「正しいことやった」 猟銃取り戻すため、法廷で闘ったハンター
2018年8月、北海道猟友会砂川支部長の池上治男さん(77)に北海道砂川市から連絡が入った。
「ヒグマが出没した。駆除してほしい」
猟銃を手に現場に駆けつけた。視線の先にあった小さな針葉樹の根元付近に体長約80センチの子グマがいた。
現場で「子グマだから放っておけばいなくなるのでは」と提案したが、居合わせた人から「何度も出没しているので駆除を」と求められた。
子グマの背後にある斜面を着弾点と見定め、銃口をクマに向けて引き金を引き、駆除した。
市からの要請を受け、使命感もあった。
ところが、道警に発砲の違法性を指摘する情報提供があった。2カ月後に道警の捜査が始まり、「民家に向けて発砲した」として鳥獣保護管理法違反などの疑いで書類送検された。起訴猶予処分となったが、道公安委員会は19年4月に「民家に向けた違法な発砲を行った」と違法性を認定し、猟銃所持の許可を取り消した。
発砲は「住民のため」
「住民のために正しいことをやったはずだ」
池上さんは20年5月、処分取り消しを求めて道を相手取り、札幌地裁に提訴した。
池上さんはこう強調する。
「取り上げられる必要がないものを取り上げられた」
1審では勝訴したが、2審・札幌高裁で逆転敗訴。最高裁に上告した。
「ハンターは地域のために駆除している。このままでは誰も駆除を引き受けられなくなる」
駆除を引き受けても、自治体から得られる報奨金が見合わないとの指摘もある中、地域貢献として有害鳥獣駆除に取り組んできた。
命がけの発砲の結果、責任を問われて銃を取り上げられた格好の自身の現状が、全国のハンターの今後の活動に影響を及ぼすと考え、訴訟に臨んでいる。
全国から励ましの声
猟銃を持てなくなり7年が経過した。
この間、池上さんの元には全国のハンターから共感や励ましの声が寄せられた。
現役ハンターも名を連ねる弁護団は「ハンター全体の将来を決める訴訟。池上さん個人に(訴訟の費用を)負担させる発想にならなかった」と無償で支援してきた。
池上さんと弁護団は25年12月、訴訟に関する費用を募るクラウドファンディング(CF)を始め、当初目標の100万円はすぐに集まった。現在は目標を300万円に引き上げ、これも達成に近づいている。
提訴後はそうした後押しがあっただけに、池上さんは「孤独ではなかった」と振り返る。
「発砲拒否」市の今
池上さんが支部長を務める道…