〈独自〉トランプ政権がロシアとウクライナに「領土交換」を提案か…南部2州とドンバスらを入れ替える“戦後国境”案(集英社オンライン)
4年半以上にわたって続くロシアによるウクライナ侵攻を終わらせるため、トランプ政権が新たな「領土交換」を検討していることが、関係者への取材でわかった。構想では、ロシアが占領する南部ヘルソン、ザポリージャ両州をウクライナ側に戻す一方、東部ドンバス地方をロシア側に置くという。実現すれば、現在の前線ではなく州境に沿って両国の支配地域を大きく引き直すことになる。ロシアにとってはクリミアにつながる重要な陸上回廊を失い、ウクライナにとっては長年守ってきた東部の拠点を手放すことを意味する。米国が描く“戦後国境”とは、どのようなものなのか。
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一方のロシアはクリミアへの陸の回廊を失い、補給を再びクリミア橋や海上輸送に大きく頼らざるを得なくなる。ヘルソン州では、ロシア軍がドニプロ川の東岸から退く。ウクライナは州都ヘルソンの対岸の地域を取り戻し、黒海沿岸とクリミアの北への足場を再び手にする。ドニプロ川を挟んで向かい合ってきた両軍の戦線も、ここでなくなる。ウクライナにとってこれは、軍事力だけでは取り返すのが難しかった広い南部の占領地を、話し合いで取り戻すことを意味する。アゾフ海沿岸の支配を取り戻すことで、農地や港、エネルギー施設も戻ってくる。国の存続と経済の立て直しを考えれば、非常に大きな利益だ。しかし、その代償は重い。ウクライナはドンバス全域を失うことになる。ルハンスク州はほぼ全域をロシア軍が支配しているが、ドネツク州には今もウクライナの統治下にある部分が残る。州全体をロシア側にするのなら、ウクライナ軍は今の支配地域から戦わずに撤退しなければならない。
クラマトルスクやスラビャンスクを含む地域まで対象になれば、2014年以降に巨額の費用と多くの犠牲を払って築いてきた防衛拠点を手放すことになる。
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米国側には、双方に「勝利」と説明できる成果を与えて、交渉を動かす狙いがあるとみられる。ウクライナは南部2州と原発、アゾフ海沿岸を取り戻す。ロシアは、軍事的な完全制圧を目指してきたドンバスと、戦略的要衝であるクリミアを確保する。トランプ政権は、どちらの側も全面勝利できない戦況を踏まえ、東部と南部を交換する「大取引」で戦争を終わらせようとしている可能性がある。だがこれは、ロシアにとっても簡単に受け入れられる案ではない。ロシアは2022年9月、占領地で「住民投票」と称する活動を行い、ドネツク、ルハンスクだけでなく、ヘルソン、ザポリージャの両州も一方的に併合した。4州をロシア領とする手続きも取った。国連総会は、この「住民投票」を違法なものとして認めず、ロシアによる4州の一方的な併合を非難している。
それでもプーチン政権は、4州がロシアの一部になったと国民に説明してきた。ヘルソン、ザポリージャの両州を返せば、自国の領土だと宣言した土地を和平のために手放す形になる。南部の軍事拠点や陸上回廊を失うことも、ロシア軍にとって大きな痛手だ。
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米国案は、戦争で動いた前線を州境に沿って引き直し、双方が受け入れられる最終線を探る試みだ。ただ、そこに暮らす住民にとって、地図上の変更は、何百万人もの人生を左右する。米国、ロシア、ウクライナの交渉だけで国境線を引いてよいのかという問題も残る。南部を取り戻す代わりに東部を手放すのか。ドンバスを得る代わりにクリミアへの陸路を失うのか。米国が示したとされる交換案は、両国に戦争終結への出口を用意すると同時に、双方が最も手放したくないものを差し出すよう迫っている。 それは和平に向けた現実的な妥協なのか。それとも、次の戦争までの境界線を引くだけなのか。米国が描いた「戦後国境」を巡り、ロシアとウクライナは国家の将来を懸けた選択を迫られる。
文/集英社オンライン編集部