【人類初の恒星間飛行計画が始動】8万年かけてお隣のアルファ・ケンタウリを目指す 2029年打上予定

人類はこれまで、月や火星、木星、そして太陽系の果てへと探査機を送り込んできました。しかし今、新たに計画されているのは、「別の恒星」を目的地として旅立つ探査機です。

非営利団体「Fermi Explorer Mission(フェルミ・エクスプローラー・ミッション)」は、太陽系に最も近い恒星系のひとつであるアルファ・ケンタウリへ向け、小型探査機を2029年までに打ち上げる構想を発表しました。

驚くべきは、その旅の長さです。探査機がアルファ・ケンタウリに到着するまでにかかる時間は、計算上約7万7000年から8万年

プロジェクトを率いるフィリップ・ジョンストン氏は、「この旅が終わる時、私たちは誰一人生きていない。それこそが重要なのです」と語っています。

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現在の技術だけで時速約8万8500kmを目指す

©Fermi Explorer

目的地となるアルファ・ケンタウリは、太陽から約4.4光年離れた場所にあります。その中には、太陽系に最も近い恒星として知られる「プロキシマ・ケンタウリ」も含まれています。

これまでにも、アルファ・ケンタウリへ探査機を送る構想はいくつか提案されてきました。代表的なのが「Breakthrough Starshot」です。

これは超小型探査機に光の帆を取り付け、地上などから強力なレーザーを当てることで光速の約20%まで加速し、約20年でプロキシマ・ケンタウリへ到達しようという非常に野心的な計画でした。

一方、Fermi Explorerは方向性が大きく異なります。目指すのは、まだ存在しない未来技術ではなく、現在利用できる技術で恒星間探査を始めることです。

©Fermi Explorer

探査機の質量は約100~200kgを想定し、少なくとも1kgの貨物を搭載する計画です。推進には、キセノンを噴射する太陽電気推進を利用する案が示されています。

まず探査機は、地球軌道からそのまま太陽系外へ飛び出すのではなく、太陽へ接近します。目標とされているのは、太陽から約0.42天文単位の距離です。1天文単位は地球と太陽の平均距離なので、地球よりもはるかに太陽へ近づくことになります。

そのうえで利用するのが、「オーベルト効果」です。天体の重力によって高速になっているタイミングで推進を行うと、同じ燃料でも宇宙機のエネルギーをより効率的に増やすことができます。

探査機は太陽を何度も周回しながら、近日点付近で繰り返し加速。約12年間かけて徐々に遠日点を伸ばし、最終的には太陽系を脱出できる速度まで到達させる計画です。

想定速度は時速約8万8500km。人間の感覚では猛烈な速さですが、それでも4.4光年という距離はあまりにも遠く、アルファ・ケンタウリ到着までには約7万7000年が必要になるとされています。

途中で通信不能に?それでも打ち上げる理由

©Fermi Explorer

ここで当然、ひとつの疑問が浮かびます。「7万7000年後に到着する探査機を、なぜ今打ち上げるのか?」

しかも今回の探査機は、科学的な成果を大量に地球へ送り返すような通常の深宇宙探査ミッションとは少し異なります。

探査機は旅立ってから数年程度で地球との通信が困難になる可能性が高く、アルファ・ケンタウリ到着時に観測データを地球へ送れる保証もほとんどありません。

仮に何万年後の人類が、この探査機に追いついて回収できるほど高度な宇宙技術を持っていたなら、その頃には探査機が持っている情報そのものが時代遅れになっている可能性もあります。

©Fermi Explorer

それでもプロジェクトチームが重視しているのは、「人類は低コストで別の恒星へ探査機を送り出せるのか」という問いです。

ミッション全体の費用は1500万ドル未満を目標としており、すでに大手衛星メーカーのひとつから、その予算内で実現可能な提案も受けているとしています。

もし現在の技術と比較的小さな予算で、人類が隣の恒星へ向けて探査機を飛ばせるのなら、宇宙に存在する他の高度文明も同じことをしていて不思議ではありません。

では、なぜ私たちは他文明が送り出した探査機を見つけていないのでしょうか。そこで、このミッションのもうひとつの目的が見えてきます。

「宇宙人はどこにいる?」フェルミのパラドックスに挑む

©Fermi Explorer

プロジェクト名の「Fermi」は、物理学者エンリコ・フェルミに由来します。フェルミは1950年、地球外文明について考える中で、非常に有名な疑問を投げかけました。

「みんな、どこにいるのか?」これは現在、「フェルミのパラドックス」と呼ばれています。

天の川銀河には膨大な数の恒星が存在し、近年の観測からは惑星そのものも珍しくないことが分かっています。生命が生まれる惑星が多数存在するのであれば、その中のどこかで高度な知的文明が誕生していても不思議ではありません。

それにもかかわらず、私たちはまだ地球外文明の明確な証拠を発見していません。Fermi Explorer Missionのチームは、大きく3つの可能性を挙げています。

  1. 人間のような高度な知性そのものが非常に珍しいという可能性
  2. 知的文明は誕生するものの、恒星間へ進出できるほど長く生き残れないという可能性
  3. 高度な文明は存在していても、何らかの理由で他文明に自らの存在を知らせないという可能性

さらに、「宇宙があまりにも広大なので、そもそも知的文明は恒星間探査をしようと思わない」という説明もあります。Fermi Explorerが挑もうとしているのは、まさにこの部分です。

©Fermi Explorer

もし人類が1500万ドル程度の予算と既存技術だけで恒星へ探査機を送り出せるなら、「宇宙が広すぎるから誰も恒星間探査をしない」という説明は少し弱くなるかもしれないというわけです。もちろん、探査機を1機送っただけでフェルミのパラドックスを解決できるわけではありません。

宇宙にはすでに大量の異星文明の探査機が存在していて、私たちに見つける技術がないだけなのかもしれません。あるいは、高度文明でも隣の恒星へ1~2機送り込んだところで満足し、その後は別のことに興味を移してしまう可能性もあります。

それでもこの計画が実現すれば、人類は少なくとも、「別の恒星を目的地として、本当に探査機を送り出した文明」になります。そしてプロジェクトチームは、「私たちはアルファ・ケンタウリへ最初に出発し、最後に到着する存在になりたい」という考えを示しています。

打ち上げた人々はもちろん、その子どもも、何千世代もの子孫も到着を見ることはできません。それでも、人類が初めて本気で別の恒星へ向かう第一歩を刻む。Fermi Explorerは、科学探査というよりも、人類という文明そのものを使った壮大な実験ともいえるのかもしれません。

皆さんは、到着するのが約7万7000年後で、途中で通信も途絶える可能性が高いとしても、この探査機を2029年に打ち上げることに意味があると思いますか?ぜひコメントお待ちしています。

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