小学生70人に算数を教える「100歳先生」 “ずっと現役”の秘けつとは? 「好物は天ぷらとステーキ」
〈次の数を9で割ったあまりはいくつですか。/915736/426847/123456789〉 【写真を見る】大人でも難しい? 「100歳先生」が自ら作った問題 問題を見たとたん、固まってしまった。小学校6年生向けというが、地道に解く以外の解法が分からない。他にも多角形の面積を求めさせたりと、小学生の算数ってこんなに難しかったかと驚く。問題を作ったのは片桐重男氏。当年取って100歳である。現在、東京・国分寺市で、年間10回、算数教室(国分寺市算数教室)を開いている。参加する児童は約70人だ。
「教えるといっても最近は、若い先生方に教壇に立ってもらいます。もちろん、私も同席し、分からない児童がいれば直接教えてあげますよ」(片桐氏) 授業で使う分厚いテキストは、本人が中心となって作成する。これを百寿でこなすとは感心だが、片桐氏の人生を振り返ればうなずける。 生まれは、東京・新宿区。小学校を出ると、家が貧しかったこともあって、働きながら中等教育学校に通う。 「ところが、そこは商業学校なので難しい数学なんて教えてくれません。だから、授業を聞くふりをしながら、こっそり机の下で勉強していました」 「内職」のおかげもあって東京高等師範学校(現・筑波大学)に合格。大学院を出た後は、文部省の官僚や、横浜国立大学教授、同附属中学校校長、私大教授として数学教育に力を入れてきた。
70代を迎えて現役を退いたものの、小学生に算数を教えてほしいとの依頼が舞い込んだ。 「私の教室は学校の授業とは基本的に別です。また、難関校への進学を目指すためでもない。あくまで子供たちに算数を楽しんでもらうのが目的です」 ほかには数学教育のための研究会にも出席して、1時間以上弁舌を振るう。が、ずっと健康だったわけではなく80代でがんの手術を経験したことも。食事や健康法について聞くと、 「私はあまり外食が好きじゃなくて、三食をほぼ家で食べます。好物は天ぷら。それにステーキも。あとはニンニクを使った料理も好きでね。お酒は毎晩、日本酒や焼酎を1合弱。健康法かどうか分かりませんが、凝り性のためゴルフ、ランニング、自転車など、興味があるものは何でも納得するまで試しました。それと近くの多摩川まで、昔はよく歩いたものです(註・往復10キロ近い)。最近は妻が良いデイサービスを見つけてくれて、そこで体操するのがいいね」 そう話す100歳先生。 今日も子供たちが頭をひねる「良問」を、考えているのである。
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