『餓狼伝説 CotW』小田泰之氏にインタビュー。続編でありながら“新作”としてプレイヤーの遊びやすさ重視で開発。クリロナ&ガナッチの参戦経緯も
2025年4月24日、プレイステーション5(PS5)、プレイステーション4(PS4)、Xbox Series X|S、PC(Steam/Epic Games Store)にて発売される『餓狼伝説 City of the Wolves
』。
餓狼伝説1990年代の格闘ゲームブームを牽引してきたSNKの人気対戦格闘ゲーム『
』シリーズの26年ぶりとなる最新作だ。新たなバトルシステム“REV”、コマンド技などをワンボタンで発動できる初心者向け操作モード“スマートスタイル”などを搭載した意欲的な作品。実在の著名人をモデルにした“クリスティアーノ・ロナウド”、“サルバトーレ・ガナッチ”の参戦も注目を集めた。 そんな同作のチーフプロデューサーを務める小田泰之氏のインタビューをお届け。開発の経緯や今後の展開、こだわった点などファンが気になる質問を尋ねてみたのでぜひチェックしてみてほしい。
小田泰之(おだやすゆき)
『餓狼伝説』や『龍虎の拳』シリーズなどの開発に携わる。一時はSNKを離れていたが、『ザ・キング・オブ・ファイターズ XIV』の開発にともないSNKに復帰。その後も多くの作品に関わり、本作ではチーフプロデューサーを務める。
——いよいよ発売間近となりましたが、いまの率直なお気持ちをお聞かせください。
オープンβテストを何度か開催させていただきましたが、不具合が発生してしまいまして。発売前になんとかしなくてはと、正直焦っています(苦笑)。1回目はとくにネットワークまわりの不具合が多かったのですが、そこは2回目のテストでおおむね改善できました。発売後ももちろん、修正も含めて継続的にアップデートを重ねていきます。いまのところ、3年目までの計画が立っているのですが、個人的には「もっと長い年数、続けていくのだろうな」と感じています。
——期待しています! では、『餓狼伝説』の新作を約26年ぶりに制作することになった、その経緯を教えてください。
まず前作で、物語が途中で止まったままの状態になっていたため、この物語をしっかりと終わらせてあげたいという想いがありました。 一度、2001年にSNKは倒産し、後継会社としてSNKプレイモアに社名が変わりました。そのタイミングで、前作に関わっていたスタッフたちも散り散りになってしまったんです。その後紆余曲折を経て社名もSNKに戻り、2014年ごろのタイミングで、当時のスタッフたちが再集結しました。最初に戻ってきたのが僕だったのですが、そのとき会長にまず「『餓狼伝説』の新作を作らせてください」とお願いしていたんです。
ザ・キング・オブ・ファイターズ』シリーズの展開もありましたし、その後『サムライスピリッツとはいえ、会社としては『
』のリブート版をリリースしました。結果的に順番としては遅れてしまいましたが、僕が最初に作りたかったのが『餓狼伝説』だったんです。
——開発自体は、いつごろ始動しましたか?
2022年ごろですね。『ザ・キング・オブ・ファイターズ XV
』の発売直前くらいからですので、ゆる〜く動き始めました。
——前作『餓狼-MARK OF THE WOLVES-』から続くストーリーの構想は、約26年前から存在していたのでしょうか?
ありました。ただ、時間が経ちすぎて、当時の構想そのままではいまの時代にそぐわない点がありました。また、短い期間で発売される続編ならばいいのですが、本作はここまで期間が空くと、ほぼ新作に近いですよね。いまから遊び始める人でも楽しめるようにするために、以前の構想は一度忘れて、すべて最初から作り上げることにしました。
——『餓狼伝説』の新作として、とくに注目してほしいポイントはどこになりますか?
とくに、時代の進化を感じてもらえるかと思います。オンライン対戦は劇的な進化を遂げていますし、ゲームパッドでも遊びやすくなりました。また、eスポーツの要素も考慮しています。かつての『餓狼伝説』シリーズは、毎回違うことに挑戦して、とにかくプレイヤーを驚かせることに注力していたように思いますが、それはクリエイター気質の作りかただったのかなと。 いまは、プレイヤーたちの意見こそが、いちばん重要です。それでいて、特徴的な格闘ゲームを作るとなったらどうすればいいのだろうか? と考えて作ったのが本作です。プレイヤーたちの遊びやすさを重視していることを注目と言いますか、感じながら遊んでみてほしいです。
——主流の対戦格闘ゲームは、たしかにプレイヤーの意見をよく聞いている印象です。
たとえば、「フレームデータが欲しい」と言われたら、それを用意するのが当たり前になってきましたよね。昔の僕たちだったら、恥ずかしくて絶対見せたくないです(笑)。
——システムとしては、今回“REV”システムに注力しているかと思います。なぜこのシステムを考えて、取り入れたのでしょうか。
前作にもあった“ジャストディフェンス”などは、うまく扱えばバトルがド派手に展開するようになるのですが上級者向けのもので、上達するまではどうしてもゲームが地味になりがちでした。それまでの過程でも、カッコイイ試合ができるようにしたくて、アイデアを練っていきました。 やはり対戦格闘ゲームは、超必殺技ゲージ的なものを溜め込んで、最後の最後に大ダメージを与える、または逆転するみたいな使いかたが多いですよね。それとは別に、試合開始時からアクセル全開で戦える仕組みも取り入れようと考えたのが、REVシステムです。 いろいろとシステムは多いのですが、まずはREVシステムまわりのアクションを駆使して戦っていただければ、カッコよく戦えるのでオススメです。
——“T.O.P.”システムの名称が、本作で“S.P.G.”に変わった理由を教えてください。
前作は海外展開を考えずに作っていたのですが、T.O.P.(タクティカル オフェンシブパワー)って和製英語なんですよね。海外の人でもわかる名前をネイティブの人に考えてもらって、S.P.G.システムに変えました。
——旧作からのファイターの参戦や、おなじみのメンバーが再集結して喜びました。
じつは約26年前の構想では、不知火舞などの登場の予定はありませんでした。ですが、本作はほぼ新作に近いですから、やはり『餓狼伝説』らしいキャラクターが必要だろうと、今後の追加も含めて登場させることにしました。もしかしたら、皆さんが期待されているキャラクターも、今後参戦するかもしれませんよ。
――シーズン1の追加キャラクターとして、『ストリートファイター』からケンと春麗の参戦もすでに発表されていますね。
『ストリートファイター
』には代表的なキャラクターが多数いますが、リュウはほかのタイトルで見る機会が多数ありますよね。もちろん出したいのですが、リュウとケンを出してしまうと、バリエーションとしてもったいないなと。過去作でテリーとケンにちょっとした因縁があったりするので、ケンを選びました。春麗は、キャミィを出すかどうかで悩みました。 ただ、本作は金髪のキャラクターが多いんですよ。ロックとテリーの時点で金髪ですから。だったら春麗かなと考えて、ケンと春麗の参戦をお願いしました。このふたりならば、納得性があると思います。
——ほかに『ストリートファイター』から、参戦させたかったファイターはいますか?
たくさんいて、スタッフたちの議論が終らなかったです(笑)。僕は個人的にサガットかナッシュがいいなと思っていましたし、「ソドムとロレントを出したい」と言うスタッフもいて、キリがなかったですね(笑)。
——ですよね(笑)。クリスティアーノ・ロナウド、サルバトーレ・ガナッチが、本作に登場することになった経緯、意図などをお教えください。
『餓狼伝説 City of the Wolves』はナンバーワンの格闘ゲームを目指しており、そのためには世界的なスターに出演していただくことが必要と考え、SNKからオファーしました。
――ゲーム内での、クリスティアーノ・ロナウド、サルバトーレ・ガナッチのアクションや技に関して、注目してほしいポイントなどをお教えください。
クリスティアーノ・ロナウドについては、画面上にボールさえあれば、立ち回り、コンボ、固めなど、さまざまな状況で強さを発揮できる、遠近どちらでも戦えるテクニカルなキャラクターです。ボールをうまく扱えば扱うほど強さを引き出せるキャラクターなので、ぜひやり込んでみてください。 サルバトーレ・ガナッチは、すべてのミュージックビデオ見て研究し、まずはゲームとしてのバランスや性能は考えず、ガナッチさんらしいモーションを再現しました。ご本人の個性を最大限引き出すために、“ゲームバランスや格闘ゲームの常識にはとらわれない”ことを重視し、“印象的な動きをすること”をコンセプトにしています。
――実在のサッカー選手の参戦などにも驚きましたが、今後もこういった予想外のファイターも登場しますか?
まずは『餓狼伝説』ファンに喜んでいただきたいので、作品と親和性のあるキャラクターならば可能性は大きいです。とはいえ、それだけですと物足りないので、まったく関係のないところから、思わぬファイターが登場することもあるでしょう。決まっていたらすぐに皆さんにお伝えしたいのですが、まだ決まっていないのが正直なところです。
——今後の展開も楽しみにしています。ひとり用の“EOSTモード”ですが、これは続編としての物語が描かれる、いわゆるストーリーモードになるのでしょうか?
メインのストーリーとは別のモードになります。EOSTモードは、各キャラクターを掘り下げるために用意したもので、このモードでしか見られない会話などが楽しめます。ちょっとした成長要素もありますので、サウスタウンのことを知りながらゆっくりと楽しんでほしいです。メインであるロックやテリーたちの物語は、アーケードモードで昔ながらの形で描いています。
——具体的にはお答えできないと思いますが、どのような物語なのでしょうか。
各キャラクターに何らかの目的や使命があって、戦いに挑むという物語が描かれます。ストーリーは前作も担当したスタッフが引き続き制作していますし、しっかり続編として楽しめると思います。もちろん、本作から初めて遊ぶ人でも楽しめますので、決して前作から物語を知っておく必要はありません。
——本作では、AI学習で進化する疑似対人戦要素の“クローン”がありますが、これはやはり他人と対戦をしなくても、対戦を楽しんでもらうために導入されたのでしょうか。
やはり対人戦が好きではない人は、一定数います。そういった方々にも楽しめるような要素を充実させるのも、いまの時代の作りかただと思います。練習だけではなく、ひとり用の要素としても遊んでほしいですね。
——キャラクターと言えば、3Dモデルのタイトルでは珍しく、カラー変更ができますね。
本作はアメコミ調のアートスタイルを採用していて、さらにカラー変更がしやすい仕様になっています。プレイヤーが変更しても問題ないだろうということで、カラーエディットモードを搭載しました。
——今後、大型大会やリアルイベントなどは予定されているのでしょうか?
SNK主催で、大型の世界大会の予選を開催予定です。まだ日程などは公開できませんが、決まり次第できるだけ早くお伝えします。日本では、ただ大会にするのではなく、できればイベント化して、皆さんとコミュニケーションを取れるような場にしたいですね。あくまで、個人的な願望ではありますが。
――最後に、発売を待ち望んでいるファンへ向けてメッセージをお願いします。
参戦ファイターには、いろいろと驚いていただけたと思います。残りの1キャラクターの発表も、ぜひ楽しみにしていてください。また、最初に言ったように長年の運営を想定して制作しています。長く楽しめるゲームになっていますので、ぜひ皆さん付いてきてください。よろしくお願いします!