ドコモ苦戦 携帯3社、“値上げ”で明暗

NTTドコモとKDDIが今夏、値上げプランをスタートさせた。ネットワーク品質が低下しているせいか、ドコモはユーザー流出が避けられない状況だ。 【もっと写真を見る】

 NTTドコモとKDDIが「値上げプラン」をこの夏にスタートさせた。    KDDIは既存プランも値上げしたことで、ARPU(一人あたりの通信料収入)が、昨年同期比で140円もアップした。    解約率も1.21%に留まるなど、KDDIが危惧していた「ユーザーの大量流出」もなんとか回避できたようだ。    NTTドコモは、ネットワーク品質が低下しているせいか、ユーザーの流出が避けられない状態だ。この9月ではMNPで負けを喫し、10月にはなんとか巻き返しを図れた模様だ。    ただ、既存ユーザーを囲い込みつつ、新規ユーザーを獲得するための販促費がかさんでいる。2025年第2四半期では昨年同期比で551億円も増えていた。決算資料にも「これまでにない激しい競争」と記されており、端末の販売施策やショッピングセンターへの出店などで多額のコストを負担しているものと思われる。    前田義晃社長は「他社攻勢の強まりを受け、ハンドセット純増の対前年度増減も悪化している。MNPではポートアウトが120%ぐらいのレベル」と語る。   ドコモはシェア死守、残る2社は“質”重視    ソフトバンクの宮川潤一社長は「MNPが非常に順調だったが、短期解約者が見込みより多かった。獲得コストの考え方、効率を上げないといけないと反省している」と振り返る。    KDDIの松田浩路社長は「他社の過熱気味な販促費を使う形の競争に真っ向勝負している意識はない。販促費を多額にかけるところから、構造改革で一歩引いた」と語る。    NTTドコモはシェア35%を死守すべく、販促費を積み増している印象だ。    一方でKDDIやソフトバンクは契約者数にこだわるのではなく、ユーザーの「質」での勝負にシフトしつつある。    ソフトバンクの宮川社長は「獲得の数にこだわって業績に影響がないのはあまり意味が無い気がしてきた」といい、「ファンのユーザーが一番、ARPUも高いし、継続する期間が長い。その方々にお金をかけるべきだと思う」と語る。    実際、9月から開始されたワイモバイルの新料金プランは「上手にやった。ユーザーが受け入れてくれた」と宮川社長は評価する。   金融商品とからめたプランもテコ入れ    ワイモバイルの「シンプル3」は、基本料こそ値上げしているが、PayPayカード割やおうち割光セットなどを組み合わせると、従来よりも料金が下がるような適用もある。ノーマルカードよりもゴールドカードのほうが割引する額を高く設定するなど、ゴールドカードの所有者を増やす施策も盛り込んでいる。    この手の割引施策はNTTドコモが得意としてきたが、ソフトバンクもかなり追随してきた感がある。    KDDIは単に安さを求めるユーザーにはUQモバイルを用意しつつ、スマホを徹底的に使い倒したい人向けのブランドとしてauを訴求する。    松田社長は「通信品質もそうだし、Starlink Directや5G Fast Laneなども含めて、商品力で勝負していく」と語る。    一方で、金融商品とからめた「auマネ活バリューリンクプラン」もテコ入れしていく。    松田社長は「この領域の先駆者として、もう一度ビジネスをまき直したい」と語り、新たなプランを投入する。   ドコモは住信SBIネット銀行の活用が課題に    NTTドコモは、この10月に住信SBIネット銀行を傘下に収めたばかりだ。住信SBIネット銀行では2026年5月にステージ制の優遇プログラムを改定すると発表があった。NTTドコモによる買収直後の改定ということで「さっそくNTTドコモによって改悪された」という声があるようだが、実際は買収前から改定の準備が進んでいたようだ。    NTTドコモとしては、今後、ようやく手に入れた銀行をいかに「ドコモユーザーを囲い込むために生かすか」という知恵を絞っていくことになるだろう。前田社長は「法人向けクレジットカードをつくる」と明言しているが、まずは住信SBIネット銀行が強い法人ユーザーに向けた施策が見えてきそうだ。    ソフトバンクやKDDIが金融を絡めた料金プランを強化するのは「顧客の囲い込み」に他ならない。NTTドコモとしても、これまでクレジットカードによって顧客を囲い込んできたが、マネックス証券に加えて住信SBIネット銀行が傘下に入ったことで、より多様な囲い込みができるようになった。    ネットワーク品質でユーザーが流出していくなか、住信SBIネット銀行でいかにユーザーを囲い込むかが、いまのNTTドコモの経営課題と言えそうだ。     筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)    スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。   文● 石川温

アスキー
*******
****************************************************************************
*******
****************************************************************************

関連記事: