玉川法人会会員向け「女性健康セミナー」でのお話

先日、当院が所属しています玉川法人会の会員の方々を対象に、女性の健康にまつわるお話をする機会がありました。二年前から年一回のペースで女性健康セミナーを開催しており、第一回は月経困難症について、第二回は月経前症候群について、そして今回第三回は更年期障害・閉経後骨粗しょう症について情報を共有して参りました。

そこで今回は、先日のセミナーでお話した内容の一部を紹介したいと思います。

更年期トラブル対策は国家レベルの事業我が国初の女性首相になられた高市総理も、かつて更年期障害に悩まれていた過去があるようで、所信表明演説でも「女性は生理、更年期、周産期にも苦しい時がある。学校や職場でもその女性が辛い時に、男性にもちゃんと理解していだけるよう、啓発活動を進めていきたい」とお話されました。また、ある経産省の資料によると、更年期障害による年間経済損失額は約二兆円にもなり、国家としても重要な課題になっています。

更に、中高年女性の約3割は更年期障害に悩んでおり、働く女性の1割近くが更年期障害を理由に退職、7割近くが更年期障害を理由に昇進を辞退または辞退するか悩んだ、といった報告もあります。

更年期障害改善のためには閉経前後5年間、合計約10年間を更年期と言い、ほてり・発汗・動悸などの身体症状、イライラ感・抑うつ・不安感などの精神症状を「更年期症状」、生活に支障きたす状態になったものを「更年期障害」といいます。更年期障害の原因として、エストロゲン低下といったホルモン因子、家族や職場のストレスといった環境因子、几帳面といった性格因子が挙げられますが、これらが複雑に絡み合って更年期障害をきたすと考えられています。

治療として、エストロゲンを補うホルモン補充療法、様々な生薬が効果を発揮する漢方療法、大豆イソフラボン(エクオール:植物性エストロゲン)のサプリメント「エクエル」などが日常診療ではよく使用されており、当院でも患者さんの症状・体質などを基に治療法を決めています。

エストロゲン低下は閉経後骨粗しょう症を招く男女とも、思春期における性ホルモンの上昇とともに骨量は上昇しますが、20歳ごろに人生のピークを迎えます。その後骨量は維持またはゆっくり減少しますが、女性の場合、更年期にエストロゲン分泌が減少すると、骨代謝も変化し、骨が溶けやすくなります。その結果、骨量が急速に低下し骨粗しょう症になると、骨折・寝たきりにリスクが急増するため、更年期における骨粗しょう症対策は非常に重要です。閉経後のホルモン補充療法も骨粗しょう症予防・治療に有効ですが、カルシウムやビタミンDを多く含む食品の摂取や骨に刺激を与えるような運動も更年期女性には欠かせません。

また、体内の70~80%のビタミンDは皮膚で合成されますが、その際に必要なのが、ある波長の紫外線です。したがって、UVカットをし過ぎないで適度に日光浴することもお勧めです。

今回のセミナーでお話をした更年期以外にも、女性は一生を通して様々なトラブルに見舞われます。人生のステージに応じた生活習慣の改善を心掛けながら、女性特有の症状で生活の質が低下した場合には、お気軽に婦人科クリニックを受診して下さい。私としては今後も、思春期から更年期・シニア世代の女性健康にまつわる情報を、会社経営者や男性の方にも直接お伝えできる機会を作っていこうと考えております。

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