「亡きあさひと山頂へ」 川崎ストーカー事件、兄が歌に込めた誓い
今もまだ、夢ではないかと思う。優しく、家族思いだった妹。「これ買ってほしい」。一緒に買い物に行き、そう言って甘えてきた姿を鮮明に思い出す。
でも、もう会うことはできない。彼女は、二十歳で命を落とした。「助けてあげられなくて、本当にごめんね」。兄は苦しみの中で言葉を紡ぎ、思いを歌詞に乗せた。
ラップをユーチューブで公開
川崎市川崎区の民家で4月、岡崎彩咲陽(あさひ)さん(20)の遺体が見つかった事件。彩咲陽さんの兄で、「Liberty」(リバティー)のアーティスト名で音楽活動をしている小太郎さん(24)は今月、妹が生きた証しを多くの人に知ってもらおうと、ラップの曲をインターネットで公開した。
ヒップホップとの出会いは中学時代。偶然聞いた曲に心を打たれ、地元の友人らと遊びで始めた。
神奈川県外の高校を卒業して地元に戻り、4年ほど前から本格的に曲作りをするようになった。
応援してくれた妹
彩咲陽さんとは幼い頃から、他の兄弟も交え一緒によく遊んだ。運動神経が良く、足が速かった彩咲陽さん。小学校の運動会ではいつもリレーの選手に選ばれ、中学は陸上部だった。
明るい性格で、踊ったり冗談を言ったりして周囲を笑顔にしてくれた。
小太郎さんが落ち込んでいる時は、いつも「大丈夫?」「話聞くよ」と声をかけてくれた。
誕生日には毎年、スマートフォンで長文のメッセージをくれた。「本当に人思いで優しかった。友達や家族と過ごす時間が大好きな妹でした」
音楽活動を親身に応援してくれたのも彩咲陽さんだった。「この曲好き」「頑張ってね。応援してるよ」。新曲を出すと、いつも丁寧に感想を伝え、友達にも曲を紹介してくれた。
「いつか音楽で有名になったら、最初に2人で記念写真を撮ろう」。兄妹は、そう約束していた。
奪われた日常
そんなかけがえのない日常は、2024年夏ごろから大きく変わってしまった。
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