ソニーが携帯ゲーム機に本気を出す? 最新技術を凝縮した次世代PSPの全貌とは

ソニーが開発中と噂される新たな携帯型PlayStationゲーム機、いわばPSPの後継機(ないし「PS Vita 2」?)に関する詳細な情報が届けられています。

著名リーカーであるKeplerL2氏は、ゲーム業界フォーラムNeoGAFに続報を投入しています。それによると、PSP後継機はAMDの未発表チップを採用し、16GBのLPDDR5Xメモリが搭載されるとのことです。

これは容量こそPS5標準モデルと同等ですが、メモリ帯域幅(データ転送速度)は約3分の1、およそ150GB/s程度になるとされています。これを補うために、4MBのL2キャッシュと16MBのMALL(Memory Attached Last Level)キャッシュが搭載されると伝えられています。

さらに、AIアップスケーリング技術も搭載する見込みとされており、PS5 ProのPSSR(PlayStation Spectral Super Resolution)を意味している可能性もあります。これは「低解像度の画像や映像を高解像度に変換して画質アップ」する技術であり、プロセッサーへの負荷を下げつつ、きれいな画面の実現を目指すものです。

ソニーの携帯ゲーム機への「本気度」

写真:ロイター/アフロ

一見すれば「PS5/PS5 Proの技術をモバイルに持ってくる」に過ぎないように見えますが、実はソニーの携帯ゲーム機に対する本気ぶりを示すものでもあります。

まず、携帯ゲーム機では「帯域幅が狭いメモリしか使えない」ことが大きな制約として存在します。なぜなら、帯域幅を広げると消費電力が大きく増えて、あっという間にバッテリーが空っぽになってしまうからです。そして消費電力が増えれば発熱も増加し、小型の筐体では冷却が追いつかず、熱暴走やパフォーマンスの低下を招いてしまいます

この大前提のもと、PSP後継機に持ち込まれた仕組みの1つが、上記のMALLキャッシュです。キャッシュとは、何度もアクセスするデータや直前に使ったデータを一時的に保存しておく小容量メモリのことで、プロセッサー内部にあるため高速アクセスが可能で、物理的に近いぶん消費電力も少なくて済みます。

そしてMALLキャッシュは、現行のPS5やPS5 Proにも使われていない新技術です。「すべてのメモリアクセスが通過する」ことと「従来型キャッシュより大容量」であることにより、携帯ゲーム機でも据え置き機に近いデータ転送を実現しつつ、省電力も維持しやすくなるのです。

もう1つが、PSSR=AIアップスケーリング技術です。通常、4Kなど高解像度でゲームを描画する場合、膨大なピクセルデータなどをGPUとメモリ間で高速にやり取りする必要があり、これがメモリ帯域幅に大きな負担となります。

そこで、この技術はフルHDなど低解像度でレンダリング(描画)しておき、その後AIによりアップスケーリングするのです。これにより、GPUの計算量やデータ量のやり取りが大幅に減り、見かけがきれいになると共に、消費電力も下がります。

据え置き機との「歩み寄り」

その一方で、PS5/PS5 Proに新「低消費電力モード」の実装が進行中とのリークもありました。ざっくり言えば、メモリ帯域も半減し、動作クロック数も10〜20%低下、消費電力を最大30%削減するというもので、これが将来のPlayStation携帯ゲーム機でPS5タイトルを動かすための「互換・最適化プロファイル」として設計されているとの見方が強まっています。

つまり、PSP後継機側では据え置き機に近づけ、据え置き機のPS5/PS5 Proでは携帯ゲーム機向けのオプションも用意し、両側から歩み寄っていることになります。これは、PC用やスマートフォンゲームでも、ローエンドからハイエンドまで各種グラフィック設定が用意されているのと同様の考え方と言えるでしょう。

これらの情報が本当であれば、PSP後継機でPS5ゲームがネイティブ動作(解像度やパフォーマンスが低下するにせよ)する可能性は極めて高そうです

Xboxブランド携帯機は期待できない?Switch 2の独走が続きそう

Image:マイクロソフト

その一方で、マイクロソフトが開発を進めていた自社製Xbox携帯ゲーム機は「事実上キャンセルされた」と複数の情報源が伝えています。その代わり、ASUSなどPCメーカーが手掛けるデバイス(例:Rog Xbox Ally X)を「次世代Xboxゲーム機」とみなす方針のようです。

しかし、ROG Xbox Allyシリーズを本格的な携帯ゲーム機に位置づけるのは、かなり無理があると考えられます。

一つには、そもそもWindows 11が携帯ゲーム向けOSとしてデキが悪い点が多いことです。特に、人気の携帯ゲーミングPCであるSteam DeckのSteamOSに劣るとの指摘もあり、同じハードウェアに搭載した場合、平均フレームレートもバッテリー持ちもSteamOSに負けているとのベンチマーク結果が出ていました

もう一つは、ROG Xbox Allyで遊べるゲームのほとんどは一般的なWindows PC向けであり、Ryzen AI Z2 Extremeなどの搭載プロセッサーに最適化されているわけではありません。

それに対して、PSP後継機にせよNintendo Switch 2にせよ「ハードウェアは1種類」のみであり、ほぼ全てのゲームにAIアップスケーリング技術が使われ、省電力にも優れていることでしょう。

そしてPSP後継機は、発売時期が2027年〜2028年頃が有力視されています。これは、少なくともあと1〜2年間、携帯ゲーム機市場ではNintendo Switch 2の独走状態が続くことを意味しそうです

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