「日本人ファースト」が生むものは 社会に広がる新たな排外主義
「ヘイトスピーチ解消法」が施行されて6月3日で10年となる。在日外国人の排斥を訴える路上での露骨なヘイトスピーチが減った一方で、インターネット上の差別的な書き込みがなくなる気配はない。
「民族差別をなくす」という当たり前の約束はどこへ行ったのか。対応は十分なのか。大阪公立大の明戸隆浩准教授に聞いた。【聞き手・鵜塚健】
ヘイトスピーチ解消法が施行されて10年。現状は 「自身の存在を否定されるよう」ネットにあふれるヘイト 対策は
ヘイト解消法10年 差別街宣は
ヘイトスピーチ解消法の施行から10年で、「ヘイトスピーチを許さない」という社会規範が共有された意味は大きいです。
法務省は国外出身者に対する差別的言動の典型として「地域社会からの排除」「危害の告知」「著しい侮辱」という3類型も示しています。
研究者の間や法曹界でも解消法施行以降、「表現の自由は原則大事だが、例外的に規制せざるを得ない」と考える人が増えました。
東京・新大久保や大阪・鶴橋で「在日特権を許さない市民の会」(在特会)などによる差別的な街頭宣伝活動が深刻化し、これに対応することが解消法の当初の目的でした。こうした街宣を抑えることには一定程度成功したと言えます。
ただ、解消法には罰則がなく、実効性は十分ではありません。
解消法が施行された2016年は米国の大統領選でトランプ氏が初当選し、英国でブレグジット(欧州連合離脱)の国民投票があった年で、これ以降、ネット上のフェイク(偽情報)の広がりが世界的に問題になりました。
日本でもフェイクを含むネット上のヘイトスピーチがあふれていますが、解消法が対応できているとは言えません。
外国人が標的に
懸念するのは新たな排外主義の広がりです。
昨年7月の参院選で躍進した参政党は欧米型の排外主義政党だと私は考えます。
「日本人ファースト」という表現は一見問題ないようです。ただ、使用者に意図はなくても「外国人は後回し」というニュアンスを伴います。多くは「外国人が日本人より優遇されている」という誤ったバイアス(偏見)を前提にしています。
仮に「日本人ファースト」自体が差別ではないとしても、これに扇動されてヘイトスピーチを生み出すことが問題なのです。もともと不利な立場にある外国人からさらに権利を奪うことになります。
昨年、「日本政府は中国人留学生に…