高級スーツも腕時計もいらない…キーエンス元トップ営業が明かす「お金をかけた"たった1つのこと"」(プレジデントオンライン)
結果を出している人はどんな努力をしているのか。『キーエンス 最強の働き方』(PHP新書)の著者で、キーエンスに13年半在籍し、3期連続で営業成績トップとなった齋田真司さんは「お客さまに違和感を与えない身だしなみや振る舞いをすることが大切だ。高級なスーツも腕時計も、ピカピカの靴も必要ない」という――。(第1回、構成=プレジデントオンライン編集部) 【写真】キーエンスの元トップ営業マンが、身だしなみで“もっともお金をかけたもの” ■営業マンには「愛されテク」が必要 日本トップクラスの年収を誇る企業として知られるキーエンス。その強さの秘密は、徹底したデータ活用や合理的な営業スタイルにあると思われがちです。もちろん、データや営業スタイルは基本的なスキルとしては重要です。 しかし、私が同社で史上初となる3期連続営業成績トップを記録できた理由は、こうした「基本スキル」以外にあります。それと同じくらい、あるいはそれ以上に重要な要素があったのです。それが「愛されテク」です。 「愛されテク」といっても、決して生まれ持ったカリスマ性や、天性の人たらしの才能が必要なわけではありません。それは「相手に違和感を与えない」「マイナスをゼロにする」ための、極めてロジカルで実践的な技術です。 どれほど商品知識が豊富で、完璧なプレゼン資料を用意していたとしても、目の前のお客様に「なんとなく嫌だ」「話しにくい」と思われてしまえば、その先へは進めません。心の扉を開いてもらうためのスキルが、「愛されテク」なのです。 特に新人のうちは、お客様である現場のエンジニアなどと比べ、圧倒的な知識格差があります。技術的な提案で勝負できない段階で、服装や態度で評価が下がってしまうと挽回のチャンスはほとんどありません。だからこそ、相手の懐に飛び込み、可愛がられ、教えてもらえる関係性を築く技術が、営業成績を左右する決定的な差となるのです。
■営業先に腕時計を着けて行ってはいけない お客様に違和感を与えないための第一歩は、身だしなみにあります。私が提唱する「愛されテク」の一つに「腕時計は着けていかない」というルールがあります。これは単なる精神論ではなく、リスク管理の観点から導き出されたひとつの結論です。 営業先、特に工場などの製造現場において、高級ブランドの腕時計は「給料が高い会社の人間が来た」という反感を招くリスクがあります。一方で、あまりに安価な腕時計やボロボロのものを着けていれば、「頼りない」「仕事ができなそうだ」という不安を与えかねません。 また、3万円程度の手頃な時計であっても、時計好きなお客様から見れば「センスが良い=高そうだ」と捉えられる可能性もあれば、逆に「安物を着けている」と見下される可能性もあります。つまり、どんな腕時計を選んでも、相手の価値観次第でマイナスの印象を与えるリスクがゼロにはならないのです。 であれば、最初から「着けない」という選択をすることで、そのリスクを最小限に抑えることができます。アップルウォッチなどのスマートウォッチも同様です。相手がどのような価値観を持っているかが分からない初対面の段階では、不要な情報を発信しないことが、もっとも安全で賢明な戦略となります。 ■「スーツと革靴」以外にコストをかける 身だしなみにおける「愛されテク」の真髄は、相手の環境に溶け込むことにあります。 キーエンスの営業先は工場などの製造現場が多く、お客様は作業着を着ていることも珍しくありません。そのような場に、新品の高級スーツにピカピカの革靴で現れれば、相手は無意識に心理的な壁を感じてしまうでしょう。「現場を知らない人間が来た」と警戒されれば、本音を引き出すことは難しくなります。 そのため、私はスーツや革靴はあえて高級品を選ばず、多少の着慣れた感がある状態を保つことを意識していました。完璧すぎる身なりは、時に相手に緊張感や劣等感を与えてしまうおそれがあるからです。適度に力が抜けているほうが、相手もリラックスして話ができます。 しかし、ここで勘違いしてはいけないのが「清潔感」の重要性です。スーツや靴が多少くたびれていても許容されますが、ワイシャツの汚れやシワだけは絶対に許されません。不潔さは生理的な嫌悪感に直結し、即座に「仕事ができない人」というレッテルを貼られる原因になるからです。 私は、スーツや靴の手入れはほどほどにしつつも、ワイシャツだけは毎回必ずクリーニングに出し、白くパリッとした状態を維持することにコストをかけていました。これが、好感度と清潔感を両立させる黄金比なのです。