米国本土でチョウが急減、20年間で22%減、「これは警鐘です」
2000~2020年までの米国本土の500種以上のチョウに関するデータを研究者がまとめたところ、チョウ全体の数はこの間に22パーセント減っていた。(Photographs By Darlyne A. Murawski, Nat Geo Image Collection)
2000年から2020年までの間に、米国本土のチョウが22パーセント減ったことが明らかになった。「これは警鐘です。私たちはこの数字を見て、チョウに限らず昆虫全般の状況について非常に大きな危機感を持たなければなりません」と、米ニューヨーク州立大学ビンガムトン校の保全生物学者で、2025年3月6日付けで学術誌「サイエンス」に発表された論文の共著者であるイライザ・グレイムズ氏は言う。
昆虫の標本を広範囲にわたって採集するのは非常に難しい。だが、チョウは他のどの昆虫よりもモニタリング調査が行われている。北米チョウ協会(NABA)が毎年7月4日に開催しているチョウを数えるイベントなども、モニタリングの強化に役立っている。(参考記事:「“旅する蝶”オオカバマダラ、「絶滅危惧種」が異例の解除、なぜ?」)
科学者とボランティアは、35のモニタリングプログラムを通じ、全米2478カ所で、554種、1260万頭のチョウを数えてきた。グレイムズ氏のチームは今回、これらのデータを利用して、米国史上最も広範囲にわたるチョウの個体数分析を実施した。
チョウの花粉媒介者としての重要な役割は、近年の減少傾向を科学者が懸念する理由の1つになっている。(Photograph By Stephen G. St. John, Nat geo Image Collection)
グレイムズ氏は当初、多くの種が減っているかもしれないが、本土全体を合計すれば、十分増えていて悪いニュースを打ち消してくれるだろうと期待していた。けれども残念ながら、そうはならなかった。
「失われたり減っていたりしたチョウが、圧倒的に多かったのです」と氏は言う。
22種は90パーセント以上減っていた
広い範囲で減っているのは、すでに絶滅に近づいているほとんど知られていない少数の種のせいではないかと思うかもしれない。だが、科学者たちは今回のチョウのモニタリングで、減っている種は増えている種の13倍にもなることを明らかにした。
チョウが最も減っていたのは米国南西部で、逆に最も減っていなかったのは太平洋岸北西部だった。この20年間に半数以下まで減った種は100種を超えた。そのうち、ベニシジミ属のLycaena hermes、キチョウ属のEurema proterpia、モンシロチョウ属のPieris virginiensis、タテハチョウの仲間のChlosyne californica、セセリチョウの仲間のPolites sabuletiなど22種は90パーセント以上減っていた。
「この論文で報告された数字は衝撃的ですが、悲しいことに意外ではありませんでした」と、国際自然保護連合(IUCN)「種の保存委員会」のチョウとガの専門家グループ共同議長であるモニカ・ベーム氏は言う。
「チョウのモニタリングは主にヨーロッパと北米で行われていますが、実施されるたびに減少が報告されています。その中には、最もありふれていて、最も親しまれている種も含まれています」とベーム氏説明する。なお氏は今回の研究には参加していない。
ギャラリー:米国本土でチョウが急減、20年間で22%減 写真5点(写真クリックでギャラリーページへ)
ランタナ(シチヘンゲ)の花にとまるオオアメリカモンキチョウ(Colias eurytheme)。(Photographs By Taylor Medford, Nat Geo Image Collection)