岩手・大船渡の山林火災、避難指示3300人に拡大…震災後に建てられた住宅にも迫る猛火 : 読売新聞
岩手県大船渡市赤崎町の山林火災は、発生2日目の27日も延焼が続き、男性とみられる1人の焼死体が見つかった。市によると、焼失面積は600ヘクタール以上に上り、避難指示の対象は約3300人に拡大。焼損した住宅などは80棟を超えるとみられ、県は仮設住宅の準備を始めた。政府も同日、首相官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置。石破首相は被災者支援に万全を期すよう指示した。
建物の近くまで迫る火の手(27日午後3時25分、岩手県大船渡市で、読売機から)=帖地洸平撮影県警によると、遺体は27日午前7時10分頃、山林火災が延焼している同市三陸町 綾里小路(りょうりこじ) の県道脇の路肩で、被害状況を確認していた大船渡署員が発見した。県警は身元を調べるとともに、火の勢いが弱まった地域で引き続き人的被害の確認を進める。
【地図】岩手県内で相次ぐ山林火災27日は自衛隊のヘリコプターや岩手、宮城、福島など各県の防災ヘリなど10機が活動。地上では消防隊員らが放水を繰り返した。ただ、焼失面積はさらに拡大。市は同日夕、新たに467世帯、1192人に避難指示を出し、対象は計1340世帯3306人に拡大した。
避難所は同日午後10時現在、公民館や小学校など7か所に設けられ、877人が身を寄せている。住民らには不安と動揺が広がる。
避難指示が拡大し、避難所に入るための受付に並ぶ人たち(27日午後6時28分、岩手県大船渡市のリアスホールで)=大金史典撮影全域に避難指示が出ている同市三陸町綾里地区の漁業男性(76)は26日、高台の自宅に麓から迫る火を見て、妻や長男と車2台で逃げた。市立 越喜来(おきらい) 小学校に避難しているが、「家はもう焼けてしまったかもしれない」と肩を落とす。自宅を離れて2日目。「いつまで続くのか」とため息をついた。
現場周辺は東日本大震災の津波で被災した地域で、震災後に建てられた民家にも被害が出ている恐れがある。同地区の男性(75)は14年前の津波で自宅を流され、2015年に市内の高台に一軒家を再建。そこに猛火が迫ってきた。妻、長男とともに公民館に避難し、「津波は高い場所に逃げればいいが、山林火災は風向き次第で瞬時に状況が変わる。怖い」と不安げな様子で話した。
住居確保を急ぐため、県は27日、災害救助法に基づき、応急仮設住宅と県営住宅100戸の提供準備を始めたことを明らかにした。
大船渡市内では19日に山林火災が発生し、324ヘクタールを焼いて25日に鎮圧。直後に同市と陸前高田市の境界付近の山林8ヘクタールほどを焼く火災があり、26日に鎮圧が確認されたが、同日午後1時頃、大船渡市赤崎町で再び発生した。
焼け焦げた家、迫る炎
27日午後、岩手県大船渡市の上空を本社機で飛んだ。
三陸町 綾里(りょうり) 地区では、濃い緑色の尾根の至る所から白煙が立ち上っていた。煙の隙間に目を凝らすと、綾里漁港に近い家々は焼け焦げ、バラバラに崩れ落ちている。
地区中心部にさしかかると、綾里小が見えてきた。北西に1キロほど離れた山林付近に小さな炎が確認できる。消防隊員ら4、5人がホースを手にしていたが、火はあっという間に背丈の5倍ほどになり、建物に迫った。
西側にある赤崎町の 合足(あったり) 地区では、何台もの消防車が道路に並び、山林に向かって放水していた。一刻も早い鎮火を願うしかなかった。(盛岡支局 小林晴紀)