ダサすぎる?「ショウリンジ!」叫んで交番に突撃…子どもたちの謎の流行「少林寺レーシング」笑えない結末
もはや世も末なのかもしれない。少年たちの間で「少林寺レーシング」なる迷惑かつ奇妙な遊びが広がっている。ご存じだろうか。
やることは、いたって単純だ。
交番に押しかけて「ショウリンジ」と叫ぶ。カウンターの上で暴れる。公衆電話から110番に電話をかけて「ショウリンジじゃ!」と叫ぶ──。
一体、何がおもしろいのか。理解に苦しむが、こうした様子を撮影した動画がTikTokなどのSNSで拡散され、まねをする子どもたちが相次いでいるようだ。
ついには警察に検挙・補導される事態にまで発展した。
●「うまく動画が撮れなくて2回侵入した」
関西テレビ(10月21日配信記事)によると、「少林寺レーシング」などで警察の業務を妨害したり、うその通報をしたりした疑いで、兵庫県の小学生から18歳までの25人が検挙・補導された。
警察の調べに対し、少年らは「遊び感覚でやった」「うまく動画が撮れなくて2回侵入した」などと話しているという。
NHKによると、兵庫県ではこれまでに110番に電話して「ショウリンジ」と叫ぶなどの事案も43件確認されているという。
度胸試しや挑発の一種なのかもしれないが、そこまでして撮影したかったものが「ショウリンジ」と叫ぶ姿だったというのだから、なんとも脱力する。
●「ダサすぎて意味わかんねぇ」
そもそも「少林寺レーシング」という名前からして意味不明だ。少林寺と何の関係があるのか。なぜ「レーシング」なのか。
少なくとも、交番で大声を出したり、110番にいたずら電話をかけたりする行為に、武道の精神もレースの要素も見当たらない。
それでも、誰かが動画を投稿し、それを見た別の誰かがまねをする。より目立つ動画を撮ろうと、迷惑行為を繰り返す。
SNSでは「ダサすぎて意味わかんねぇ」という声も上がっているが、笑い話では済まされない。
●交番に押しかけ…犯罪になる?
もちろん、子どもの悪ふざけだからといって、何をしても許されるわけではない。
交番に押しかけ、大声を出したり暴れたりして警察官の仕事を妨げた場合、その行為の内容や程度によっては、刑法の業務妨害罪や公務執行妨害罪などが問題になる。
たとえば、大勢で押しかけて暴れるなど、威力を使って業務を妨害した場合には、威力業務妨害罪(刑法234条)が成立する可能性がある。
また、警察官に暴行や脅迫を加えて職務を妨げれば、公務執行妨害罪(刑法95条)が問題になる。
一方、こうした犯罪が成立するほどではない、比較的軽微ないたずらであっても、処罰の対象になり得る。
軽犯罪法1条31号は、他人の業務に対して、いたずらなどで妨害する行為を禁止している。違反した場合は、拘留または科料の対象となる。
ここでいう「いたずら」には、面白半分でおこなう行為なども含まれると解されている。
少年らは「遊び感覚でやった」と話しているというが、遊びのつもりだったからといって、法律上の責任を免れるわけではないということだ。
●110番へのいたずら電話は?
110番へのいたずら電話も同様だ。
実際には起きていない犯罪や災害を警察に通報すれば、軽犯罪法1条16号に違反する可能性がある。
さらに、通報の内容や回数、警察の業務への影響などによっては、偽計業務妨害罪(刑法233条)が成立する可能性もある。
裁判例では、虚偽通報による警察の業務妨害について同罪の成立を認めたものがあるが、こうした公務への適用には学説上の議論もある。
ただし、単に「ショウリンジ」と叫んだだけで、犯罪や災害についてうその事実を告げていない場合、軽犯罪法1条16号に直ちに該当するわけではない。具体的な行為や業務への影響に応じた判断が必要になる。
交番は誰でも相談などに訪れることができる場所だが、何をしてもよいわけではない。
正当な用事もなく、交番の管理者の意思に反して立ち入ったと評価されれば、建造物侵入罪(刑法130条)が成立する可能性がある。
警察署のように一般の人が出入りする施設でも、立ち入った目的や状況などから侵入罪の成立を認めた裁判例がある。
●動画を撮影していた人も責任を問われる
交番の備品を壊せば、器物損壊罪(刑法261条)も問題になる。
また、実際に騒ぐ子どもだけでなく、動画を撮影する側も無関係とは限らない。
単に撮影しただけで直ちに犯罪になるわけではないが、犯行をそそのかしたり、撮影によって業務妨害を容易にしたりした場合には、教唆や幇助などの責任を問われる可能性がある。
実際に、他人の威力業務妨害の様子を撮影して犯行を容易にした人物について、建造物侵入罪と威力業務妨害幇助罪の成立を認めた裁判例もある。
「自分は撮っていただけ」という言い訳が、必ずしも通用するとは限らないのだ。
●14歳未満なら「おとがめなし」?
では、小学生など14歳未満の子どもなら、何をしても処罰されないのだろうか。
刑法41条は、14歳未満の者の行為は罰しないと定めている。そのため、14歳未満の子どもが刑罰法令に触れる行為をしても、刑事罰を科されることはない。
しかし、だからといって「おとがめなし」というわけではない。
14歳未満でも、刑罰法令に触れる行為をした場合には、児童相談所への通告や送致などの対象となり、必要に応じて児童福祉法上の措置がとられる。
さらに、児童相談所長などから家庭裁判所に送致され、少年審判を受ける場合もある。
14歳以上の少年についても、犯罪に当たる行為をすれば、少年法に基づく手続きの対象となり得る。
そもそも、問題は子どもたちが処罰されるかどうかだけではない。
●「助けが必要な人が助けられなくなる」
NHKによると、兵庫県警少年課は、今回の騒動について「助けが必要な人を助けられなくなり、命にかかわる場合もあるので絶対にやめてほしい」と注意を呼びかけているという。
警察官が「ショウリンジ」と叫ぶ子どもたちへの対応に追われている間にも、本当に助けを必要としている人がいるかもしれない。
たった数秒の動画のために交番に押しかけ、撮影がうまくいかなければ、もう一度やり直す。そして、最後は警察に検挙・補導される。
「少林寺レーシング」というふざけた名前に反して、その結末はまったく笑えない。