ウニはトゲトゲの脳である

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これはエクストリーム進化だわ。

一部の動物は、進化の過程で振り切った選択をしちゃうようです。一般的なウニはその代表みたいなもので、体中がとげ状の神経系で覆われています。その神経ネットワークの一部には、人間の目の構造に似た光を感じる細胞まで備わっているそうです。

ウニは脳である

科学誌Science Advancesに掲載されたオープンアクセスの研究結果によると、海底でひっそりと暮らしている丸くてとげだらけのウニは、シンプルにいえば「全身が脳」なのだとか。

Image: Periklis Paganos / Museum für Naturkunde Berlin

ちょっと意味わかんなくないですか? でも、トップ画像を見ると、確かにこういう髪型の人いますよね。そう、ウニは頭だけでできています。とげ付きの丸いボディ、じゃなくて頭があるだけで、手も足も胴体もありません

科学者は、声明で「全身が脳」と表現しているように、ビックリするくらい複雑な神経系が張り巡らされているんです。

脊椎動物並みの神経細胞ネットワークを持つウニに視覚あり?

重要なのは、この神経系が単なる神経細胞の寄せ集めではなく、脊椎動物の脳の構造によく似た高度な細胞ネットワークである点です。

さらに、ウニの頭部には複数の光感受性細胞(光受容体)が存在しており、これまで知られていなかった視覚能力を持っている可能性があるのだとか。

研究の主執筆者であり、ドイツのベルリンにあるフンボルト博物館の研究者であるJack Ullrich-Lüter氏は声明で以下のように述べています。

私たちの研究結果は、従来の中枢神経系を持たない動物でも、脳のような組織を発達させられることを示しています。これは、複雑な神経系の進化に関する私たちの考え方を根本的に変える発見です。

思春期ウニの進化を追え

人間を含む多くの動物の体は、おおむね左右対称になっています。しかし、ウニやその仲間であるヒトデやナマコなどは、最初は左右対称なんですけど、途中で「劇的な変態」をへて五放射相称(5つの部分に分かれた円形の対称性)の形になります。ヒトデがわかりやすいですが、ナマコなどは見ただけではわかんないですよね。

科学者は長年にわたってウニやヒトデなどのユニークな進化に魅了されてきました。しかし、論文によると、これまでの遺伝子研究は主に変態前の段階に焦点が当てられていたそうです。

そこで研究チームは、まずウニがこの劇的な変化を遂げる過程で、そのゲノムににどんな仕組みが働くのかを解明しようとしました。つまり、ひとつのゲノムがどうやって「根本的に異なる二つの身体構造」を生み出しているのかを探ろうとしたのです。

そのために、変態を終えたばかりの若いウニを対象に徹底した遺伝子解析を行ない、大変身を可能にしている細胞の特定を試みたといいます。

エイリアンを凌駕するウニの驚異

その過程で、チームはさらに驚くべき発見をしました。ウニの体全体に、予想以上に精巧な神経細胞ネットワークが広がっていたそうです。実のところ、ウニの体そのものが巨大な頭であり、他の生物では内臓を構成するはずの遺伝子がすべて体(頭)の中に詰め込まれていると論文は指摘しています。

Image: Periklis Paganos / Museum für Naturkunde Berlin

論文によると、神経細胞群は「単なる神経細胞と神経節のネットワーク」をしのぐ精巧さで、中枢神経系が存在しない脳を持つウニのような生物が「単純」であるという従来の認識に疑問を投げかけています。

今回の新たな分析によって、驚くほど多様な神経細胞群と高度に専門化された神経ペプチドの存在が明らかになりました。研究チームはさらに、異なるタンパク質を組み合わせて光刺激を感知・処理する能力を持つ光感受性細胞(光受容体)も同定しています。

要するに、ウニは私たちが思っていたよりもはるかに高度な生き物みたいです。これまで考えられてきたよりも多くのことを感じ取っている可能性もあります。

今回の研究結果が解き明かしたウニの能力は、きっと氷山の一角に過ぎないんでしょうね。海のエイリアンが今度はどんなサプライズをもたらしてくれるのか楽しみです。

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