道路側に窓がない家、ミステリーじゃなく実用性から…防犯性向上しプライバシーも確保

 道路に面した壁に窓を作らない戸建て住宅が目立つようになってきた。プライバシーや防犯性が確保でき、モダンな外観になることなどが受け入れられている。十分な採光や通風が得られるよう間取りなどを工夫する必要がある。(岩浅憲史)

横浜市にある会社員夫婦の2階建て住宅。道路側の外壁に窓がなく、すっきり見える

 横浜市内の住宅街にある木造2階建て住宅。道路側の大きな外壁に、窓がひとつもない。玄関ドアも道路側からは見えず、外壁は直線的なシルエットですっきりした印象だ。

 2021年にこの家を建てた会社員夫婦は、外出時に窓のカーテンを閉めて、留守と知られることがなくなったと喜ぶ。夫(44)は「防犯面で安心でき、外からの視線が気にならない。カーテンの開け閉めをせずに済むのは楽ですね」と話す。

採光や通風のため、リビングに窓をたくさん設けた

 採光のためにリビングやキッチンを吹き抜けにし、道路の反対側に大きな窓と高窓を設けた。窓からウッドデッキが目に入り、明るく開放的だ。

 この注文住宅を手がけた設計事務所「スムトコ」(東京)によると、近年、都市部の狭小地や住宅密集地などで道路側の壁に窓を作らない設計が増加傾向にあるという。窓を設ける場合も、通行人から中が見えない高い位置などにする施工例も目立つ。

 常務取締役の田沼明憲さんによると、プライバシーの確保や防犯性の向上といった理由のほか、断熱・気密性能の向上や騒音軽減、外観のデザインなどから選ばれているという。田沼さんは「外に閉じた外観は最近の住宅のトレンドになっています」と話す。


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東京都武蔵野市の男性会社員の住宅はモダンな印象=スムトコ提供

 同社が21年に施工した、東京都武蔵野市の会社員男性(65)の木造2階建て住宅は、窓のない正面側の壁を高級感のある左官仕上げにした。軒下にダウンライトを配置し、モダンでおしゃれな雰囲気。男性は「インパクトのある外観にしたかった」と話す。一方、約40平方メートルの中庭に面したリビングには大きな窓をいくつも設けており、家族が快適に過ごしているという。

 一方、道路側に窓がないことによるデメリットもある。「自然光が入りにくい」「 閉塞(へいそく) 感や圧迫感が生まれる」「家の外の景色が望めない」などだ。

 関西地方を中心に「窓のない家」を施工してきた住宅メーカー「IDEAL HOME(アイデアルホーム)」(大阪)統括建築プロデューサーの今井忠昌さんは「健康で快適な暮らしを損なわないよう、採光や通風に配慮したメリハリのある空間設計を考える必要がある」と指摘する。

 道路と逆側には掃き出し窓を複数設ける。吹き抜けや中庭、テラスなど開放的な空間を設け、その周囲に大きな窓やスケルトン階段などを配置すれば、光を十分に取り込めるという。外の庭木などの景色を窓からの「借景」として取り入れ、落ち着ける空間を作るなど、間取りを工夫することも重要だ。

 また、住宅内への光の入り方や風の通り方などは住宅の模型などで事前に確認しておく。今井さんは「施工後に後悔しないよう、しっかり検討してほしい」と助言する。

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