【日本市況】債券上昇、日銀の利上げ慎重を確認-円は145円台に下落
25日の日本市場では債券が上昇。日本銀行が公表した金融政策決定会合の「主な意見」で、追加利上げに慎重な姿勢が確認されたとして買われた。円は1ドル=145円台前半に下落し、株式は小幅に上昇した。
16、17日の決定会合の主な意見では、米国の通商政策などを念頭に日本経済に下振れリスクがあるとの指摘が複数出ていた。米関税政策や中東情勢の悪化などに伴う景気の下振れリスクを踏まえれば、物価がやや上振れているとはいえ「金融政策運営は現状維持が適当」との主張もあった。
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SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは「利上げに慎重な意見が多く、買い戻された」と述べた。また、日銀の国債買い入れオペがおおむね無難な結果となり、午後は買い安心感が広がったとの見方を示した。
国内の債券・為替・株式相場の動き-午後3時過ぎ- 長期国債先物9月物の終値は前日比16銭高の139円41銭
- 新発10年債利回りは2ベーシスポイント(bp)低い1.395%
- 円は対ドルでニューヨーク終値比0.2%安の145円18銭
- 東証株価指数(TOPIX)の終値は前日比0.89ポイント高の2782.24
- 日経平均株価は0.4%高の3万8942円07銭
債券
債券は上昇。主な意見で日銀の追加利上げに慎重な姿勢が確認されたほか、日銀国債買い入れオペを無難に通過して買いが優勢だった。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤原和也債券ストラテジストは、主な意見は決定会合後の植田和男総裁の会見と同じで、利上げに慎重な見方や意見が多い印象だとし、「買い安心感が出ている」と話していた。
岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは、主な意見の利上げに慎重なトーンも田村委員の発言も「想定通りで、利上げ期待が高まる環境は整っていない」と指摘。米金利の低下基調もあり「債券相場はしっかりだ」と述べた。
日銀は午前の金融調節で定例の国債買い入れオペを実施。対象は残存期間3年超5年以下、5年超10年以下、25年超、物価連動債で、買い入れ額はいずれも前回から据え置いた。オペ結果によると、応札倍率は5年超10年以下が前回から低下して需給の引き締まりを示した一方、25年超は上昇した。
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新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.720% 0.945% 1.395% 2.315% 2.905% 3.105% 前日比 -1.0bp -1.5bp -2.0bp -2.5bp -1.5bp -2.0bp為替
円相場は1ドル=145円台前半に下落。日銀の田村委員の会見を受けて円売りが出た。
田村委員は、関税交渉中の利上げの可能性はそれほど高くないと述べたほか、基調的な物価上昇率が2%に達したと言い切るにはあと少しデータが必要との見方を示した。午前の講演では、物価上振れリスクが高まる場合には「たとえ不確実性が高い状況にあっても果断に対応すべき場面もあり得る」と述べ、円が144円台半ばまで上昇する場面もあった。
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みずほ銀行国際為替部の加藤倫義ディレクターは、田村委員はトランプ関税の影響を見るため今は様子見が必要でも、基本的には正常化を志向しており、強いドル買い材料にはなりにくいと語る。この日は数日間続いた「お祭り騒ぎ後のもみ合いが続いている」と指摘。ここからは「日米金融政策の方向性の違いを材料にした円買いが進んでいく」と予想する。
一方、ソニーフィナンシャルグループの石川久美子シニアアナリストは、ドルは有事の買いが始まる前の水準に近づいている上、ドル買いポジションの解消はほぼ終了したとの認識で、短期的な下値めどは144円台半ばとみている。
株式
株式は小幅高。前日の米ハイテク株高を支えに半導体関連株が上昇した。半面、不動産や電気・ガスといった内需関連や銀行など金融株は下げた。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之チーフストラテジストは、日経平均の上昇をけん引した半導体関連株について「去年の高値水準にはまだ達しておらず、いずれ半導体サイクルが上昇基調に戻ることも踏まえれば比較的買いやすいセクターだ」と述べた。
オールスプリング・グローバル・インベストメンツのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、マティアス・シャイバー氏は、イスラエルとイランの緊張が「一時的に緩和」すれば、投資家の注目はファンダメンタルズに戻るとみる。中東紛争への懸念から「消費者心理が悪化しており、個人消費に敏感な株式は低調な動きとなる可能性が高い」と言う。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。