「5人そろったゴレンジャー」に感涙…誠直也、宮内洋らキャストが勢ぞろい

 気がついたら泣いていた。進行は事前に聞いていたから冷静に取材するつもりだったが、無理だった。涙をなんとかこらえようとする私の顔は、きっと小学生に戻っていたに違いない。

5人そろった変身前のゴレンジャー。左から小牧さん、伊藤さん、誠さん、宮内さん、だるまさん。

 現在まで50年続くスーパー戦隊シリーズの第1作「秘密戦隊ゴレンジャー」で変身する前を演じた5人が、4月5日、東京・文京区の東京ドームシティ、シアターGロッソで奇跡の勢ぞろいを果たした。「秘密戦隊ゴレンジャー50周年シークレットプレミアイベント」に結集したのは、アカレンジャー・海城剛役の誠直也さん、アオレンジャー・新命明役の宮内洋さん、2代目キレンジャー・熊野大五郎役のだるま二郎さん、モモレンジャー・ペギー松山役の小牧りささん、ミドレンジャー・明日香健二役の伊藤幸雄さん。この日は1975年にゴレンジャーの初回が放送された日であり、それを記念したイベントだ。内容が完全にシークレットだったにもかかわらず、定員の20倍もの応募があり、この日は抽選を勝ち抜いた幸運なファンが会場で約50年ぶりの再会を見届けた。

ステージに躍り出るゴレンジャー「おにいさん」ファッションで司会をした関さん

 司会を務めたのは、戦隊シリーズや仮面ライダーが好きなことで知られる声優の関智一さんだ。当時のゴレンジャーの映画が上映されたのに続いて、「司会のおにいさん」風の衣装の関さんが「みんなでゴレンジャーを呼ぼう」とあおると、ゴレンジャーの代わりに懐かしの野球仮面とゾルダー(戦闘員)が出てくるというお約束の展開。会場を襲うゾルダーに関さんがピンチ、というところに、「待て!」の声とともに変身後のゴレンジャーがマントをひるがえして現れた。大歓声が湧く中、野球仮面と戦うゴレンジャーが迫力あるアクションを見せる。最後は、令和の必殺技ゴレンジャーハリケーン「二刀流」で野球仮面を倒した。

野球仮面との対決野球仮面をやっつけた!

 敵を倒し、去って行くゴレンジャーの姿が暗転で見えなくなる。ステージから客席に向かってライトが放たれて視界が真っ白になった次の瞬間、さっきまでゴレンジャーが立っていた場所に、誠さんら5人が現れた。穏やかな笑顔でゆっくりと手を振る5人に、大半のお客さんは驚きすぎて歓声すら出せない。感極まったようなどよめきが地鳴りのように伝わってくる。

ゴレンジャーの名乗り暗転のあと、同じ場所に5人が

「高い所と火薬が大好き」

 誠さんは「みんな若くて一生懸命で、番組をなんとかいいものにしようとしていた」と当時を振り返り「仲間がみんな元気で会えたこと、感無量です。ゴレンジャーをやって本当によかった」と感激した面持ちで語る。宮内さんも「5人がそろったのは本当に50年ぶりで、今日は素晴らしい日。涙が出てきてしゃべれません」と感極まった様子を見せながら「50作の中でゴレンジャーだけは2年間続いたんです。なぜなら、我々プロが一生懸命やって視聴率が上がったからです!」といつもの宮内節をさく裂させた。

笑顔で当時を振り返る誠さん命がけのアクションについて話す宮内さん

 車椅子での登場となっただるまさんは「高い所が苦手なのに、宮内さんが一緒に乗っているロープウェーを揺らすので本当に怖かった。宮内さんは高い所が好きなんですよね」と当時の思い出を苦笑しながら語る。すかさず宮内さんが「高い所と火薬が、だ・い・す・きです!」と合いの手を入れて、当時のアオとキさながらに息の合ったところを見せた。

語るだるまさん若き日を語る伊藤さん

 小牧さんは「今日ゴレンジャーの皆さんと会えたことで、また元気が出ます。私にとっても今日は宝物です」と満開の笑顔で話した。メンバー最年少の伊藤さんは「50年たってメンバーに会えたのも、この番組だからこそ。他の番組は放送が終わったらそれで終わり。改めてすごい番組だった」と当時を思い起こした。

「青春、だよな」

当時の衣装や台本を持ってきてくれた小牧さん

 トークは、当時の撮影の思い出話にもおよび、「草むらに飛び下りたら鉄骨が付きだしていて足に刺さり、陥没骨折した。それでも撮影は休まなかった。青春、だよな(笑)」(誠さん)、「鳥取砂丘でのロケで海に浮かべられたが、撮影は12月24日で天気は雪。おまけに新命明はいつも第3ボタンまで外している衣装だから、ウェットスーツを衣装の下に着られず、寒さで死ぬかと思った」(宮内さん)などの秘話が次々と飛び出した。

 引き続き、今年8月、東京ドームシティプリズムホールで「全スーパー戦隊展」が開催されることが発表された(全国巡回予定)。ゴレンジャーから放送中の最新作「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」までの歴史を振り返る内容で、小道具や衣装、ロボットなど約500点を展示するそうだ。誠さんがアカレンジャーとして声の出演をする同展の特報映像も公開された。子供たちの呼ぶ声に振り返るゴレンジャーの姿に、誠さんの万感の思いを込めた「ありがとう」の声がかぶせられており、こちらも涙腺崩壊必至の映像だ。

 トークの最後に誠さんが「長い間本当にありがとう。これからもよろしく」とファンに感謝すると、それに呼応して場内のあちこちから「ありがとうございました!」という声が発せられていた。

ゴレンジャーポーズの5人

戦隊ショーの今

 ゴレンジャーから数えて、50番目の戦隊である「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」の第1弾のショーは6月29日までの土日、祝日(5月17日から6月8日は休演)、シアターGロッソで上演されている。同所は後楽園遊園地時代から50年以上にわたって、全国のヒーローショーを 牽(けん)引(いん) し続ける特撮ヒーローファンの聖地だ。

 変身後のヒーローによって演じられるショーは、高所からの飛び降りやワイヤーを使ったあっと驚くようなアクションなど、見応えたっぷりだ。ナマで、しかもこの近さで、迫力あるアクションを見られる場所はめったにない。

 放送では、登場人物の複雑な「事情」も描かれるが、そうした設定をも生かしたうえで、ヒーローショーらしいスカッとした内容に仕上がっている。「応援対決」の趣向もあって実に楽しい。戦隊ワールドに浸って、幸せな30分を過ごせること、請け合いである。

 50年前と変わらぬ部分もあれば、時代に応じて変わっていく部分もある。ゴレンジャー世代の大人も、ゴジュウジャー世代のちびっ子たちも、戦隊の「今」を感じにぜひGロッソを訪れてほしい。なお、第1弾には変身前の役者の出演はない。

 (撮影・秋元和夫 ※ゴジュウジャーの写真を除く)

 読売新聞事業局記者。1989年入社。政治部、文化部、メディア局編集委員、教育ネットワーク事務局専門委員などを経て現職。日本テレビ「イブニングプレスdonna」(キャスター)「ラジかる!!」(コメンテーター)「PON!」(同)や、ラジオ日本「美潮シネマズ」などに出演。特撮ヒーロー(特に仮面ライダーとスーパー戦隊シリーズ)が大好きで特撮関係者を招いてのイベント「340(みしお)Presents」を2003年より主宰。著書に「昭和特撮文化概論 ヒーローたちの戦いは報われたか」(集英社文庫)、「スーツアクターの矜恃」(集英社インターナショナル)。また、美空ひばりさんの大ファンで、2021年は33回忌法要ツアーの司会を務めた。読響アンサンブルシリーズプレトーク司会も担当している。

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