アングル:「MAGA」から「TACO」へ、略語で読み解くトランプ相場
[ニューヨーク 30日 ロイター] - トランプ大統領の2期目が始まって4か月が経過した。同氏は「MAGA(米国を再び偉大に)」「DOGE(政府効率化省)」「MAHA(米国を再び健康に)」といった目を引く略語を好んでおり、市場関係者は自らも略語を編み出して取引現場で広く使い始めている。
これらの造語は特定の投資戦略を示すものではないが、トランプ政権下の市場で重要とされるボラティリティーや不確実性といった要因を表現しており、投資判断の際に考慮すべき要因を浮き彫りにしている。
一部の造語はトランプ氏の経済・通商政策および外交目標を利用しようとする投資戦略を表している。市場や貿易相手国がトランプ氏の提案に反応する中で生じた経済への影響や、同氏の突然の方針転換をネタにしたものもある。
「選挙後には『YOLO(You Only Live Once、人生は一度きり)』という言葉をよく耳にしたが、特定の投資テーマで大きなリスクを取ることを推奨している造語のように思えた」。B・ライリー・ウェルスのストラテジスト、アート・ホーガン氏はこう語った。
この「YOLO」は、仮想通貨など勢いのある資産を追い求める一連の戦略に見られた、トランプトレードの一端を示す略語だった。「この表現は一時的に流行したが、従来の投資助言の原則とは相容れない」とホーガン氏は続けた。
近ごろ市場で注目されている略語をいくつか紹介する。
<TACO(Trump Always Chickens Out、トランプ氏はいつも尻込みする)>
「最終的に彼が実行する政策は、選挙公約とさほどかけ離れていないかもしれない。だから、彼がいつも尻込みするかと言えば、そこまでは言わない」。アライアンス・バーンスタインの債券ポートフォリオ・マネージャー、クリスチャン・ディクレメンティ氏はこう述べた。
「彼は経済のバランスを取りつつ、急激な悪化を避けようとしている。その過程を私たちは今まさに目の当たりにしている。政策には熟慮されたものもあれば、場当たり的なものもあると思う」
<MEGA(Make Europe Great Again、欧州を再び偉大に)>
欧州の競争力向上を表現する略語として昨年生まれ、今年の春になって再び話題に上るようになった。「解放の日」以降、欧州株が上昇していることを背景に、投資家やトレーダーの間で再び注目を集めている。「MAGA」キャップのパロディーである「MEGA」キャップもオンラインで簡単に購入できる。
<MAGA(Make America Go Away、米国は出ていけ)>
「MAGA」は従来「米国を再び偉大に」の略だったが、トランプ大統領のグリーンランド領有に対する意欲や、バンス副大統領による短期間かつ成果の乏しい訪問をきっかけにこの略語が派生した。あるカナダの投資家によると、トロントやモントリオールの取引デスクで使われており、「いっそ米国への投資をやめたい」という願望交じりの声を生んでいるという。
<FAFO(Fuck Around and Find Out、好き勝手にやれば痛い目を見る)>
この略語はトランプ氏就任のずっと以前から存在していたが、近年、金融市場の混乱や不確実性を象徴する表現として取引デスクで耳にする機会が増えている。ポトマック・リバー・キャピタルの最高投資責任者マーク・スピンデル氏は「トランプ氏の政策決定プロセスにより、市場はまるでピンボールのように振り回されている」と語った。
ホワイトハウスのデサイ報道官に質問したところ、メールでこのような回答が寄せられた。
「こういった愚かしい略語は、アナリストらがトランプ大統領やその政策をあざ笑った結果、自分たちを繰り返し滑稽な存在にしてしまったことを示している。大統領の政策はすでに、予想を上回る雇用やインフレ指標、数兆ドル規模の投資コミットメント、英国との歴史的な貿易協定、消費者信頼感の上昇といった成果を挙げている」
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