【138】超加工食品は妊娠・妊活に影響する? 最新研究でわかった男女それぞれへのリスク

こんにちは。産婦人科医の齊藤英和です。 近年、生殖の健康に影響を与える修正可能な要因として「食事」への関心が高まっています。また同時に、世界的な食事パターンは大きく変化し、超加工食品(UPF:ultra-processed food)への依存が進んでいいます。今回は、このUPFについて紹介します。

妊娠の成立や初期発生には、男女ともにUPF摂取など悪影響を与える因子をなるべく少なく

UPFは高度に加工された工業製品であり、添加糖、飽和脂肪・トランス脂肪、塩、添加物が多く、食物繊維や必須栄養素が少ないといわれています。そして、これらは一部の高所得国においては総エネルギー摂取量の50〜60%を占めるまでになっています。

最新の国際エビデンスでは、このUPFの摂取量が多いほど、多くの重大な健康障害リスクが上昇することが確認されています。 特に 心血管疾患・糖尿病・肥満・腎疾患・うつ病・全死亡リスク の上昇が強く示されています。

今回、世界的にUPF摂取が急増する中、男女双方の妊娠前後のUPF摂取が生殖能力や妊娠初期の発生段階にどのように影響するかを明らかにする研究が報告されたので紹介します(Hum Reprod. 2026 May 1;41(5):722-732. doi: 10.1093/humrep/ deag023.)。

まず、最初に、あまりなじみのない言葉である超加工食品について説明します。 NOVA分類では食品を下記に示すように4つに分けます。

グループ 内容 1:未加工・最小限加工食品 野菜、果物、肉、魚、卵、米、小麦など 2:加工調味料 砂糖、塩、油、バターなど 3:加工食品 パン、チーズ、缶詰、味噌、漬物など 4:超加工食品(UPF) 工業的に製造され、添加物・加工技術に依存した食品

UPFの特徴は、

【1】家庭では再現できない加工工程(抽出・精製・加水分解・成形・押出し加工など)を使用している 【2】添加物(乳化剤、香料、着色料、甘味料、保存料、増粘剤、pH調整剤など)が多い食品 【3】原材料よりも“加工”が主体で、高糖質・高脂肪・高塩分になりやすい

【4】食物繊維・微量栄養素が少ない

という特徴を持つ食材です。UPF基準のポイントは、【1】 “どのように加工されたか”で分類される、【2】添加物の多さではなく、加工工程の複雑さが本質です。

今回の研究の症例は18歳以上で、ロッテルダム在住の妊娠を希望している、またはすでに妊娠している女性とそのパートナーです。カップルは 2017〜2021年 の間に、妊娠前または妊娠中に登録されました。 追跡は小児期まで継続されています。

この研究では、妊娠初期にランダムに選ばれたグループに食事調査票(FFQ)が配布され、1054名の女性が食事データを登録しています。 解析対象は以下の2つに分けられました。

1.妊孕(にんよう)性(fertility)解析用:831名の女性 2.胚発育解析用:704名の女性(最終月経開始日が明確で、妊娠初期の超音波データがある症例)

男性パートナーの食事データは 1.妊孕性解析:651名 2.胚発育解析:537名

また、妊娠は女性側の生物学的プロセスであるため、女性のデータがある場合のみパートナーのデータを使用しました。

妊娠前後のUPF摂取の評価は、妊娠 12週(中央値)の時点で、半定量式食物摂取頻度調査(HELIUS FFQ)を用いて評価しています。また、不適切なエネルギー食品摂取例(例:女性 <500>3500 kcal)は除外しました。また、UPF分類は、NOVA分類に基づき、非UPFとUPF(グループ4)の2つに分類しています。500>

妊娠までの期間と受胎様式は、受胎前および妊娠初期の質問票によって評価しています。最終月経の初日は産科医療者から取得し、体外受精等の生殖補助医療(ART) によって妊娠に至った女性については、これらの治療が一般的に 1 年間妊娠しなかった後に開始されることから、妊娠までの期間に 12 ケ月を加算しています。

受胎能(Fecundability)は、1ケ月以内に妊娠する確率として定義しています。 また、妊娠までの期間は、(1)12ケ月未満(fertile:妊孕性あり)、(2)12ケ月以上(Subfertility:妊孕性低下) の 2 群に分類しました。ART を受けた女性は Subfertility 群に含めています。

研究結果は、女性(母親)では、UPF摂取量は妊孕能とは関連しませんでしたが、調整モデルでは、UPF摂取が多いほど、妊娠7週の 胚の発育指標である頭殿長が小さく(差:−0.13 SDS(95% CI: −0.25, −0.01)、また卵黄嚢体積も小さい値でした(差:−0.14 SDS(95% CI: −0.26, −0.02)。また、これらの関連は妊娠9週・11週では弱まりました。

一方、男性(父親)では、UPF摂取量が多いほど妊孕能が低下(FR: 0.90, 95% CI: 0.83–0.99)し、不妊性低下のリスクが上昇(OR: 1.36, 95% CI: 1.11–1.67)しました。また、父親では UPF 摂取は初期胚発育とは関連しませんでした。

妊娠第1三半期における胚成長の障害は、早産、低出生体重、さらには小児期の心血管リスクの上昇など、不良な出生結果をもたらすことが指摘されています。

また、卵黄嚢は胎盤機能が確立する前の胚への栄養供給に重要な役割を果たし、その発達不全は流産や早産のリスク増加と関連しています。

そのため、これらのリスクを軽減するためには、男女双方において妊娠の成立や初期発生に、UPF摂取など悪影響を与える因子をなるべく少なくすることが重要となってきています。

PROFILE齊藤英和先生

1953年東京生まれ。梅ヶ丘産婦人科ARTセンター長。昭和大学医学部客員教授。近畿大学先端技術総合研究所客員教授。国立成育医療研究センター臨床研究員。浅田レディースクリニック顧問。専門分野は生殖医学、特に不妊症学、生殖内分泌学。

関連記事: