

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