ブラックホールの見やすさが変わるかも。「フルカラー」で見る方法
ブラックホールは見えません。何もかもを吸い込み、光すらも吸収するブラックホームは暗黒であり、たとえ人間が近くまで(安全に)行くことができても見えません。
しかし、そのブラックホールの姿をなんとか捉えようとするのがイベントホライズンテレスコープ(EHT)プロジェクトです。2019年には、史上初となるブラックホールの撮影に成功しました。
さらに研究は進み、今、3億ドルを投じたさらなるミッション、イベントホライズンエクスプローラーにて、フルカラーでブラックホールを捉えようとしています。
ブラックホールをフルカラー画像に
2019年に初めて成功したブラックホールM87*画像と、2022年撮影の巨大ブラックホールSagittarius A*の画像。イベントホライズンエクスプローラーは、それらの画像を何倍にも研ぎ澄まし、ブラックホールの光子球(ブラックホール周辺の光も抜け出せない「事象の地平面」のさらに外側にある境界領域)を見えるようにする、という壮大なミッションに取り組んでいます
これにより、ブラックホールが回転していることを、さらには一般相対性理論の理解を深めようしています。
そもそも人間の目で見える波長には限界があります。紫外線は確かに存在しますが、目で見えませんよね。電波望遠鏡なら、人間の目では見えない波長をキャッチすることができます。
このデータを可視化表現することはできますが、それはあくまでもデータの可視化であり、実際に人間の目に映るものではありません。ブラックホールのフルカラー化もこれと同じこと。
ブラックホールのフルカラー画像は、宇宙のありとあらゆる周波数の電波を収集することで実現できます。が、これまで電波望遠鏡は1度に1つの波長しかキャッチできませんでした。
さらに、ブラックホールは高速で回転しているため、複数枚の観測データ画像を重ねて再現しようとしても、どうしてもズレが生じてうまく合成できないのです。
そこでブレイクスルーとなったのが、複数周波数をリアルタイムで観測できる周波数・位相転送(Frequency Phase Transfer)という技術。1つの波長を調査し大気の歪みをトラッキングし、そこから別の波長で画像を鮮明にすることができたのです。
現段階では、周波数・位相転送を利用したブラックホールのフルカラー画像はまだ研究開発段階。世に公開できる「フルカラーブラックホール画像」はまだ存在しません。しかし、イベントホライズンエクスプローラーミッションによって、人間の目では見えない闇のブラックホールをフルカラーで見る日は、そう遠くないかもしれません。
研究論文はThe Astronomical Journalに掲載されています。