夫婦別姓「不便被らねばいい、ではない」「反対の議員ほど熱心」経団連十倉会長 会見詳報
経団連の十倉雅和会長は7日の記者会見で、選択的夫婦別姓の導入を求める昨年6月の経団連の提言で指摘した「旧姓の通称使用によるトラブルの事例」の多くが解消されつつある状況について「トラブルが無くなったかといえばそうではない」と述べ、婚姻に伴う姓変更が女性が多い状況を踏まえ、「女性のアイデンティティーをどう考えるかという問題だ」と述べ、国政での議論の深化を求めた。記者団とのやり取りは以下の通り。
オール・オア・ナッシングではない
──経団連が提言で指摘した「旧姓の通称使用によるトラブルの事例」の多くが既に解消されている
「われわれはオール・オア・ナッシングの議論をしているつもりはない。トラブルが皆さん方の努力で減ってきたというのは、その通りだと思う。私はいろいろな議員の先生とも話した。夫婦別姓制度に反対の先生もいらっしゃる。そういう先生ほど、こういう問題には一生懸命熱心に取り組んでいる。その努力は多としたい。では(トラブルが)無くなったかといえばそうではないと思う」
──令和4年3月時点で銀行の7割で旧姓名義の口座開設が可能となっている
「逆に3割の大手銀行だと(不可能だと)思うが、それはそうだ。信用組合や信用金庫はどうか。書類を出す手間はどうか。パスポートも話題になったと思うが、入国するときに入管で苦労しているのは事実だ。オール・オア・ナッシングの議論ではないと思う」
選択制だ
「選択的夫婦別姓制度を経団連も言っているわけだが、選択制だ。あと、アイデンティティーの問題にも絡む。不便被らなければいいのではないかという問題だけではない」
──国政で選択的夫婦別姓導入の必要性を指摘する声が高まり、議論が活性化している。ある種前提となった「旧姓の通称使用によるトラブルの事例」がアップデートされていない
「数字的なことで、全て表示しているわけではないと思う。パスポートの事例でも、口座の事例でも、手間は別にして問題なくできている銀行もあれば、やっていない銀行もある。それが解決したということでは全然ない。何をもってアップデートというのかが分からない」
価値観を理由に議論しなかった
──「旧姓の通称使用によるトラブルの事例」をアップデートする考えはないか
「必要があればやる。まずわれわれが言っているのは、万機公論に決してほしい、議論を始めてほしいということだ。議論にすごく時間かかり、その間、いろいろ努力もされているから、それは(トラブル解消に)進んでいくのは当然だと思う。何回も言うように、これは便利か不便かという問題ではなくて、アイデンティティーの問題も含んでいる。その辺を含めて総合的に議論すべきだ。時間をかけていれば、その都度アップデートしなければいけないということになってくるので速やかに大いに議論してほしい」
──自民党内でも議論が深まり、その結果、旧姓の通称使用の拡大を求める声が多くなっている
「何回も申し上げている通り、これはやはりアイデンティティーの問題だ。例えば日本の文化・伝統ということがよく言われているが、ただ天皇制の議論などは私は別だと思う。しかし、こう働き方が多様化している中で、特に女性のアイデンティティーをどう考えるかという問題もある。私が常に言っているのは『これ、議論してください』。今まで価値観を問題にして議論してこなかった。それがいけない。おっしゃるように、議論が始まったということは大変いいことだと思います。ぜひ深めていってほしいと思う」(奥原慎平)