トランプ氏が敵性外国人法活用、移民送還で-連邦地裁判事が差し止め

トランプ米政権は16日、ベネズエラの犯罪組織トレン・デ・アラグア(TDA)のメンバーであるとの疑いで数百人を逮捕し、収監のためにエルサルバドルに移送したと発表した。これより先、連邦地裁判事は一部の国外移送を差し止める判断を下している。

  ホワイトハウスのレビット報道官は16日付の声明で「大統領の決定に基づき、国土安全保障省は今週末、TDAのテロリストら300人近くの逮捕に成功し、無数の米国人の命を救った」と表明。「これらの凶悪な怪物らは排除され、エルサルバドルに送られた。米国民に脅威が及ぶことはもうないだろう」と声明は記している。

  米政府はベネズエラ人の収監でエルサルバドルに対価を支払っている。ルビオ米国務長官がブケレ大統領との合意を仲介した。ブケレ大統領はソーシャルメディア「X(旧ツイッター)」への投稿で、テロリズム抑制センターに238人の犯罪集団メンバーが移送されたことを明らかにした。

敵性外国人法

  トランプ米大統領が15日発表した1798年制定の敵性外国人法を基に不法移民の送還を強化する布告を巡り、連邦地裁の判事はこれを差し止める判断を下した。

  トランプ氏は外国テロ組織にも指定しているTDAを対象にした布告で、敵性外国人法に基づく権限を行使。同法は第2次大戦中に日系米国人の強制収容を正当化するために使われたこともある戦時法だ。

  トランプ大統領はTDAのメンバーの多くが「米国に不法侵入し、非正規戦を展開、敵対行為を行っている」と主張。また、同組織が「米国への大規模な不法移住」に関与し、米国民に危害を加え、治安を悪化させ、ベネズエラのマドゥロ大統領による民主国家の不安定化に向けた取り組みを支援しているとした。

  一方、首都ワシントンの連邦地裁のジェームズ・ボースバーグ判事はトランプ大統領による強制送還を差し止める判断を出した。

  AP通信によると、同判事は15日夜の審理で、「これ以上待つことはできないと思う。行動を起こす必要がある」と述べた。これに先立ち、戦時法に基づきベネズエラ人5人を強制送還することを阻止する一時的な差し止め命令を出していた。

  ボンディ司法長官は声明で、ボースバーグ判事の判断について「トランプ大統領の権限に関して確立された権威を無視するものだ」と反論。「今夜、ワシントン連邦地裁の判事は米国人の安全よりもTDAのテロリストを支持した」とした上で、「ホワイトハウスと国土安全保障省、そしてわれわれのパートナーの全てと協力してこの侵略を阻止し、米国を再び安全にするという司法省の取り組みが妨げられることはない」とコメントした。

  戦時の権限を行使するというトランプ氏の決断を受け、政府の移民政策に対する批判は広がりそうだ。敵性外国人法では、「宣戦布告」された場合、あるいは外国に侵略された際に大統領が発動する権限を持つ。

原題:Trump Expels Hundreds Under Enemies Act as Court Rebukes Law (1)(抜粋)

原題:Judge Halts Trump Wartime Powers Plan to Speed Deportations (1)(抜粋)

(週末に逮捕・移送されたベネズエラ人の人数とホワイトハウスの声明を追加します)

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