「次もiPhone97%」調査結果が話題 若者がiPhoneを選ぶのは同調圧力なのか?
また、先ほどまでの話にも通じますが、人は、「現状を変えることによって失うかもしれない損失」や「後悔」といったデメリットを、得られるかもしれないメリットよりもはるかに恐れる傾向があります(人は利益よりも損失を約2倍強く感じるという「プロスペクト理論」という考えもあります)。 脳は、Androidに乗り換えた場合のメリットよりも、「Androidに乗り換えて、もし使い勝手が悪かったら後悔する」「AirDropが使えず、友達との連絡で手間取ったら嫌だ」といった、現状を変更することによる不安を非常に大きく見積もってしまいます。 iPhoneを使い続ける限り、失敗も後悔もありません。少なくとも、今まで通り、友達とのコミュニケーションは円滑に進みます。 記事中で学生たちが感じるという「肩身の狭さ」も、これらのデメリットを過剰に見積もった結果ではないでしょうか。 それは「皆が持っているから仕方なく合わせる」というネガティブな「同調圧力」という説明よりも、一番ラクで、失敗や損失のリスクがゼロのコミュニティに留まるという、脳の自己防衛本能と説明する方が合理的であるように思います。
学生にとってiPhoneは、単なる高性能なガジェットではありません。 それは、親から与えられ、友達とつながり、ストレスなく利用できるという、彼らの生活における「初期設定(デフォルト)」です。 「同調圧力」は、たしかに社会的な現象として存在します。 しかし、それは「皆が持っているから仕方なく合わせる」というネガティブな強要だけでは説明できません。「皆と同じ状態を維持することで、コミュニティでの摩擦や失敗という損失を回避したい」という、誰もが持つ現状維持の気持ちが強く作用していると考えられます。 彼らが次もiPhoneを選ぶのは、「考える労力を最小限に抑え、失敗リスクをゼロにする」という、人間の脳が本能的に下す最も合理的かつ安全な選択なのではないでしょうか。 この強固な「慣れの壁」と「生存本能としての合理性」を覆すには、Androidなどの他社製品が、価格や機能が優れていることをアピールするだけでは不十分でしょう。 学生たちの「考える労力」を上回る、もしくは「現状維持では大きな損失が生じる」と感じさせるほどのメリットを提示する必要があるでしょう。 (弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士/小倉匡洋)
弁護士ドットコムニュース編集部