「あんな写真が公開されると」…前橋市長の密会問題で困惑、プライバシー重視のホテル業界
前橋市の小川晶市長が市幹部職員の既婚男性とラブホテルで複数回面会した問題が、市政運営だけでなく、ホテルを経営する側にも波紋を広げている。市長がホテルに出入りする写真が報道されたことで、プライバシーを気にする利用客への影響が懸念されるからだ。ある経営者は「同業者の間でも困惑の声が上がっている」と話す。
部屋番号まで鮮明に
「プライバシーには気を使っているのに、ああいう写真が撮られて公開されてしまうと、お客さまへの印象はよくないですよね」。こう話すのは、地方都市で複数のラブホテルを経営する男性だ。
問題を9月24日に最初に報じた「NEWSポストセブン」によると、小川市長は7~9月に市の男性職員と計9回、ラブホテルを訪問。小川市長は報道を受けた記者会見で男性職員とホテルで会ったことは認めたうえで、男女関係にはないと説明している。記事にはマスクを着けた市長がホテルの一室から出てくる姿を撮影した写真が複数添えられており、なかには部屋番号まで鮮明に写ったものもあった。
男性がホテルを経営する地方都市は前橋市と同じく県庁所在地で、人口、面積ともほぼ同規模。それだけに利用者の客層やニーズも、ほぼ同様だと推測している。
「都会の歓楽街に構えるホテルなら派遣型風俗店の客が一定の割合を占めるが、地方なら圧倒的に地元のカップルの個人利用が多い。それだけにお客さまはプライバシーには敏感。こちらも人目に触れづらい構造にするよう努めている」
小川市長がたびたび利用したホテルは駐車場に止めた車からフロントを経ずに直接入室できるとされ、男性のホテルも一部はその形式だという。
宿泊施設ではなく「性風俗」
一般に、ホテルや旅館といった宿泊施設は旅館業法によって利用客の氏名、住所、連絡先などを記載した宿泊者名簿を備えることが義務付けられている。だがラブホテルの場合、宿泊ではなく休憩での利用も多いこともあって厳密には運用されておらず、従業員との対面やフロントがないホテルも多い。
一方で、ラブホテルの多くは風営法が定める「店舗型性風俗特殊営業」に該当。関係法令では「出入り口などに外部から見えにくくするための設備が設けられている」「客が従業員と顔を合わせないで個室に入ることができる」などの要件が挙げられている。
夜の街でのトラブルを数多く担当し、「歌舞伎町弁護士」の著書がある若林翔弁護士(東京弁護士会)によると、ラブホテルは性格上、客のプライバシーを重視したさまざまな仕組みが考案され、それが法令上の要件になっているという。
若林弁護士は「規制が厳しい風営法の適用を受けないようにあえてらしくないつくりにするところもあるなど、ラブホテルは風営法上も旅館業法上もグレーな存在。だが、プライバシーへの配慮が重要なのは変わりない」と話す。
興信所とトラブルも
男性は「商売柄かもしれないが、小川市長がホテルを何の目的で利用したかには興味がない」という。他人を気にしないで済む時間と空間を提供するのが仕事だと割り切っているからだ。過去には、外回りの営業とみられる男性が一人で利用することがたびたびあった。「社名が入った車でやってきては、何時間かで出ていく。昼寝でもしていたのだと思うが、外から見えづらいうちのホテルを信用して利用してくれたのでは」
一方で、浮気調査のために写真を撮影した興信所の従業員と客がトラブルになったことがある同業者もおり、会った際には小川市長の写真が話題になったという。苦情や問い合わせなどは受けていないが、利用客の不安感が増すことを懸念している。
「世間からいい目で見られない施設だということは承知している。それでも、他人を意識しないで好きなことができる場所が、自宅のほかにも欲しい人は少なからずいるのでは」。今回の報道を受け、出入り口や駐車場に目隠しのために設けているのぼりや植え込みを増やすことも検討しているという。