テンセントの“『Horizon』風ゲーム”を巡る訴訟で、SIEが反論に反論。「テンセントがややこしい企業構造で責任逃れしている」とも批判

『LIGHT OF MOTIRAM』

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)は今年7月、テンセント傘下スタジオが手がける『LIGHT OF MOTIRAM』について、『Horizon』シリーズ作品の著作権および商標権を侵害し、消費者の混同を招いているとして提訴。これに対して9月にテンセントが訴状の却下を申立てていたが、SIEが申立てに反論をおこなったことが明らかとなった。海外メディアThe Game Postが報じている。

『Horizon』は、SIE傘下のGuerrilla Gamesが手がけたシングルプレイのオープンワールド・アクションRPGシリーズ。これまで第1作『Horizon Zero Dawn』とその続編『Horizon Forbidden West』のほか、関連作品も展開。かつての文明が失われ機械獣が住まう世界を舞台に、主人公である狩人アーロイの旅路が描かれてきた。

そして『LIGHT OF MOTIRAM』は、テンセント傘下のPOLARIS QUESTが手がけるマルチプレイ対応のオープンワールドサバイバルゲームとして、2024年11月に発表された。文明崩壊後の世界をメカが野生生物のように闊歩するという舞台設定が『Horizon』シリーズに酷似。また、キービジュアルも『Horizon Zero Dawn』のものに似ているとして、発表当初から物議を醸していた。

SIEは今年7月、カリフォルニア州北部地区連邦裁判所にて、テンセントを相手取る訴訟を提起。『LIGHT OF MOTIRAM』を「slavish clone(独創性のないクローン)」であるとし、テンセントの関連企業による著作権および商標権侵害のほか、消費者を混乱させる恐れがあると主張して、リリースや宣伝等の差し止めや損害賠償を求めた(関連記事)。

対してテンセント側は9月に、SIEの訴状の却下を求める申立て(Motion to Dismiss)をおこなった(関連記事)。訴状に対してさまざまな反論がなされており、たとえば訴状にはTencent AmericaやProxima Beta U.S.など米国を拠点とするテンセント関連企業が被告として名を連ねているが、これらの企業は『LIGHT OF MOTIRAM』の開発やマーケティングに携わっていないと主張。さらに、SIE側は各被告の個別の侵害行為を特定・裏付けしておらず、まとめて被告として論じる不適切な集団的主張(improper group pleading)に及んでいるとも主張した。このほか、関係証拠や証人がアジアに所在しており、米国での審理が非効率であるといった反論もおこなわれている。

またテンセントは、『LIGHT OF MOTIRAM』が2027年第4四半期に発売予定でまだ流動的な開発段階にあり、発生していない損害について請求をおこなっているとも主張。『Horizon』シリーズの主人公「アーロイ」のキャラクターのシルエットなど、侵害されたとする商標権についても抽象的かつ不明確であり、商取引上で使用されていることが十分に立証できていないといった主張もおこなわれていた。

『Horizon Zero Dawn Remastered』

そうしたテンセント側の申立てに対して、今回SIEは反論をおこなっている。このなかでSIEは先述したTencent AmericaやProxima Beta U.S.などの被告らは米国向けのトレイラー公開、SNS向けの発信、公式サイトの開設といったかたちで米国内でのマーケティングに関与していたと主張。またアーロイのキャラクター商標についても、実際にアパレル商品や宣伝なども含め広範に使用されてきたのに対し、『LIGHT OF MOTIRAM』ではアーロイに見た目や服装が類似した主人公像がSteamのバナー画像など各所でブランドイメージとして提示されていたと指摘している。そのため未発売の作品であっても、すでに宣伝などを通して消費者による混同など具体的な損害が発生・継続していると主張された。

このほか文書内でSIEはテンセントが、持株会社のほか、複数のブランド、シンガポールおよび中国の子会社、Tencent Gamesの部門、そしてそれらの各関連会社の米国子会社を組み合わせた「意図的に不透明な企業構造(deliberately opaque corporate structure)」をとっていると主張。テンセント側は先述したようにSIE側が不適切な集団的主張に及んでいると論じているものの、SIE側は訴状にて“意図的に不透明な企業構造”も踏まえて、各被告の関与を十分に主張していると述べる。またSIE側は、テンセント側の申立てについて、不透明な企業構造を利用し責任を回避する手口(shell game)であるとも批判している。

テンセントがおこなった訴状の却下を求める申立てに対し、さっそく反論をおこなったSIE。両社の主張は食い違っており、裁判所側がどのように判断をおこなうかは注目されるところだろう。テンセント側の申立てについての公聴会は現地時間11月19日に予定されており、関心が高まる。

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