なんと恐ろしい…60代後半は「認知症が急増」する「魔の世代」だった…!「仕事を続ければ、発症を先延ばしにできるかもしれない」ワケ
認知症につながる「脳の機能低下」はなぜ起こるのか?
家族の発病を疑ったら? 自分に不安を感じたら?
認知症には、さまざまな種類があります。
記憶力が衰え、自分が誰かがわからなくなる「 アルツハイマー型認知症 」。
人柄が変わり、身勝手なふるまいが増える「 前頭側頭型認知症 」。
存在しない人や動物が、ありありと見える「 レビー小体型認知症 」。
40代、50代でも発症する「 若年性認知症 」。
歩行障害や言語障害が突然生じる「 血管性認知症 」や、「 記憶障害が目立たない」認知症 も存在します。
家族を悩ませる「 徘徊 」や「 暴言 」はなぜ起こるのでしょうか?
話題の新薬 の効果は?
遺伝 はするのか、しないのか?
認知症を 予防する食べもの とは?
経験豊富な 認知症サポート医 が、最新情報をやさしく詳しく解説します。
いわゆる定年退職後の方々の再就労が徐々に増加しています。
国の統計によると、65歳以上69歳までの就業率は50%を超え、高齢者全体では25%が働いています。つまり、高齢者の4人に1人はなんらかのかたちで働く時代になったといえるでしょう。
70歳を超えて働く方々のおもな理由は「健康のため」「孤立を防ぐため」であり、これらの理由が上位に挙げられています。断定はできませんが、高齢者の就業率の上昇が認知症の発症を先送りする要因になっているという指摘は重要であり、認知症減少の第三の要因として挙げられるでしょう。
認知症の有病率は、年齢が高くなるにつれて増加します。5歳刻みの世代ごとの認知症有病率をみていくと、前の世代の2倍から3倍に増加しています。
しかし、一つの世代だけが例外で、認知症の有病率が急増しています。それが、60代後半の世代です。
年代ごとの認知症有病率の変化60〜64歳の認知症有病率は0.189%(1000人に2人程度)ですが、65〜69歳では1.1%(100人に1人)に増加しており、約6倍の増加率です(表【年代ごとの認知症有病率の変化】)。60代後半は、認知症が急増する「魔の世代」といわざるをえません。
60代は、定年退職や子どもの独立などで生活が大きく変わる時期にあたります。定年で仕事を離れ、「高齢者」とよばれるようになる時期でもあります。現役で働きたいと思っていても、適切な仕事に就けず、虚脱感に悩まされる人が増えています。
「定年うつ」という言葉もありますが、日本の高度成長を支えてきた世代のなかには、仕事一筋で生きてきた人も多く、定年後の人生を上手に送れないという声もよく聞きます。60代後半は人生の峠を越え、下り坂に入る時期とも形容されますが、この時期をどう過ごすかが非常に重要です。
60代後半からの人生をどう過ごすか(Justin Paget/gettyimages)認知症の予防を考える際、60代後半での有病率の急増を抑えられると、大きな効果が期待できます。予防医学の研究によれば、「積極的な社会参加は認知症発症のリスクを下げる」と指摘されています。希望する方々の就労が実現できれば、認知症の発症をかなり先延ばしにできるのではないかと考えられます。
定年後も働き続けたいという人の割合は7〜8割に達しています。年金支給など高齢者向けの現行制度を変えることなく、希望する人が働き続けられるしくみを作ることができれば、60代後半も充実した時間を過ごせるようになるのではないでしょうか。