千尋の戦死が明かされた朝ドラ「あんぱん」 演じた中沢元紀が語る嵩、のぶへの素直な思い

「あんぱん」で柳井千尋役を爽やかに演じた中沢元紀(C)NHK

今田美桜がヒロイン若松のぶを演じるNHK連続テレビ小説「あんぱん」の第62回が24日(火)に放送され、のちに「アンパンマン」を生み出す柳井嵩(北村匠海)の弟、柳井千尋(中沢元紀)が戦死していたことが明かされた。千尋役の中沢元紀は、初出演の朝ドラで爽やかな印象を残した。撮影を振り返り、役柄と作品への思い、兄の嵩とヒロインのぶへの素直な気持ちを語った。

千尋は幼い頃、伯父の柳井寛(竹野内豊)に引き取られて養子になった。文武両道で家族思いの青年に育ち、弁護士を目指し京都帝国大学で学んでいた。周囲の影響で海軍予備学生に志願し、海軍少尉として駆逐艦に乗船していた。

モデルは、漫画家やなせたかしさんの2つ違いの弟、柳瀬千尋さん。実際に京都帝大で法律を学び、海軍に志願している。昭和19年、乗っていた駆逐艦呉竹がフィリピン沖のバシー海峡で撃沈され、戦死した。第54回(6月12日放送)の出撃前に小倉の旅館で兄と再会する場面も実話をもとにしている。

朝ドラは夢の舞台

子供の頃は風呂敷をマントに見立て、ロールパンナちゃんの格好をして遊ぶくらい、「アンパンマン」が好きでした。朝ドラは夢の舞台のひとつで、出演が決まったときはうれしかったです。

千尋は、実在した方がモデルです。責任感を持って真摯に役と向き合いました。文武両道なうえに優しい人物で、演じるのが僕でいいんだろうかと思いました。自分から気持ちを表現しない千尋と、感情を百パーセント表に出すタイプではない僕は、その部分だけは同じかもしれません。

のぶに憧れ、恋心へ

のぶ(今田美桜)=右=からお礼のあんぱんを受け取り笑顔の千尋(中沢元紀)(C)NHK

第3週のパン食い競走では、倒れそうになったのぶさんを助けたのが自分だと言わないところが千尋らしかったですよね。のぶさんに対しては、最初は憧れから入ったのではないでしょうか。自分の道を突き進む姿に惹(ひ)かれ、だんだん恋心に変わっていったのだと思います。

兄の嵩とは互いを鼓舞し合う仲でした。兄貴の描く漫画や絵を一番好きなのは千尋だったんだろうなって。のぶさんと同じように、自分のやりたいことを貫き通す兄貴に嫉妬心を抱きながらも応援し、ずっと見守っていたのだと思います。北村匠海さんとはいろいろな話をさせていただきました。千尋が兄貴を投げるシーンでは、アクション作品に多く出演されている匠海さんにアクションについて聞いたりもしました。

千尋がいたから生まれた

嵩(北村匠海)=左=に本音をぶつける千尋(中沢元紀)(C)NHK

第11週の小倉で嵩と再会するシーンは、これまで隠していたのぶさんへの気持ちや本音を初めてぶつけるので、全部出し切るつもりで臨みました。脚本を読んだとき、心にくるものがありました。匠海さんがすべて受け止めてくれると思い、最小限の打ち合わせをして、その場で生まれるものを大事に作りました。ただ兄弟を演じればいい、ただの弟を演じればいいということではなく、千尋がいたから「アンパンマン」が生まれたのだという思いで演じました。

千尋は空気を読んで生きてきた人物です。信念はありつつも、他の学生とともに志願して戦争に行きました。今も世界では戦争が起きています。若い方にも戦争について考えるきっかけになる作品になればいいなと思います。

なかざわ・もとき>2000年2月20日生まれ、茨城県出身。連続テレビ小説への出演は初めて。

連続テレビ小説「あんぱん」

NHK総合 (月)~(土)午前8:00~8:15ほか ★土曜日はダイジェストを放送

NHK BS/NHK BSP4K(月)~(金)午前7:30~7:45ほか

(TVnavi)

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