「この世の地獄」 ハリケーン「メリッサ」襲来のジャマイカ、活気あった町が瓦礫の山に
ドローンによる画像。ハリケーン「メリッサ」のブラックリバー上陸後、人々が歩く様子を捉えている=30日/Maria Alejandra Cardona/Reuters
ブラックリバー(CNN) ハリケーン「メリッサ」の直撃を受けたジャマイカ沿岸部のブラックリバー。かつて熱帯の楽園と呼ばれた町はいま、「この世の地獄」になぞらえられる惨状を呈している。
町に並んでいた色鮮やかな家屋や歴史的建造物、緑豊かな樹木の多くは、ぬかるんだ地面に散乱する瓦礫(がれき)の山と化した。
ブラックリバーのビンヤード地区に住むブリトニー・サムズさんはCNNの取材に、「私たちにはもう居場所がない」と窮状を語った。
ブラックリバーはジャマイカ全土でも特に大きな被害を受けた場所の一つ。ハリケーン通過時には最大約4.9メートルの高潮が押し寄せ、町の一部が水没した。地元警察の29日の発表によると、少なくとも2人がこの町で亡くなり、嵐が過ぎ去った後、遺体が水に浮かんでいるのが発見されたという。
数百人の生存者はショック状態の中で通りを歩きながら、自分たちの直面する過酷な現実を受け止めようともがいている。
多くの人は自宅を失い、どこに避難すればいいのか途方に暮れている状態だ。
「板張りの家に住んでいたが、タンスもストーブも、何もかも無くなった」。サムズさんは残る所持品を積んだショッピングカートのそばで、他の住民と一緒に座りながら語った。
近隣の町から被害状況の確認に訪れた男性は、被災前は「閑静なたたずまいの非常に落ち着いた町」だったと語り、現状は「この世の地獄」だと証言した。
町を走る狭い通りにはいま、屋根に使う金属製の板やコンクリート片、水に運ばれてきたゴミが散乱している。
住民たちは行方不明の肉親を探したり、被害状況を確認したりして歩き回り、悲痛な叫び声が幾度も町中に響き渡る。
首長のリチャード・ソロモン氏は現状を壊滅的と評し、「この光景を目の当たりにすると『壊滅的』という言葉でも生ぬるい」と指摘した。