ダニ刺されで発症する赤身肉アレルギーで初の死亡例、キャンプで数十匹に刺される 米
ローンスターダニは米国で発症するアルファガル症候群の主な原因とされる/Brian CassellaChicago Tribune/TNS/Getty Images/File
(CNN) 2024年の夏、米ニュージャージー州の自宅浴室で、それまで健康だった男性(47)が倒れ死亡した。検視でも死因は特定できず、不自然な点もなかったことから、原因不明の突然死と判断された。
そこで男性の妻が友人である小児科医に相談したところ、バージニア大学のアレルギー専門医で免疫学者のトーマス・プラッツミルズ氏と連絡がついた。同氏は約20年前にダニ刺されによって赤身肉アレルギーが発症する可能性があることを発見していた。
このアレルギーは、すぐに反応が現れるわけではないという点で珍しい。特に意識せず牛肉や豚肉、羊肉を食べた数時間後に、気分が悪くなり始める。多くの場合、夜中に目が覚め、アレルギーというよりもひどい食中毒や胃腸炎のような症状に襲われる。
非常に多くの人がダニに刺された後は肉に対して過敏になっている可能性があるにもかかわらず、それに気づいていないケースは多い。そのため、プラッツミルズ氏らは、原因不明の死が実際には、赤身の肉を含む哺乳類細胞に存在する「α-gal(アルファガル)」と呼ばれる糖に対する重篤な反応によるものではないかと考えてきた。
12日にジャーナル・オブ・アレジー・アンド・クリニカル・イミュノロジー・イン・プラクティスに詳細が掲載されたこの男性の症例は、まさにプラッツミルズ氏が懸念していた通りのものであり、赤身肉アレルギーに関連する死亡として初めて記録された事例と考えられている。
ダニ刺されが命取りに
症例研究によると、この男性の事例はツツガムシに刺されたことから始まった。しかし、実際にはツツガムシではなく、砂粒ほどの大きさで色も白いローンスターダニの幼虫だった。
男性は家族とキャンプに出かけ、この小さな幼虫数十匹に刺された。
「このダニの成虫は一度に5000個の卵を産み、その幼虫に刺されるのだ」とプラッツミルズ氏はCNNに語った。
米東部では多くの地域で、シカの個体数が維持できない水準に達している。シカはローンスターダニの主な宿主であり、シカの個体数が増えるにつれて、ダニの個体数も爆発的に増加してきた。
疾病対策センター(CDC)は、最大45万人の米国人がアルファガルアレルギーを持っていると推定している。一方でプラッツミルズ氏は、人口の5%がダニ刺されにより赤身肉のアレルギー反応を起こしているにもかかわらず、それに気づいていないと試算する。
ほとんどの症例は重症ではなく、食品や一部の医薬品に含まれるアルファガルへの暴露を避けることで対処できる。症状は、かゆみを伴うじんましんや、嘔吐(おうと)、血圧低下、唇や顔の腫れ、めまいや失神、激しい胃痛まで多岐にわたる。
キャンプから帰りしばらくして、男性の家族は遅い時間に夕食でステーキを食べた。男性は午前2時に激しい胃痛、下痢、嘔吐に襲われたが、2時間もすると症状は治まった。
妻によると、医師の診察を受けることも考えたが、症状が治まっていたため、何と言えばいいか分からなかったという。
それから2週間がたった24年9月、男性は妻とバーベキューに出かけ、午後3時ごろにハンバーガーを食べた。ビールを飲み帰宅して芝刈りをし、午後7時20分にまたも嘔吐し始めた。
数分後、息子がトイレの床で意識を失っている父親を発見。意識は戻らなかった。
プラッツミルズ氏は男性の血液の一部をメイヨー・クリニックの研究所に送り、トリプターゼという酵素を検査した。トリプターゼにはたんぱく質を分解する作用があり、アレルギー反応のマーカーとなる。
男性のトリプターゼ値は1ミリリットルあたり2000ナノグラムを超えていた。アナフィラキシーと呼ばれる致死的なアレルギー反応の症例で記録された中でも最高水準だった。