魚を食べている人は糖尿病リスクが少ない 魚は脳の健康にも良い 中年期の食事改善は効果が高い
魚をよく食べている人は、血糖値が低く、糖尿病のリスクが少ないことが、心血管疾患リスクの高い成人を対象とした調査で明らかになっている。
魚を食べる食事スタイルをもつ人は、認知能力の低下が少なく、認知症のリスクが低い傾向があることも示された。
サバ・イワシ・アジ・ニシンなどの青魚には、良質なタンパク質とともに、油が多く含まれる。魚油に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などには、血栓ができにくくするなど、さまざまな効果があるとみられている。
これらのn-3系と呼ばれる不飽和脂肪酸は、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患や脳卒中などの予防に役立ち、脳の健康にも良いと考えられている。脂肪を燃焼する細胞を増やし、体脂肪の減少などにもつながるとみられている。
研究は、スペインのバレンシア大学などによるもの。研究グループは、地中海式ダイエットの効果を調べているPREDIMED研究に参加した、心血管疾患リスクが高いと判定された平均年齢67.4歳の945人の男女を対象に横断研究を実施した。
魚を食べている人認知症リスクも低い
その結果、魚を週に4回以上食べているグループでは、ほとんど食べないグループに比べ、空腹時血糖値が低く、糖尿病の発症リスクも低いことが示された。
一方で、牛・豚・羊などの肉をよく食べている人は、体重が多く、肥満の有病率が高いことも分かった。
PREDIMEDの別の研究では、魚をよく食べている人は、認知能力の低下が少なく、認知症のリスクが低いことも示されている。
「体に良い油やタンパク質の含まれる魚をよく食べ、体に悪い脂肪の多い赤肉などをひかえめにする食事スタイルは、良い健康効果をもたらすことが示されました」と、同大学バイオメディカル研究センターのメルセデス ソトス プリエト氏は言う。
「地中海式ダイエット」は、イタリア、ギリシャ、スペインなどの地中海沿岸の伝統的な食事スタイルで、野菜や魚を食事に多く取り入れ、未精製の全粒穀物、ヨーグルト、豆類、ナッツ類を食べ、不飽和脂肪酸が含まれるオリーブオイルを多くとることなどが特徴となる。
日本人対象の調査でも魚は糖尿病リスクを下げる結果に
魚をよく食べることは、日本の食事スタイルでも特徴のひとつになっている。日本人を対象とした調査でも、魚をよく食べている人は、糖尿病のリスクが低く、心筋梗塞や狭心症などの発症が少ないことが明らかになっている。
40~69歳の日本人5万人を5年間追跡した調査で、脂の多い魚(サケ・アジ・イワシ・サンマ・サバ・タイなど)を食べている人は、糖尿病の発症リスクが低い傾向が示されている。とくに魚介類の摂取が多い男性で、糖尿病リスクは約30%低下した。
「食事や運動などのライフスタイルを見直して、食生活を改善し肥満を予防するための介入は、48歳から70歳のあいだに行うと効果的であることが示唆されました」、オックスフォード人間脳活動センターなどのダリア ジェンセン氏は言う。
「この期間に行う生活改善は、認知症のリスクを軽減するための予防的介入としても重要です」としている。
研究グループは、英国で実施された2件の大規模なコーホート研究に参加した計1,176人の成人のデータを解析した。48~60歳の参加者を11年間追跡し、また48~68歳の参加者を21年間追跡し、食事の質と健康状態の関連を調査し、磁気共鳴画像法(MRI)などによる検査も行った。
その結果、中年期から老年期にかけて、食事の質が良好であることは、脳の後頭葉や小脳への海馬の機能的な連結性の高さや、白質の健康などに関連していることが示された。
さらに、ウエスト周囲径をヒップ周囲径で割ったウエストヒップ比(WHR)についても調査した。
中年期を通じて健康的な食事をとっていた人は、WHRの値が小さく、高齢期の脳と認知機能の状態が健康である傾向があることが分かった。
WHRは、肥満の体型指標として用いられており、その値が良好であると、腹部の脂肪の蓄積が少ないとみられている。