ドイツ財政規律緩和に国内反発、防衛費増支持も極右躍進
[ベルリン 24日 ロイター] - ドイツ次期首相就任が確実視されるフリードリヒ・メルツ氏は、長期間維持されてきた政府の財政規律を緩める決断を下し、国際的に高く評価されるものの、国内では政治的反発の広がりに直面している。
メルツ氏が党首を務める保守政党キリスト教民主同盟(CDU)と姉妹政党キリスト教社会同盟(CSU)が長く財政拡張に厳しい姿勢をとってきただけに、メルツ次期首相が公的債務の拡大容認に舵を切ったことで驚きが広がった。
23日発表のINSAの世論調査によると、メルツ氏の財政拡張政策について全有権者の73%、CDU・CSU支持者の44%が「裏切られた」と感じていることが明らかになった。CDU・CSUの支持率は1ポイント下がって27%となり、一方で、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は1ポイント上がって23%を確保した。支持率の差は総選挙が行われた2月23日時点の8ポイントから4ポイントに半減した。
メルツ氏は選挙戦で「財政支出を拡大しない」と約束していたが、選挙後に方針を大きく転換した。
INSAのヘルマン・ビンクェルト代表は「CDU・CSUは公的債務対策に関する選挙前の公約を果せなかった。失望した一部の有権者が支持政党をAfDに切り替えている」と述べた。
連邦参議院(上院)は21日、財政規律を緩和する憲法改正案を承認した。数十年にわたる「財政保守主義」の放棄により、経済成長の回復を図ることに加え、トランプ米政権が欧州防衛に後ろ向きの姿勢を示すことを受けた新たな欧州集団防衛体制に向け、防衛費増加の道筋を付けた。
しかし、CDU支持者の間では賛否が真っ二つに分かれている。
第二次世界大戦末期の1944年生まれのユルゲン・フェダーセン氏は防衛費増額に伴う財政拡張を甘受した支持者の1人。過去50年間、CDUに投票し、アンゲラ・メルケル前首相が導入した「債務ブレーキ」の熱烈な支持者だった。
しかしフェダーセン氏は「米国がもう助けてくれないなら、自衛するしかない。ロシアは強硬姿勢を崩さないだろう。私は(ロシアのプーチン大統領)を信用していない」と話した。
調査会社フォルシュングスグルッペ・ヴァーレンのアンドレア・ヴォルフ氏はロイターの取材で、ドイツと欧州を取り巻く(安全保障への)脅威の環境変化を受けて、軍事力と防衛システム向け歳出増加に幅広い支持が広がっていると述べた。
だが、CDUの若年者支持層では財政拡張への反発が根強い。歳出急増の負担が自分たちに降りかかると恐れているためで、従来の財政政策でさえ既に住まいのステップアップに苦しんでおり、将来の年金受給や福祉給付が危うくなると警戒心が渦巻いている。
世論調査会社Forsaのマンフレッド・ゲルナー代表は「発足する連立新政権が再び国民の期待を裏切ることになれば、次の総選挙ではAfdがドイツ東部だけでなく全国で最大議席数を獲得する可能性を排除できない」と話した。
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Maria Martinez is a Reuters correspondent in Berlin covering German economics and the ministry of finance. Maria previously worked at Dow Jones Newswires in Barcelona covering European economics and at Bloomberg, Debtwire and the New York Stock Exchange in New York City. She graduated with a Master of International Affairs at Columbia University as a Fulbright scholar.