藤枝・槙野監督「僕はやっぱり若い選手たちの才能を引き出したい」大卒ルーキー積極起用で敵地攻略、19歳DF永野修斗“育成プラン”も着々進行中!

[2.28 J2百年構想EAST-B第4節 いわき 1-2 藤枝 ハワスタ]

 開幕からのホーム3連戦を敗戦、勝利、PK負けという結果で終え、開幕4試合目にして初めて迎えたアウェーゲーム。元日本代表DFの槙野智章新監督が率いる藤枝MYFCはこれまでとは異なる顔をのぞかせながら、同じJ2のいわきFCから勝ち点3をもぎ取った。

 開幕3試合のボール支配率61%、59%、56%に対し、この日はわずか40%。現実的な力関係を見極め、いわきFCにボールを持たせる戦略が結果を導いた格好だ。試合後、記者会見に出席した槙野監督ははっきりとした口調で試合を総括した。 「自分たちの本来の姿ではなかった。我々の今のフィジカルベースだったり、昨季までの結果を考えた時、どうやったらアウェーで勝ち点を取れるのか、どうやったらいわきを上回れるのかを考えながらの戦いだった。自分たちの引き出しの数、いろんなプランを持って臨んでいた」(槙野監督)  局面の激しさが随所に見られ、ミスがあっても果敢な姿勢を持ち続け、両者がぶつかり合った好ゲーム。結果的には藤枝の2ゴールも、いわきの1ゴールも、いずれもセットプレーを通じたゴール前の混戦から決まっており、チャレンジングな戦いの中でもしたたかに競り勝つ新しい姿を印象づけた。  そんな戦いぶりに槙野監督は「昨年までの藤枝MYFCよりも少し変わった姿を見せられたと思う。百年構想リーグで我々が目指しているのは1試合1試合勝つこともそうだけど、チャレンジすること、新たな引き出しを増やすこと。そう選手たちにも言っているので、大きなチャレンジができた中で勝ち点が取れたと思う」と胸を張った。  38歳で飛び込んだJクラブ監督という新たな挑戦。もちろんプロとして勝利が求められる立場ではあるが、チームとしての幅を広げるチャレンジに加え、選手一人一人を成長させるためのチャレンジも欠かさない。

 今年1月にAFC U23アジア杯で存在感を放った19歳のDF永野修都はプロ2年目の今季、FC東京からの期限付き移籍で加入しているが、開幕節からここまで全試合フルタイム出場中。それも開幕節は3バックの右、第2〜3節は中央、今節は左とすでに3バックの全ポジションを任されており、この日は試合途中からボランチに回る時間もあった。

 永野には大きな期待をかけているという槙野監督。「僕が見て、彼が日本でプレーする時間はもう少ないと思っている」と近年中の海外挑戦も見据え、明確な育成プランを持って育てていく方針だ。このポリバレント起用の背景にも、永野が世界で大きく育っていくための“土台づくり”を担っているという責任の伴った自覚がある。 「彼が世界に羽ばたく、A代表に持っていくところの通過点として、槙野監督のもとでプレーの幅が広がったと言ってもらえるようにと。僕も遠藤航を近くで見ていたけど、自分がやってこなかったポジションで、求められてこなかったタスクをやっていくなかでどんどん広がっていったのを見ていた。だからこそ、永野修都のリベロ起用、右のストッパー、左のストッパー、今日はボランチも途中でしましたが、そうすることで彼の成長具合とプレーの幅が広がった時、あの時にここでプレーしていたからだと言ってもらえるように、どんどんその価値だったり、引き出しを増やしていければいいなと思っています」

 永野の他にも、昨季まではなかなかポジションを掴めていなかった鹿児島城西高出身3年目のMF芹生海翔(20)をここまで3試合に先発起用し、スケールの大きなボランチに育て上げようとしている。さらに富士市立高出身ルーキーのFW山崎絢心(18)も開幕節のピッチを経験させるなど、ロサンゼルス五輪世代の起用にも躊躇いはない。

 加えて印象的なのが即戦力と目される大卒ルーキーの活躍だ。すでに大学から今季加入した新戦力は4人とも起用済み。それも前節でMF中村優斗(←立正大)がプロ初ゴールを記録すると、この日はFW真鍋隼虎(明治大)も初ゴールで続く活躍を見せ、結果を出すサイクルに入っている。

 真鍋はこれまで全4試合に起用しており、この日の決勝弾は信頼の起用が実った形。槙野監督は「まずは90分間タフに戦えるところ、ゴール前に飛び込んで行けるところ、得点の嗅覚があるところ、ゴールへの意欲が高いところは間違いなく彼が持っているもの」と高い評価を口にし、「大卒のメンバーがお互いにチーム内でいい刺激をしあって良いプレーを生んでいるのは良い傾向かなと思う」と手応えを感じている。

 そのほか、この日が初出場初先発となったDF近藤優成(国士舘大)もさっそく2ゴールに絡む活躍を見せ、MF三木仁太(←関西大)はシャドーとボランチの併用を試すなど、各選手に対してそれぞれのロードマップを用意しているようだ。

 大卒4人で最も遅いデビューとなった近藤の起用にあたっても「試合を重ねるなかで迷いがあり、最初は起用するのを我慢していた」と入念に様子を見ていたといい、「トレーニングマッチ、普段の練習でも高い強度のなか、プロの世界でも慣れてきたのでゴーサインを出した」と槙野監督。ボックス内への侵入とロングスローで2ゴールを演出したこの日の近藤のパフォーマンスも、機を逃さない起用が生み出したものだと言える。  このJ2・J3百年構想リーグは対戦相手のレベルが幅広く、監督の方針次第で育成への投資を期待できる大会。Jクラブの監督を務められるProライセンス取得からわずか数日後、異例の大抜擢で藤枝入りが発表された若き指揮官は、結果を求められながらも明確にその使命と向き合っている。 「昨年までプレータイムを確保できなかった選手も輝かせて、羽ばたかせるために、磨かないといけない。1試合でダメと見切る監督ももちろんいると思うけど、僕はやっぱり若い選手たちの才能を引き出したい。どんどん起用して彼らの良さを出していきたいと思っています」 (取材・文 竹内達也)●Jリーグ百年構想リーグ特集▶サッカーの大人気ポッドキャスト!ヤーレンズのボケサカは毎週金曜配信

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