数学が苦手でも理系学部に挑みたい「潜在的な理系」高校生が増えている? 学部選びの前に進路適性検査を振り返ろう
私立・公立大学を中心に、理系学部の新設ラッシュが続く。なかには数学ナシで受験できる理系寄りの学部学科も出てきている。そんななか「自分は文系・理系に縛られない」と考える高校生が、わずかだが増加傾向にある。学部を探す前に、専門家が勧めるのは意外な準備——高校1年で受けた進路適性検査の見直しだ。 【文系理系別】学情「就職人気企業」ランキングがこちら * * * 大学で情報系、環境系の学部が増えるなかで、高校生の志向も徐々に変わっていると、教育ジャーナリストの神戸悟さんは言う。 「最近は『文理融合』をアピールする学部が出てきていますし、データサイエンスなど新たな学問分野が注目されています。そんななかで『自分は文系・理系に縛られない』と認識する高校生が増えてきているのだと思います」 リクルート進学総研の「進学センサス2025」によると、大学進学者のうち文系が56%、理系は38%。そして「文系でも理系でもない」と答える人は6%いる。選択肢が変わったので単純比較できないが、「文理どちらでもない」大学進学者は3%台だった2019年と比べると、増加傾向にある。神戸さんは言う。 「中には、どの教科の成績もいいから『文系・理系どちらでもない』という人もいるでしょうが、文系数学の範囲で理系学部に挑戦する生徒も一定数いるはずです」 センサスによると、実際に文系でありながら理工と農学系に進学した人は計3.2%いる。
■高校では文系を選択した「潜在的な理系学生」 「まだ10%未満で少ないかもしれませんが、『文理の境界にいる高校生』、高校では文系を選択した人、理系選択だけど数学や理科が苦手な人といった『潜在的な理系学生』を獲得しようとしている大学も出てきています」(神戸さん) 背景は、専門的な理系人材の不足だ。 経済産業省の推計では、AIやロボットの活用により、2040年に事務職で約440万人が余るが、AIやロボットを使いこなす人材は約340万人不足する可能性がある。そこで、内閣官房の教育未来創造会議は10年で、理系学生の割合を35%から50%に引き上げる目標を掲げている。 理科や数学の素養があっても、そもそも高校や大学で理系を選ばない人は依然として多いと考えられる。内閣府の資料によると、高校1年時に科学的・数学的リテラシーが高い生徒は約4割だが、実際に高校で理系コースを選択するのは2割。大学の理工農系に進む生徒はさらに絞られる。 そんななかで、「潜在的な理系学生」も挑戦できる理系寄りの学部が相次いで誕生している。 立教大学は26年、環境学部を新設。文系型入試では数学を選択せず、国語・地歴などで受験も可能だ。昭和女子大学も同年、統計学やAIを学べる総合情報学部を新設。数学や理科を選ばない入試も可能だ。山口県立大学は、「デジつよ文系(デジタル社会に強い文系)」を掲げ、25年に国際文化学部に情報社会学科を新設した。 安田女子大学は同年、女子大で日本初の理工学部を設置し、生物科学、情報科学、建築の学科をそろえた。ユニークなのは、一般選抜で数学を選んでも範囲は数1・Aだけで、国語と英語の2科目でも受験できる点だ。 ■学部選びに迷ったら、振り返るべき高校1年の“検査結果” 数学や理科が苦手な自分が、理系寄りの学部に挑戦してもいいのか、考えるヒントが高校1年生時の検査結果にあるかもしれない。 高校1年生は、自分のタイプを知る「進路適性検査」を学校で受けているケースがある。進路適性検査には様々な種類があるが、たとえば河合塾の調査「R-CAP(アールキャップ)」によると、文系希望者でも、機械やものづくりが好きな「エンジニアタイプ」、数字を使って分析するのが好きな「アナライザータイプ」がいる。神戸さんは言う。 「例えば、『自分は数学は苦手だけれど、実は分析が好きなんだ』と気づくきっかけになります。ものづくりや分析が好きという結果が出た人は、理系の素養があるということだと思います」 しかし、実際に大学でどんな学びができるのかは、外からは見えにくい。自分に向いている大学や学部を見分ける方法はあるのだろうか。 「大学選択は自分とのマッチングの時代だと言う人もいますが、正直なところ、大学の公開情報は少なく、実際の学びを知るのは難しいものです。時間がいくらあっても調べる時間は足りません。ただ、大学との偶然の出合いもあるものです。学部のウェブサイトをふと見ていて、『実はフィーリングが合うんじゃないか』と気づくこともあります。やっぱり、大学を選ぶ前に、自分の関心や志向は知っておいた方がいいですし、初めから学問分野を特定しない方がいいと思います。まずは高1で受けた適性検査の結果を思い出してみてください」(神戸さん) (AERA編集部・井上有紀子)
井上有紀子