新たに発見された「地獄のサギ」、スピノサウルスめぐる長年の論争に新たな証拠

新たに発掘されたスピノサウルス・ミラビリスの頭骨のレプリカ/Keith Ladzinsk/University of Chicago

英エディンバラ大学の古生物学者スティーブ・ブルサッテ氏は電子メールで、「エルビス・プレスリーのリーゼントヘアのように、頭から突き出した派手な骨のとさかだ」と表現した。同氏は本研究には関与していない。

セレーノ氏はこのとさかについて、「武器としては非常に不向きだ」と指摘した。位置が不自然で、ややもろく、左右非対称であることから、戦闘用途ではなく見せびらかしや合図、あるいは性的アピールに使われた可能性が高いという。

このとさかの違いは、今回の化石がスピノサウルス属の別種であることを裏付ける要因の一つとなった。

また、スピノサウルス・ミラビリスはスピノサウルス・エジプティアクスと比べて下あごの位置が低く、歯がかみ合う構造を持っていた。これは滑りやすい魚をしっかり捕らえるのに適しているとセレーノ氏は説明する。

巨大捕食恐竜研究の「ルネサンス」

今回の研究は、スピノサウルスの進化についても新たな光を当てている。その進化は3段階に分かれる可能性がある。ジュラ紀には魚を捕らえる頭骨が出現し、白亜紀前期には古代テチス海周辺の主要な捕食者となり、白亜紀後期の直前には大西洋の形成に伴って最大級の体格に達し、北アフリカや南米で浅瀬の待ち伏せに特化した捕食者へと進化したという。

ブルサッテ氏は、「長らく謎に包まれてきた恐竜だが、新たな化石の発見のたびに、その実像が徐々に明らかになっている」と語る。

川岸に立つスピノサウルス・ミラビリスを描いた絵/Dani Navarro/University of Chicago

セレーノ氏はまた、最新技術が研究を大きく加速させた点を強調した。研究チームは数百枚の写真を撮影し、3次元モデルを作成。とさかやあごの断片をデジタル上で操作することで、頭骨の復元を進めた。

米ジョンズ・ホプキンス大学のマテオ・ファブリ助教は、この発見を巨大捕食恐竜研究の「ルネサンス」と評価した。同氏も研究には関与していない。一方で、化石が断片的であるため新種の特定は容易ではないとも指摘した。「研究に使える情報が少なく、この動物の実際の解剖学的構造には多くの疑問が残る」と述べた。

シカゴの子ども博物館にはスピノサウルスの頭骨模型が展示されており、子どもたちがその姿を間近に見る機会となっている。

セレーノ氏にとって、今回の化石は単なる科学的発見にとどまらず、次世代に発見の驚きと魅力を伝えるきっかけでもあるという。

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