1.36km先に書かれた3mmの文字を読み取るレーザー技術。中国が開発
すごい技術。でも、それってプライバシーは…?
どんなに視力が良い人でも、数km先の文字を読むことは難しいはず。でも、それが実現できるとしたら、あなたは何に使いますか…?
中国科学技術大学の研究者たちが主導した研究で、8本の赤外線レーザーを特定の遠距離の地点に向けて照射する装置のテストで、これまで以上の脅威的な精度が記録されました。
なんと1.36km先の、それも3mmの文字を読み取れる精度を実現したんです(3mmって手元にあっても読むのに苦労しそうな…)。
カメラと違う方法で遠くの文字を読む仕組み
使われたアプローチは強度干渉法(Intensity Interferometry)といい、通常のカメラとは異なるアプローチで画像を取得します。通常のカメラが光を直接測定するのに対し、この技術では光がどのように自らに反射し干渉するかを測定し、そのデータから画像を再構成します。
強度干渉法は、直接「形」を写すのではなく複数の観測地点で「同時に届く光の明るさのパターン(ゆらぎ)」を記録し、それらの相関関係を計算した上で逆算して画像を作る仕組みです。 具体的に遠くにいる猫のシルエットを知りたいときを考えてみましょう。
猫は1km先の草むらにいて、レンズではぼやけてよく見えません。
①ですが、猫の毛が光をチラチラと反射して、わずかな明るさの違いが2つのセンサーに届きます。
②その「明るさのゆらぎ」を2台のセンサーで記録して、その差を比較します。
③すると「どこに明るい部分があり、どこに暗い影があったか」が数式的に推定できます。
④その結果から「猫の耳が立ってるぞ」と画像を再構成することができます。
…という手順をたどり、強度干渉法は光の強さのパターン(ゆらぎ)を記録するので、遠くの対象でも観測することができる。ということなんです。
3mmの解像度を実現したのが今回のすごいところ
Image: Liu et al., Physics Magazine今回の研究内容における快挙は、3mmの解像度で文字を正確に読み取ることができたというところにあります。
同じ距離で望遠鏡の1台だけを使用する場合、解像度は42mmが現時点での限界です。いかにこの方式の解像度が優れているのかわかるかと思います。
この成果は大きな進歩で強度干渉法の可能性を示しています。この技術はもともと宇宙観測所で使用されていましたが、現在では地球上の様々な最先端の物理実験に応用されています。
これまでは非常に明るい遠方の星や、近くに光源がある物体の観測用と考えられていましたが、今回の応用は、今後活用の幅が広がる新しい利用方法となりそうです。
活用の幅はとても広い
このような長距離カメラ技術は、宇宙望遠鏡からリモートセンサーに至るまで様々な用途に活用されています。また、今回使用された方法は光を直接観測するわけではないので、大気が乱れていても画像をきれいに処理することができます。
光子がどのように束になるかがどのように解釈されるかは、通常の物理学の枠を飛び出して量子効果を用いて考える内容であり、今回の高解像度を実現している重要な要素の1つです。
研究者たちは、赤外線レーザーの制御方法を改善することで、さらに高性能な技術へと発展できると述べています。また、AIをシステムに追加することで、特定の文字や形状をより正確に解釈できる可能性も示唆されていて、非常にポテンシャルが秘められた分野となっています。
技術自体はすごいので、さまざまな分野で応用が期待されますが、用途によってはプライバシーの懸念もありそう…。これからどんな分野で活用の場が与えられていくのか要注目です。
Source: Science alert, Physics magazine