誰にでも当てはまる性格診断を信じてしまう「バーナム効果」には現代の若者もダマされるという研究結果
性格診断や占いなどで、誰にでもあてはまる部分があるような曖昧な特性を「自分にピッタリあてはまる」と考えてしまう心理学的な現象を「バーナム効果」と呼びます。バーナム効果はよく知られている上、インターネットやSNSで情報を得やすい現代ではバーナム効果にダマされる人が減っただろうと考える人もいるかもしれませんが、フランスのナント大学の心理学者が2025年に発表した論文では、現代の若者もバーナム効果によって曖昧な性格診断や占いを簡単に信じてしまう可能性が示されています。
Getting students interested in psychological measurement by experiencing the barnum effect.
https://psycnet.apa.org/record/2025-93651-009Why You Might Not Want to Trust a Personality Test | Psychology Today https://www.psychologytoday.com/us/blog/fulfillment-at-any-age/202507/why-you-might-not-want-to-trust-a-personality-test
バーナム効果とは、アメリカの有名な興行師であったフィニアス・テイラー・バーナムの「誰にでも当てはまる要点という物が存在する」という言葉にちなんで、アメリカの心理学者であるポール・ミールが1956年に名付けた心理学的効果です。被験者に心理的な検査を実施した後、その検査結果とは関係なく「あなたは自分が正しい決断を下したのか、正しい行動を取ったのか、真剣に疑問に思うことがあります」というような「誰にでも当てはまりそうな性質」を伝えた場合に、被験者は「この心理的検査は適切だ」とダマされてしまうのがバーナム効果です。
バーナム効果は別名「フォアラー効果」とも呼ばれます。フォアラー効果の元になった心理学者のバートラム・フォアラーが1949年に心理学コースの学生39人を対象に実施した研究では、偽の心理学診断をして誰にでも当てはまるフィードバックを学生に伝えた結果、学生による0~5の6段階の平均スコアは「約4.26」で、非常に信頼性が高いと評価されました。一方で、2002年にバージニア工科大学のE・スコット・ゲラー氏が発表した論文では、同様のバーナム効果を狙ったテストの評価は1~10の10段階で平均「3.6」と、受け入れた学生が一部のみだったと報告されています。
ナント大学の心理学者であるコランタン・ゴンティエ氏とノエミル・トマサン氏は、人々が偽のフィードバックを信じてしまう傾向に変化があるのか確かめるため、学生に「検証済みの最先端の性格テスト」と伝えた上で、30項目のテストをオンラインで実施しました。テストには2269人の学生が参加し、学生は「バーナム効果を狙った偽のフィードバック」を受け取った上で、テストの有効性を0~5の6段階で評価しました。
結果として、学生の85%がテストの有効性を「4」または「5(満点)」で評価し、全体の平均スコアは3.59と、現代の若い世代にもバーナム効果を意図したテストは有効であると結論付けられました。さらに、学生の77%が、「診断はバーナム効果によるウソのテストだった」と知らされる前の時点で「この診断は有効性が高いため、将来の職業上でこの診断を利用したい」と回答しました。
ゴンティエ氏とトマサン氏が検証したもう一つの側面が、バーナム効果を教育的ツールとして活用するためのアイデアです。ゴンティエ氏とトマサン氏が専門とする「心理測定学」は、心理学の分野で人の心や行動を数値で測定するための学問であり、学部生にとってあまり人気があるテーマとは言えないそうです。しかし、著者らは「テストの仕組みに関する学生の理解に疑問を投げかけることで生み出される『認知的葛藤』は、学生を積極的に巻き込み、心理測定学への関心に関する先入観を変えるのに役立つはずです」と述べ、簡単にだまされやすいバーナム効果を実体験させることで、心理測定学に興味を持ってもらいやすくなるかもしれないと主張しています。マサチューセッツ大学アマースト校の心理学脳科学科名誉教授であるスーザン・クラウス・ウィットボーン氏は今回の研究結果について、2つの重要なポイントを挙げています。まず、教育的観点から見ると、あまり興味を向けられていない分野の学問でも、バーナム効果を実体験した学生が授業への没頭度を高めた傾向にあったように、学生の想像力を刺激することで、効果的に学習意欲を刺激することができる可能性があります。教育分野に限らず、子どもとの会話やビジネス上の打ち合わせでも、抽象的な点について議論し続けていることを感じたら、力強い具体例を挙げて議論を刺激するとうまくいくはずだとウィットボーン氏は述べています。
また、ゴンティエ氏とトマサン氏の研究は、バーナム効果が依然として引っかかりやすい心理学的なワナであることを示唆しています。ウィットボーン氏は「信じたいもの(自分の良い面)を信じ、信じたくないもの(あまり良くない面)を無視してしまうというのは、『確証バイアス』と呼ばれる現象によるものです。あまりにも簡単に信じてしまいそうなことがあったとき、真実をかぎ分けるためには、賢さが必要です」と語りました。
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