印・パキスタン緊張再燃、両国首都で爆発事件相次ぐ-計20人死亡
インドとパキスタンの首都で24時間以内に発生した爆発により、少なくとも20人が死亡し、多数が負傷した。核保有国である両国の間で緊張が再燃する懸念が強まっている。
インドの首都ニューデリー中心部で10日夜、世界遺産「レッドフォート(赤い城)」近くで車が爆発。翌11日午後には、パキスタンの首都イスラマバードの裁判所庁舎前で自爆攻撃が発生した。現地警察によると、建物への立ち入りを拒否された男が群衆の中で爆弾を爆発させた。
パキスタン首相府は声明文で、国内で起きたテロ攻撃にインドが関与していると非難した上で、今回の事件を「地域におけるインドによる国家支援テロリズムの最悪の例の一つ」と断じた。インド政府の関与を示す具体的な証拠は示していない。パキスタン政府はこれまでもインドに対して、類似の非難を繰り返している。
AP通信によると、イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」から分派した「ジャマートゥル・アハラール」が犯行声明を出した。パキスタンのタラル情報相は現時点でコメントしていない。
インド外務省の報道官は、パキスタンの主張を「根拠がなく事実無根」とし、同国指導部は「明らかに錯乱している」とX(旧ツイッター)に投稿した声明で批判した。
インドのモディ首相はこれに先立ち、ニューデリー爆発事件の背後にいる「共謀者」を必ず処罰すると表明。ただ、容疑者の名前を挙げることや事件をテロ攻撃と断定するは避けた。
インドとパキスタンの間にくすぶる不信感は、今年5月に発生した4日間の軍事衝突を経て一段と深まった。この衝突では、両軍がミサイル、ドローン、砲撃などを投入して激しく交戦し、1971年の全面戦争以来となる多くの犠牲者を出した。係争地カシミールでインド人観光客が襲撃された事件が衝突の発端で、インド政府はパキスタンの支援を受けたテロ組織による犯行と非難していた。
ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)南アジア研究所のスビール・シンハ所長は、今回の一連の事件で、両国間で再び衝突が起きるリスクが高まっていると指摘。「前回のパキスタンへの軍事作戦は限定的な成果にとどまったにもかかわらず、インド国内では再び衝突を望む声が少なくない」と述べ、「多くの国民にとって、前回の作戦は圧倒的な成功と受け止められている」とした。
ニューデリーの爆発で炎上した車はカシミール在住の人物が購入し、爆発当時その車内にいたと、複数のインド政府関係者が匿名を条件に明らかにした。この人物が自爆攻撃を行った可能性について、当局は捜査を進めているという。関係者らによると、インド政府はテロ関連事件を担当する捜査機関に捜査を指示した。インド内務省に電子メールでコメントを求めたが、現時点で応じていない。
パキスタン政府も事件の捜査を命じ、事件に関与した人物を法の裁きにかけると表明した。
原題:Blasts Rock Capitals of India and Pakistan, Raising Tensions (3)(抜粋)
— 取材協力 Khalid Qayum and Alex Gabriel Simon