生きた姿が見られるとは!ゴブリンシャークが深海を泳いでいる姿を初撮影

この画像を大きなサイズで見るImage credit: Minderoo-University of Western Australia Deep-Sea Research Center and Inkfish

 サメ好きなら、ゴブリンシャークという名前だけで胸がときめくだろう。長いアゴを持つ深い海に住む生き物だ。

 和名ではミツクリザメと呼ばれるが、標本となった個体は魔物味を帯びている。

 だがようやく、本来の生息地で生きて泳ぐ姿を映像で見ることができるのだ。そしてその姿は美しかった。

 ハワイ大学とオーストラリアの研究チームが、2024年に太平洋の水深1,997mで泳ぐゴブリンシャークの撮影に成功し、その映像が公開された。

 予想より深い場所に生息しており、生息域も広いこともわかった。

 この研究成果は学術誌『Journal of Fish Biology』(2026年5月19日付)に掲載された。

 ゴブリンシャークは、水深1,300mより深い海で暮らしている。日本では駿河湾や相模湾といった、湾なのに深い海で引き上げられることがある。

 このサメに出会えるのは、漁の網にかかったときなどだ。

 ミツクリザメは船上で逆さに吊り上げられるとあごが飛び出し、くちばしのような口には多数の鋭い歯がむき出しになる。

 自身の体重で顔は膨らみ、ブヨブヨした軟らかい体は褐色に変色する。水圧が急に変わるせいで、まもなく死んでしまう。 

この画像を大きなサイズで見るゴブリンシャークの標本 Image credit:Dianne Bray / Museum Victoria / commons.wikimedia / CC BY 3.0 AU

 推定全長6mで、体には古代のサメの特徴を残しており、生きた化石と呼ばれることもある。 

この画像を大きなサイズで見るImage credit:Dianne Bray / Museum Victoria / commons.wikimedia / CC BY 3.0 AU

 ハワイ大学マノア校とオーストラリアのミンデルー・西オーストラリア大学深海研究センターの研究チームが、その姿をついにカメラにおさめた。

 1回目は2019年、太平洋中央部のジャービス島近くにある海山で、遠隔操作型無人探査機ROVが水深1,237mで全長約3.43mのオスを記録した。おそらく51.5歳前後と推定される。

この画像を大きなサイズで見る2019年に太平洋中央部で記録されたオスのミツクリザメ Image credit:Ocean Exploration Trust / Nautilus Live

 2回目は2024年、南太平洋、トンガ海溝の斜面で、餌をつけた深海カメラが水深1,997mでメスをとらえた。

 研究チームは、オスの交尾器が見当たらないことから、この個体をメスと判断した。

今回公開されたのはトンガ海溝で2024年に撮影されたメスの個体だ。

この画像を大きなサイズで見るImage credit: Minderoo-University of Western Australia Deep-Sea Research Center and Inkfish

 トンガ海溝での撮影は、ゴブリンシャークがどれほど見つけにくい生き物かを物語っている。

 研究チームは50日以上にわたって連続でカメラを回し続けた。そのなかでゴブリンシャークが映ったのは、わずか20秒あまりだった。

 調査を率いたアラン・ジェイミソン教授は、「まさか生きている姿を見られるとは思っていなかった」と振り返っている。

 我々がよく見る標本のイメージとは違い、とても美しい姿をしているじゃないか。

 今回の撮影は、ゴブリンシャークがすむ深さについての常識も塗り替えた。これまで確認されていた最も深い記録は水深1,300mほどだった。トンガ海溝でメスがとらえられた1,997mは、そこから約700m深い。

 この記録は、ゴブリンシャークが属するネズミザメ目というグループ全体の深度記録も108m更新した。

ネズミザメ目にはホホジロザメなども含まれる。深海にすむサメの仲間が、想像以上に深いところまで活動していたことになる。

 その生息域も、予想以上に広かった。

 ゴブリンシャークはこれまで、日本やオーストラリア、アメリカ西海岸の沖など、限られた海域でしか確認されていなかった。

 今回の2例はどちらも太平洋の中央部と、これまで知られていた生息域の外にあたる。

 生息域が広いことがわかったことで、研究チームは、この種を地域ごとの保護対象や国の生物多様性リストに加えられると指摘している。

 どこにすんでいるかを正確に知ることが、ゴブリンシャークを守る第一歩になる。

 ゴブリンシャークと日本の縁は深い。この種が初めて学術的に確認されたのは1898年、日本沖でとれた1匹がきっかけだった。

 和名はミツクリザメで、学名のMitsukurina owstoniだ。

 学名には、2人の人物の名が刻まれている。

 属名のMitsukurinaは、東京大学三崎臨海実験所の初代所長をつとめた箕作佳吉(みつくり かきち)氏から、種小名のowstoniは、標本を集めた英国人貿易商アラン・オーストン氏からとられた。

 相模湾で見たことのない奇妙な魚を採集したオーストン氏が標本を箕作氏のもとへ届け、箕作氏がアメリカへ持参して、魚類学者デイビッド・スター・ジョーダン氏が新種と確認した。

 英名のゴブリンシャークは、この種の和名のひとつテングザメを訳したものとされる。天狗の鼻のように長く突き出た吻が、その名の由来になっている。

 ちなみに日本では、2013年11月13日、神奈川県横須賀市の相模湾長井沖で、水深約300m底に設置されたカニ漁の刺し網に若いミツクリザメの個体13匹がかかっているのが発見された。

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