日銀・内田副総裁、関税など注視 経済「不確実性高い」

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日銀の内田真一副総裁は5日、トランプ米大統領による関税などの政策について「米国に限らず各国の企業、家計、金融市場に影響する。世界経済に対する不確実性は高く、引き続き注視する必要がある」と述べた。

静岡市での金融経済懇談会で講演後に記者会見した。

内田副総裁は「関税、移民、減税など新政権の政策が経済・物価の両面に影響する可能性がある」との見方を示した。「具体的な対象の範囲や規模によっても変わる。その影響を今はっきり言うことはできない。今後の展開を見るしかない」と言及した。

「例えば一定の関税が導入されてもずっと続くかわからず、常に不確実な部分は残る。関税だけを取り上げるのではなく、いろいろな事象を全部踏まえて日本の経済・物価の今後の見通しを作る」と語った。

トランプ大統領が、日本が通貨安を誘導してきたと問題視する発言をしたことを問われた内田副総裁は「詳細を承知しているわけではないので、コメントは控える」と述べるにとどめた。

異次元緩和については「2%の物価目標を持続的、安定的に実現するために必要な政策を行った。為替を誘導することなどを意図したわけではない」と論じた。

内田副総裁は会見前の講演で「想定される程度のペースの利上げであれば、経済の反応を確認しながら進めていけるだろう」と発言した。

会見ではこの発言について「特定のペースを念頭に置いたものではない。市場の見通しと日銀が考えている見通しに多少の違いがあっても、毎回の金融政策決定会合で利上げするようなペースではないから、経済や物価などの反応を見ながら考えていけばよいという意味だ」と説明した。

どのくらいの利上げのペースを想定しているかを会見で問われると「先行きの経済・物価・金融情勢次第だ。そのなかで判断していくということに尽きる」と強調した。

コメの高騰に関連した物価の上昇については「物価の基調を考えるうえで一番重要なのは賃金だが、よく買う品目が消費者の物価予想に及ぼしうる影響は十分注視していかなければいけない」と分析した。

直近の長期金利の上昇は、市場が織り込む日銀の利上げの最終到達点の上振れが背景にある。内田副総裁は「市場で形成される指標には、市場がどう思っているかという情報があり、市場機能として重要だ。私が高い、低いと言うことはできる限り避けるべきだ」と話し評価を避けた。

日銀が保有する上場投資信託(ETF)の処分に関しては「すぐに処分するとは考えていない。今後の扱いについては、ある程度時間をかけて検討する必要がある」との言及にとどめた。

内田副総裁は具体的な言及を避けたものの、市場には半年に1回程度の利上げが意識されている。東短リサーチと東短ICAPによると、市場が織り込む利上げ確率は5日午後時点で6月と7月の金融政策決定会合が最も高く、いずれも28%で、9月会合が19%、5月会合が18%と続く。

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは今回の内田副総裁の講演と会見について「米国の通商政策をめぐり不安定な市場を念頭に置きつつ、手堅くこれまでの発信内容を踏襲した印象だ」と受け止めた。

次の利上げ時期については「物価高の継続や円高が進まないといった要因から、4月以降柔軟に決めていくだろう」とみる。

第一生命経済研究所の熊野英生首席研究員は「日銀が一番気にしているのはトランプ大統領の円安に関する発言だろう。次の利上げは7月を予想していたが、米国次第で前倒しになる可能性がある。3月会合後の記者会見での情報発信に注目したい」と話した。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「次の利上げは基本は9月、早くて7月だろう。(景気を熱しも冷ましもしない)中立金利に近づくなかで慎重に見極める必要があるため、間隔が開いていくことになる」との見通しを明らかにした。

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