トランプ氏は中国批判控える方針、対露支援抑止の圧力かけず-関係者

トランプ米大統領は中国に対し、ロシアへの戦争支援をやめるよう圧力をかけることを控え、米中関係の他の問題に焦点を当てている。事情に詳しい米国と欧州の当局者が明らかにした。

  非公表の協議内容だとして匿名を条件に語った当局者によると、トランプ政権は中国との二国間関係における懸念に注力したい意向で、米国の外交政策の中でウクライナでの戦争は優先順位がさらに下がった。ただ、トランプ氏が今後姿勢を変化させる可能性はあると、一部の当局者はくぎを刺した。

  ホワイトハウスがこの方針を維持する場合、ロシアの戦争遂行を可能にしている主要な存在として中国を見なし、ロシアのプーチン大統領を交渉の席に着かせるよう影響力を行使すべきだと呼び掛けてきたこれまでの米国や主要7カ国(G7)の立場から大きく逸脱する。G7外相は3月の共同声明で、中国のロシア支援を非難した。

  トランプ氏は5日に中国の習近平国家主席と電話会談した後、「ロシア・ウクライナについては何も話さなかった」と述べた。

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  ホワイトハウスの報道官は、コメントの要請にすぐには応じなかった。

  ロシアのウクライナ侵攻は、月内にカナダのアルバータ州で開かれるG7首脳会議で議題となる可能性が高い。その場で中国に関する文言を維持するようトランプ政権に働き掛ける他国首脳がいるかどうかは、判然としない。

  この政策転換の背景には、トランプ政権がバイデン政権の外交方針から脱却したがっていることがあると、関係者の1人は指摘した。バイデン前大統領は他国とのあらゆる関係を、ウクライナでの戦争という視点から見ていたという。

  米中には関税やテクノロジー規制、レアアース(希土類)など問題が山積しており、トランプ政権はウクライナよりも米国の国益に重要な問題に関して中国への影響力を行使したい考えだと、関係者は説明した。

  トランプ氏はプーチン氏と戦争終結に向けた交渉を続ける間、ロシアの戦争を支援しているとして中国を名指しすることには前向きではないと、別の関係者は述べた。

  トランプ氏に近い共和党のグラム上院議員は、G7首脳会議前に新たなロシア制裁の導入を目指す意向を示していた。同氏によると、中国とインドに安価なロシア産原油の購入を思いとどまらせ、ロシアの戦争資金源を断つことが目的の制裁法案には、上院で80人以上の支持があるという。

  米当局者はまた、欧州が中国とロシアの取引を非難しておきながらロシアからエネルギー購入を続けているため、中国の対ロ支援を抑制できていないとも批判していると、関係者は付け加えた。

  欧州連合(EU)は中国に対する公的な圧力を強めており、外交的な接触の場で問題を提起している。カラス外交安全保障上級代表(EU外相)は先週シンガポールで、中国の軍民両用品輸出がロシアの戦争を後押ししていると非難した。

  実際、ロシアは戦争に必要だが制裁対象となっている兵器関連の技術や部品の大半を、中国からの輸入を通じて調達しており、貿易制限を巧妙に回避している。ウクライナのゼレンスキー大統領は先月、同国や欧州諸国へのドローン販売を中国が停止する一方で、ロシアへの供給を継続していると主張した。

原題:Trump Is Holding Back From Calling Out China Over Russia War Aid(抜粋)

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