「経営・管理」資格 中国籍の取得者が最多「帳簿も社員名簿もどこにあるかわからない」

出入国在留管理庁が入る庁舎=東京都千代田区

16日に施行される法務省の改正省令で厳格化された、日本で起業する外国人の在留資格「経営・管理」は、諸外国に比べて要件が甘く、経営者として働く気がない外国人に日本への移住目的で悪用されていると指摘されてきた。同資格は中国籍の在留者が最多。ペーパーカンパニーを設立したり、第三者に経営を任せたりと悪質な例もあり、要件の厳格化とともに入管当局の厳正な審査が求められる。

売り上げを把握していない中国人経営者

「帳簿も社員名簿もどこにあるか分からない」

今年8月、東京出入国在留管理局職員の問いかけに、中国人女性は通訳を通じてそう返答した。不動産仲介業を営むとして「経営・管理」の資格を得ていた女性だが、「実体がない可能性がある」との情報提供を入管が受けていた。

入管側は東京都内の会社所在地に職員を派遣して実態調査を実施。女性は1年の大半を海外で過ごしており、会社の売り上げなどを把握していないことが判明した。同資格は、外国人起業家に国内の経済発展に寄与してもらおうと創設されたが、女性がその趣旨に反することは明らかだ。

子供の教育のために入国も

出入国在留管理庁によると、令和5年9月~6年12月、同局が不審な更新申請など約300件を調査したところ、約9割で会社自体や経営者に実体がなかったという。

現行制度の要件は「資本金500万円以上」「常勤職員2人の雇用」のどちらかだけ。平成12年から変わっておらず、韓国の資本金約3200万円、米国の約1500万~約3千万円以上などと比べても甘い。

入管庁によると、6年末時点の同資格の在留者4万1615人のうち半数以上の2万1740人が中国籍。続くネパールや韓国の8倍近い水準だ。

入管関係者は、経済成長した中国を念頭に「海外に比べ日本国内で物価が伸び悩む中、一部の中国人らにとって相対的に要件が甘くなっていた可能性はある」とする。子供に対して日本の良質な教育を受けさせたいために、経営・管理で入国しようとする中国人もいたという。

法務省は今回、制度の入り口となる要件を大幅に厳格化した。ただ、適切な制度運用のためには入国後の実態調査も欠かせない。鈴木馨祐法相は10日の会見で「経営実態の把握は極めて重要。当然その体制強化はやっていかないといけない」としている。

再度の改正も検討すべき

万城目正雄・東海大教授(国際労働移動)の話

悪用されている在留資格「経営・管理」の適正化が最優先だ。出入国在留管理庁の改正省令は非常に厳しい内容で、一定評価していいものだ。3千万円以上という資本金を含め、諸外国と比べても同等かそれ以上で、悪用する外国人は減るだろう。

一方で、経営・管理は起業意欲のある外国人を受け入れ、国内の技術革新や成長を促進させる目的で創設された。現状を改善するのは当然だが、要件を厳しくし過ぎることの副作用もあるだろう。

日本の起業環境は、経済協力開発機構(OECD)の魅力度評価で下位に低迷するなど、もともと外国人起業家に評価されていない。厳格化後も同資格の実態調査を進めることが大切だ。その上で、足りない部分や厳し過ぎる部分は再度の改正も検討すべきだ。

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