ヒゲワシの巣から7世紀以上前のサンダル見つかる、他にも驚きの文化的遺物が スペイン

ヒゲワシの巣から見つかった7世紀以上前のサンダル。小枝や草を編んで作られている/Sergio Couto

(CNN) ヒゲワシは骨を主食とする特異な食性を持つ大型猛禽(もうきん)類で、長年鳥類学者を魅了してきた。しかし新たな研究により、この骨食いの鳥が従来考えられていた以上に興味深い存在であることが明らかになった。科学者らによれば、入念に作られるヒゲワシの巣は複数世代にわたって使用されるため「天然の博物館」として機能し、数世紀にわたる文化的遺物を保存している可能性があるという。

スペインでは2008年から14年にかけ、研究者らが12のヒゲワシの巣を調査。巣を形成する層ごとに分析した結果、200点を超える人工物を発見した。ヒゲワシたちはこれらを巣作りの材料として再利用した可能性がある。炭素年代測定により、これらの巣は少なくとも13世紀に遡(さかのぼ)ることが判明。見つかった最古の遺物は700年以上前のサンダルだった。この発見は9月11日付の学術誌エコロジーに掲載された。

ヒゲワシは骨を主食とする特異な食性を持つことで知られる/Antoni Margalida

「ヒゲワシが巣作りのために物を運ぶ種であることは知っていたが、発見された遺物の数とその年代には驚いた」と、筆頭著者でスペインのハカにある国立研究評議会ピレネー生態学研究所の生態学者、アントニ・マルガリダ氏は述べた。「これは、何世紀にもわたって利用されてきたこれらの巣が質の高い繁殖場所だということを意味する。異なる世代がこうした巣を繁殖に利用してきた」

科学者らは、この研究が文化遺物の発見に新たな道を開くだけでなく、将来のヒゲワシの保護活動にも役立つ可能性があると述べた。

ヒゲワシは骨を主食とする唯一の脊椎(せきつい)動物として知られる。骨は彼らの餌の最大90%を占める。研究者らは、局所的な絶滅や生息環境の悪化により使用されなくなった過去の巣を探索。その過程では、主に骨の残骸の発見に関心を寄せていた。当該の巣でかつて暮らしていたヒゲワシの食性を研究し、現代の鳥類の食性と比較することが目的だった。

クロスボウの矢の先端部分と木製の胴体部分/Sergio Couto

しかし、研究者らは大量の人工遺物が歴史を重ねた巣に絡みついているのを偶然発見し、驚愕(きょうがく)することになる。巣から回収したサンプルの9%以上はこうした遺物だったという。

小枝や草を編んで作られた前出のサンダルに加え、巣からは模様が描かれた仮面を思わせる中世の革製品、18世紀の籠(かご)の残骸、クロスボウの矢、馬用のロープや部品などが発見された。サンダルが現時点で最古の人工物だが、他の遺物の炭素年代測定はまだ行われていないとマルガリダ氏は述べた。

マルガリダ氏によれば、記録された発見物からは人間文化への興味深い洞察が得られる。「これらは人々の服装様式や狩猟方法(見つかったスリングショットやクロスボウから)に関する情報を与えてくれる。生態系において、家畜種と野生種のどちらが豊富に存在していたのかも明らかになる」と同氏は述べた。

模様が描かれた仮面を思わせる中世の革製品の断片も見つかった/Sergio Couto

翼幅が3メートル近くに達するヒゲワシは、温度と湿度が安定した崖の洞窟や岩場での営巣を好むため、骨の残骸や人工物、その他の巣の材料が比較的良好な状態で保存されやすいと研究は指摘する。

コーネル大学鳥類学研究所の名誉所長、ジョン・フィッツパトリック氏は電子メールで「本研究は、魅力的な鳥類と人類文化の歴史との相互作用を理解する上で、ヒゲワシの役割に新たな光を当て、全く新しい視点を提供した」と指摘。「ヒゲワシが人類の歴史を記録する『レコーディング・アーティスト』として認識されるようになった事実は、その独特な神秘性をさらに深めている」と付け加えた。同氏は、今回の研究には関与していない。

研究者らは2008年から14年にかけ、12のヒゲワシの巣を調査した/Sergio Couto

研究者らが巣を発見したスペイン南部では、ヒゲワシが70~130年前に局所的に絶滅していたと、今回の論文は指摘する。巣の位置を特定するため、研究者らは歴史的記録を調査するとともに、この鳥が生息していた時代を記憶する地域の高齢者への聞き取り調査を何年も行った。

現在、ヒゲワシは欧州、アジア、アフリカの各地で依然として確認されているが、数世紀前と比べると生息数は減少し、分布域も狭まっている。

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